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連続投稿。
書き始めると止まらない!

・・・気付けばこうなっていた。
この作品で最もシリアスかもしれない。
再び賛否両論であろう話に戦々恐々の僕。
一言で言うなら・・・コウキ、再び離脱。

なお、本話の一部には残酷な描写と受け取れる場面があります。
そのようなものが苦手な方は本編を飛ばして後書きへ。
出来るだけ次話に繋げられるよう説明を入れますので。
(書いている途中に思わずタグを入れていたかと不安になってしまった話。
 そして、確認したら入れてなかったので、このような形で注意を促しました)
第九部 ~始まる最後の戦い~
第百二十五話


「歯を食い縛れ」

ドガッ!

「・・・すいませんでした」

命令違反。
抗いようのない事実だ。

「営倉入り、と言いたい所だが、現時点でそれをしている余裕はない。
 この戦争が終了した後、しかるべき罰を受けてもらう。分かったな?」
「・・・はい」

ハハッ。公開処刑じゃないか。
ブリッジで、皆の前で殴られるとか。
まぁ、分かってたんだけどね・・・。

「コウキ君」
「・・・すいません。独りにしてください」
「・・・分かったわ」

何だろう?
この気持ち。
今は何もしたくない。

トボトボッ。

引き摺るように足を動かす。
重い。とてつもなく身体が・・・重い。

「寝よう」

何もかも放り捨てて寝てしまいたい。
寝れば・・・元の俺に戻ってるのかな?





SIDE MINATO

「・・・コウキ君」

去っていくコウキ君を見詰める。
ううん、見詰める事しかできなかった。
抱き締めてあげれば良かったのか?
支えてあげれば良かったのか?
・・・私はどうすればコウキ君を救ってあげられるのかな?

「・・・あいつ、大丈夫よね?」
「・・・カエデちゃん」
「私、あいつと同じような顔をした人を知ってる」
「それって?」
「昔の・・・私よ」

・・・昔のカエデちゃん?

「家族を失って、何もかも失ってた時、あんな顔をしてた」
「・・・・・・」
「あいつ、身近な人間が死んだ事ってあるのかしら?」
「・・・あ」

多分、ない。
人の死に触れた事はあっても、親しい人の死には・・・。

「私は抜け殻だったわ。何を言われても反応しないし、何も口にしなかった」

ま、後からそう聞いただけだけど、と言葉を添えるカエデちゃん。

「今のあいつはそれと同じ。身体はあっても心はない。唯の・・・抜け殻よ」

抜け殻・・・。
コウキ君であって、コウキ君じゃない。

「それに、だ」
「・・・アキト君」
「あいつは航空隊の機体を調整している側の人間だった。
 もっときちんと調整していれば・・・。もっと、もっとって。
 そう自分を責め続ける。恨みも憎しみも、負の感情全てを自分にぶつけかねない」
「・・・うん」
「そして、同じ戦場に立った。隣で共にな。今頃・・・悪夢を見ているだろうさ」

悪夢?

「どうして俺が死んでお前が生きているんだ」
「え?」
「俺じゃなくてお前が死んでいれば良かったのに・・・」
「・・・・・・」
「変わってくれよ。お前が死んで、俺を生かしてくれよ」

聞けば聞く程、背筋が凍る言葉だった。

「その対象が親しければ親しいほど、深く深く傷付く。
 友がそんな事を言う訳がないのにな。矛先をどうしても自分に向けたがるんだ」
「それじゃあ、今、コウキ君は・・・」
「・・・ああ。コウキを救いたければ少しでも安心感を与えてやれ」
「それはもちろんだけど・・・与えてあげられなければ?」
「狂う」

たった一言。
だけど、心臓が締め付けられた。

「安易に死に走るようになる。死ぬべきだなんて勘違いした上で―――」

ダッ!

駆け出す。
最後まで聞いていられる余裕なんてなかった。
ごめんなさいね、アキト君。
でも・・・今はコウキ君の方が大事なの。





「アキト、どうしてあんな事を?」
「そうです! わざわざ脅さなくてもいいでは―――」
「事実だ」
「・・・え?」
「そうやって狂った人間を俺は知ってる」
「それは・・・」
「さぁな。ただ一つだけ言える事は・・・」
「言える事は?」
「・・・死ぬほど辛いぞ、悪夢を見続けるというのはな」





「ハァ・・・ハァ・・・」

暗闇を走る。
入り口も出口も、壁も床もない空間。
まるで宇宙を走っているようだ。
でも、宇宙よりも、それ以上ないぐらい深い漆黒である宇宙よりも深く暗い気がした。

「ハァ・・・ハァ・・・どこだよ? ここ」

もうどれくらい走ったんだろうか?
いつになったら出られるんだっての?

