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第一部 ~火星までの道のり~
第六話


「ここはこうして・・・」
「・・・はい」

現在、オペレーター補佐としての仕事を行っています。
といっても、俺に出来る事はセレス嬢に簡単な事を教える事だ。
何でしか知らないけど、ルリ嬢もラピス嬢も殆ど完璧なんだよな。
俺の出る幕がないって感じで。
それなら、二人は自身に任せてセレス嬢を出航前まである程度出来るようにさせておくべきだ。
セレス嬢も優秀なオペレーターみたいだからな。すぐに覚えるだろ。
ある程度は習ってきてたみたいだし。

「ある程度の事はオモイカネがやってくれるから。
 俺達オペレーターがする事は意思を伝える事だけだよ」
「・・・意思を?」
「そう。だから、オモイカネとは仲良くな。ま、心配ないと思うけど」
『大丈夫』『セレス良い子』『仲良し』

ま、オモイカネがこう言うんだから大丈夫だろ。

「ふぁ~~~」

・・・隣で欠伸はやめましょうか。ミナトさん。

「・・・ミナトさん」
「呆れられても困るわ。だって、やる事ないもの」

まぁ、言いたい事は分かる。
艦が動いてないのに操舵手なんて必要ないよな。

「あれはどうなんですか? えぇっと、そう、起動手順」
「完璧よ。コウキ君とおさらいしたじゃない」

そういえば、一日に何回かやってるもんな。

「じゃあ、停止手順とか停泊とか」
「完璧。シミュレーションは何度もやってるわ。実際に動かせない以上、仕方ないでしょ?」

・・・うん。駄目だ。やる事なさそう。

「コウキ君こそ、副操舵手と副通信士としてはどうなの?」
「副操舵手の方はミナトさんと練習してるじゃないですか。
 副通信士もメグミさんから色々習って勉強中です」
「あ。マエヤマさん、飲み込み早いですから、もう殆ど大丈夫ですよ」
「だ、そうです」

俺とてやる事はやってる。
欲張り過ぎの兼任役職だが、全てカバーしてやるぜ。

「予備パイロットはどうなの?」
「まぁ、それなりです。毎日シミュレーションしてますし、テンカワさんから色々教わってるんで」

闇の王子の名は伊達じゃない。
テンカワさんが未来のアキト青年だって確信してから、積極的に操縦を教わってる。
あれ程の凄腕パイロットは他にいないだろうからな。
間違いなく地球最高のパイロットだよ。テンカワさんは。

「へぇ。アキト君ってどれくらい強いの?」
「そうですね。以前、俺のゲームの話したじゃないですか?」
「ええ。あのトップスコアがどうとかって奴ね?」
「はい。多分、テンカワさんなら更に倍ぐらいのスコアは取れるんじゃないですか?」

初心者の俺があれだけ取れたんだ。
場慣れしているテンカワさんならもっと取れるだろう。
特に一対多数とか慣れまくりだろうし。
あのゲームは殆ど一人で大軍に立ち向かうって形式のミッションばっかりだったし。
テンカワさんの十八番だと思う。そういうの。
連合軍のトップクラスを想定してたみたいだけど、テンカワさんは軽く上回ってるって訳だ。

「あら。コウキ君だってかなりのスコアだったんでしょ?」
「俺は所詮お遊びのレベルだったんですよ。テンカワさんは間違いなくプロです」

俺はナノマシンの恩恵と卑怯なソフトを多用してようやくテンカワさんと同じ土俵に立てる。
ただのIFSであそこまで出来るのはテンカワさん個人の単純な操縦技能。
とてもじゃないけど、俺では敵わない。
良い動きだけど全体的な動きが経験不足だってテンカワさんに言われたし。
・・・そうだよね。どんな戦場だって経験豊富な人が強いんだよね。
うん。今の俺に出来る事はひたすら経験を積む事か。

「そっか。それなら、コウキ君が戦場に出る事はなさそうね」

そうニッコリ笑うミナトさん。

「ま、そうなんですけどね。頑張ろうって決めた身としてはちょっと拍子抜けかなって」

そりゃあ戦場に出なくて済むのは嬉しい限りだ。
わざわざ死にに行きたくないし、有名になりたくはない。
でも、護りたいって誓った身としてはさ。気合が空回りしてたみたいでちょっと情けないかなって。

「コウキ君も男の子だからね。でも、私としては安心よ。
 コウキ君が危険な眼にあわなくて済むのは」
「そう・・・ですか」

特別な意味なんてないのかもしれないけど、心配してくれてるって思うと嬉しいかな。

「テンカワさんだけに負担をかけるのは心苦しいですが、
 その分、俺は戦場でパイロットのフォローが出来ればいいかなって思います」
「うん。責任感があるのは良い事よ。でも、フォローって?」
「情報解析は得意なんですよ。
 ま、オペレーターの補佐が最終的にパイロットの補佐に繋がると思うんで」

いざ戦闘となるとオペレーターにかかる負担は相当のものがある。
ルリ嬢、ラピス嬢、セレス嬢はかなりのレベルのオペレーターだ。
ルリ嬢は実際に一人で全戦闘をこなしたという実績がある。
でも、だからって辛くないとは限らないだろう?
俺に出来る事があるのなら、三人を補佐して、少しでも負担を減らしてあげるべきだ。
それが最終的にパイロット、そして、ナデシコを助ける事に繋がるんだから。

「あ。ルリちゃん。ナデシコの武装を教えてもらえるかな?」

確か俺の知る限りではGBと連合軍への反乱時に使ったミサイルぐらいだったと思う。
でも、流石にそれだけじゃないと思うんだ。気がつかない所で違うのも使ってたりとかしてた筈。
だってさ、二つしかない武装とか恐怖じゃん。後ろから攻められたらどうするのって感じ。
グラビティブラストなんて前しか撃てないし。

「主砲としてグラビティブラスト、その他に誘導型ミサイルとレーザー砲が二門あります」

へぇ。レーザー砲なんてあったんだ。知らなかった。

「また、レールガンを至る所に配置し、全方位に対応できるようにしました」

あ。そうなんだ。全方位対応できたんだ。そいつは知らなかった。
何だ。後方対応とか出来ないのかと思ってたぜ。杞憂か。

「そっか。配置図とか見せてもらえるかな。艦の全体図とか」
「こちらです」

パッとモニターに出して頂く。
正面モニター全体に映してもらったから他のブリッジクルーも何事だってモニターを見