「おぉ。コウキ」
「・・・ミズキさん」

突如として現れるミズキさん。
どうしてここにいるんだろう?
彼は死んだ筈・・・え? あれ?

「夢?」
「何が夢なんだ? まったく寝ぼけやがって」

苦笑するミズキさん。
そうか、夢か。
ミズキさんが死ぬなんてありえないもんな。

「まったく、誰ですかね? このイタズラ?」

是非ともこの暗さを出す方法を教えてもらいたいものだ。
お化け屋敷とかで使えるぞ、マジで。

「本当・・・だよな」
「え?」

バンッ!

「グフッ。ど、どうして?」

目の前には銃を構えるミズキさん。
視界を少し下げてみれば・・・真紅に染まった腹部。
もちろん、俺の・・・。

「迎えに来てやったんだよ。中々こっちに来ないから」
「・・・え?」

こっち?

「俺達だけ死ぬなんて理不尽だろ?」
「死ぬ?」
「そうそう。俺の隣にいたんだ。お前も死ぬべきだろうに」
「お前・・・も?」
「まだ気付かないのか? 死んだんだよ、俺は。お前の目の前で」

・・・死んだ?
死んだってどういう事だ?

「可哀想だと思わないか? 妻も娘も残して」
「・・・・・・」
「そうだ。変わってくれよ。そうすれば二人に会いに行ける」
「・・・・・・」
「聞いているのか? なぁ、聞いてるのかって聞いてるんだよ!」

バンッ!

「グッ」

次は左腿部。
激痛が走った。

「パパ、パパ。貴方、貴方。そう俺を呼ぶ声が聞こえるんだ」
「・・・・・・」

娘、妻。
残される者達。

「どうして俺が死んでお前が生きているんだろうな?」
「それは・・・」
「娘は泣くだろうな。妻は嘆くだろうな。
 いや、もしかしたら、二人とも後を追ってくれるかもしれない」
「・・・・・・」
「可哀想に。お前が俺の代わりに死んでくれないから、二人も死んでしまうんだ」

俺が死なないから?
それじゃあ、俺が死ねば・・・。

「俺が死ねば救われますか?」
「救われるだろ。皆幸せさ」

そっか・・・。
死んだ方が良いのか。
死ねば、皆が幸せに・・・。

「死ねないなら殺してやろうか?」
「え?」
「じゃあな、コウキ」

バンッ!

頭部直撃。
・・・アハハ。
これはもう死んだな。
ごめんなさい・・・あれ?
誰に謝ろうとしたんだろう。
俺に謝る相手なんていない。
俺の生を望む人なんて・・・いない。
アハハ。本当に・・・死んだ方がいいみたいだ。

バンッ!

銃声を最後に視界は暗転した。
これで・・・死ねるんだな・・・良かった。





「ハッ」

な、何だ、夢か。
そうだよな、俺がミズキさんに殺される筈が・・・。

「パパを、パパを返してよ!」
「・・・え?」
「貴方の代わりにパパが死んだの! 貴方が死んでいればパパは死ななかった」
「・・・・・・」
「パパを返して! 私の大好きなパパを・・・返して・・・よぉ・・・グスッ」

・・・誰だろう?
見た事があるような気がする。
確かいつも俺の膝の上で、可愛らしい笑顔を・・・。

「ミズキ君を返して! 貴方さえ、貴方さえいなければ・・・」

この人も覚えがある。
確かいつも俺の右側に座ってて、あんなにも暖かい笑顔を・・・。
・・・え?

「ミナトさん? セレスちゃん?」

二人が包丁を片手に迫ってくる。
そして・・・そのまま俺に突き刺した。

「グ、グゥゥ・・・」
「貴方が死ねばミズキ君は帰ってくる! 帰ってくるのよ!」
「パパの為に死んで。お願いだから・・・死んで」

メッタ刺し。
血の池に沈む。
アハハ。笑えない、笑えねぇよ。
まさか、この二人に刺されるなんてな。
もう生きる意味なんて・・・ないんじゃないのか?

「そうだわ。死ねばミズキ君に会えるかも」
「パパに会えるの?」
「ええ。会いに行きましょう。ミズキ君に」
「うん。ママ」

霞む視界。
その最後に見たのは・・・。
自らの胸に包丁を突き刺す二人の最愛の人の姿だった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」





SIDE MINATO

「ハァ・・・ハァ・・・」

走って、走って、ようやくコウキ君の部屋に辿り着く。
いつもの五倍はあったんじゃないかなと思うぐらいコウキ君の部屋までが遠かった。
でも、確かに着けた。決して、届かない所までコウキ君が行ってしまった訳ではない。

シュインッ。

扉を開ける。

「ハァ・・・ハァ・・・あぁ・・・グゥ・・・」

部屋は暗い。
それでも、そこにコウキ君がいる事は分かった。
荒い息遣い、苦しそうな呻き声。
寒気がするような音ばかりが聞こえてくる。

「コウキ君」

部屋の電気を点けて、コウキ君が寝ているであろうベットに近付く。
ビショビショの身体。
身体中の水分が全て抜けてしまったのではないかというぐらいの発汗量。
そして、何よりも目を引くのは、ううん、目を引かざるを得ないのは・・・その表情。
まるで全てに絶望したような、そんな苦痛しか感じさせないコウキ君の表情だった。

「コウキ君! コウキ君!」

苦しそうに顔を歪ませるコウキ君の名を必死に呼ぶ。
どれだけ声を掛けても、身体を揺すっても、起きる様子はなかった。

「グッ・・・うわっ・・・ハァ・・・」

どうして? どうしてなの?

「無茶して、無理して、それでいて、何で貴方が一番傷付いているのよ」

友の為に命を賭けたコウキ君。
結果として、その友を失ってしまったのかもしれないわ。
でも、貴方は精一杯頑張った。
何もせずに見捨てるのではなく、命令違反をしてまで。
そんな貴方を友は軽蔑すると思う?
友は許さないと思う?
どうして? どうして貴方が傷付くのよ?
どれだけ損な性格をしているのよ、ねぇ、コウキ君。

「馬鹿よ。馬鹿過ぎるわ」

人が良いのにも程がある。
背負わなくていい罪まで背負うなんて・・・。
貴方はもっと・・・もっと身勝手に生きるべきだわ。
そのままじゃ、貴方はきっと・・・壊れちゃう。

シュインッ。

「・・・ハァ・・・ハァ・・・ミナトさん」
「セレセレ! どうしてここに?」

扉が開く音と共に現れたのはセレセレ。
その息切れがどれだけ懸命に走ってきたか物語っていた。

「・・・コウキさんが・・・心配で」
「そう。セレセレ。貴方もコウキ君を―――」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ッ!

「コウキ君! コウキ君!」
「・・・コウキさん! コウキさん!」

目を覚ます。
でも、その瞳は定まっておらず・・・。

「・・・ハァ・・・ハァ・・・ここは? ・・・これも夢?」

ようやくにして定まってきた瞳。
でも、私達を見た瞬間・・・。

「うわっ・・・わぁ・・・わぁぁぁぁぁぁ!」

絶叫。そして、逃げるように壁際まで・・・無様に這い蹲って進んだ。

「・・・コウキ君?」

膝を抱え込んで、耳を手で塞ぐコウキ君。
これは・・・一体・・・。

「・・・何か呟いています」
「呟いてる? よし」

ゆっくり、刺激しないように進んで、耳を傾ける。

「・・・・・・」

まだ聞こえない。
もっと近付こう。

「・・・さい」

まだ、まだよ。
もっと近付かないと。

「・・・なさい」

結局、全てが聞こえたのはコウキ君に触れるか触れないかというぐらい近い距離。
そして・・・。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

私を、私達を絶望へと誘う呟きだった。

SIDE OUT





SIDE KAEDE

「ドクターストップ!?」
「ええ。今はまだそれ程表に出てないけど、これ以上戦場に出すのは危険過ぎる」

初日の戦闘を終え、コウキが立ち去ってから二日が経った。
コウキの様子はいつもと変わらないようで、どこか違う。
ふとした時にボーっとして、戦闘中も何度も怒られていた。
でも、戦えていたから、大丈夫だったんだなって安心してたんだけど・・・。

「精神障害・・・ね」

イネス博士が済ました顔で告げる。
でも、その言葉はどこまでも深刻だった。

「毎晩魘されているみたい。アキト君の言ってた悪夢って奴を見てるのかもしれないわ」
「てめぇ、どうしてそんなに冷静で―――」
「馬鹿言わないで! ・・・私だって自分を無理矢理落ち着かせてるの」
「・・・すまん」

・・・その表情が物語っていた。
彼女は冷たい人間なんかじゃない。
きっとこの場にいる誰よりもコウキを心配している。
そして、どうにかしたいと考えているだろう。
でも、どうにもできないから、自身を責めている。

「こんなケース初めてよ」

そして、同時に分かってしまった。
コウキがそれほどまでに酷い状況であるという事も。

「彼のナノマシンが特別製だって事は分かってたけど・・・」
「どういう事ですか? 何か問題でも?」
「問題も何も・・・今回ばかりはその高性能ナノマシンを恨むしかないわね」

ナノマシンを恨む?
それって・・・。

「睡眠薬も駄目。鎮静剤も駄目。全部ナノマシンが効果を及ぼす前に分解しちゃうわ」
「どれだけ高性能なんだよ。そんなの普通じゃねぇぞ」
「それじゃあ、コウキは・・・苦痛を味わい続けるしかないって事?」
「・・・ええ。寝ては起きてを繰り返してる。ちゃんと寝れてないみたいね」

深刻そうな表情で答えるイネス博士。
睡眠薬も効かず、碌に寝る事も出来ない。
・・・よく落とされなかったわよね。
その状態で昨日、今日を戦い抜いていたんでしょ?
やっぱりあいつ・・・凄いわ。

「今、コウキはどうしてるんだ?」
「手足を拘束して、医務室のベットに寝かせてあるわ」
「手足を拘束?」
「ええ。そうしないと寝てる時に自分を傷付けてしまうもの」

・・・コウキ。
貴方・・・どうしてそんな・・・。

「コウキと会う事はできるのか?」
「残念だけど面会謝絶。誰にも会わせられない」
「・・・そうか」

それじゃあ・・・あの二人に任せるしかないって事?
ミナトさんとセレスちゃん。
あの二人がコウキを救うのを待つ事しか・・・。
私達には出来ないって事?

「あいつの家族だけが今、あいつを救えるって訳だな」
「家族ってハルカ・ミナトとセレス・タイトの事?」
「ん? ああ。そうだけど」
「残念だけど、彼女達こそ面会謝絶よ」

え? ど、どうして?

「コウキの為にも二人には会わせた方が―――」
「その二人が今、何よりもコウキ君の負担になってるのよ」

意味が分からない。
あのコウキが、ミナトさんやセレスちゃんが大好きで堪らないコウキが二人を遠ざけるなんて。

「二人はどうしてる?」
「面会希望で医務室まで来たけど、二人を見たら、コウキ君が怯えるから・・・」
「何があったんだよ、それ・・・」

二人を見たらコウキが怯える?
どうなったら、そんな風になるのよ・・・。

「昨日、今日と訪ねてきたんだけど・・・会わせる訳にはいかなかったわ」
「二人は平気なのか? コウキに拒絶されたら・・・」
「ええ。彼女達もショックだったみたい。このままじゃ入院患者が更に二人増えそうね」
「だろうな。本当にあの三人は互いを大事にしあう家族だった」

沈痛な面持ちで語るウリバタケさん。
憎まれ口ばかりだけど、この人が一番コウキ達を暖かく見守っていたように感じる。
一番の年上だからかは分からないけど、まるで自分の息子や娘を見守るように。

「悪夢・・・だろうな」
「悪夢?」
「恐らく、そうね」

二人で勝手に納得してる様子のテンカワさんとイネス博士。

「ちゃんと説明しなさいよ」

少なくとも、それぐらいは知る権利がある筈。

「悪夢を見たんだろう。あの二人が出てくる奴をな」
「死に連想する何かだと考えるのが妥当でしょうね」
「たとえばあの二人が殺されるような?」
「ああ。もしかしたら、それより更に性質が悪いものかもしれん」

二人が死ぬ以上に性質が悪い?
そんな悪夢を見て、コウキが平気でいられる訳がない。

「とにもかくにも、当分は不参加だって事は承知しておいて」
「当分。それは決戦中か? それとも終了後か? それとも・・・死ぬまでか?」
「・・・分からないわ。あれはもう・・・自分で立ち直る以外に方法はないもの」
「・・・そうか」

どこまでも暗かった。
当然、私も。
あのコウキが・・・私以上の抜け殻になってしまったのだから。


その後、偶然にもコウキを見る機会があったの。
心配で、病室の前に張り付いていた時だったわね。
チラッとだけ、本当にチラッとだけ空いた扉の間からコウキが見えたのよ。
その時、私は認識を改めたわ。
コウキは抜け殻なんかじゃない。
あれはもう・・・屍だった。
生きているのか、死んでいるのか・・・。
私には・・・分からなかったもの。

SIDE OUT





SIDE MINATO

「どうしてよ? コウキ君」

私なら癒せてあげる。
そう確信していた。
私だったら受け止めてあげる。
そう確信していた。
でも・・・何も出来なかった。
私ならっていう自負は唯の思い上がりだったの?

「貴方に何があったの?」

私とセレセレに怯えるコウキ君。
ごめんなさいって何?
ねぇ、誰に謝ってるの?
ねぇ、何を謝ってるのよ?
教えてよ。教えてくれなくちゃ・・・分からない。
もう・・・何も分からないわ。

「・・・グスッ・・・コウキ・・・さん・・・」

ねぇ、コウキ君。
貴方が泣かせてるのよ、セレセレを。
大好きだったわよね? あのどこまでも可愛らしい無邪気な笑顔が。
それを貴方が失わせているの。
見える? こんなにも表情を歪めて、粒のような涙を流すセレセレの姿が。
いつもの貴方だったら、私すら放って駆けつけるわよね?
それぐらい、貴方にとって大事な存在でしょ? セレセレは。
それなのに、貴方はいつまで放って置いてるのよ!

「・・・ミナトさん。私、嫌われるような事をしたんでしょうか?」
「・・・セレセレ」
「・・・もう私はコウキさんに頭を撫でてもらえないんですか?
 楽しくおしゃべりできないんですか? もう私には笑ってくれないんでしょうか?」
「そんな事ない! そんな事ないわ!」
「・・・だったら、どうして・・・コウキさんは・・・グスッ」

抱き締める。
震える華奢な身体を。

「嫌われるような事は何一つしてないわ」
「・・・でも」
「コウキ君はセレセレが大好き。何があっても、絶対に」
「・・・本当ですか?」
「本当よ。頭も撫でてもらえるわ。おしゃべりだって出来る。笑ってもくれる」
「・・・グスッ・・・私・・・」
「信じましょう。戻ってきてくれるって。帰ってきてくれるって」
「・・・はい」

信じて、信じていいのよね? コウキ君。
貴方なら、克服できるって。
自分の力だけで克服できるって。
私達は・・・信じて良いのよね?

SIDE OUT




書いている途中で胸が痛くなって、二時間ばかり休憩した私は悪くないと思う。

ミズキの死。コウキに与えた影響は予想以上に大きかったようです。
今まで知り合いの死に関しては関わってきたコウキ。
ですが、ミズキ程に仲良く、かつ、共感した人物は初めてでしょう。
同じ娘を持つ親として、コウキはミズキに深い共感を抱いていました。
その結果、残される側の人間の事をより考えてしまうようになった訳です。
それが悪夢の中で二人が出てきた理由でしょうね。
ミズキの妻と娘の顔を知っていれば話は別ですが、知らなかった。
その為、妻と娘という意味で最もイメージが結び付きやすい二人。
ミナトさんとセレスがミズキの妻、娘として投影してしまう。
二人の登場が更にコウキを動揺させ、傷付けた。
今、コウキは二人に対して、どうしようもなく深い罪悪感を抱いています。
もしかしたら、ごちゃ混ぜになってるかもしれませんね。
自身の家族なのか、ミズキの家族なのか。
ミナトさんとセレス嬢が自分にとってどのような存在であるのかを忘れている。
それほどまでに深く傷付いているという訳です。

以上の事より、コウキ君は完全にダウン。
イネス女史によってドクターストップが掛けられました。
離脱です。再びの離脱。
果たして彼は決戦中に帰ってこれるのか。
それを今後戦争と共に追って行きたいと思います。


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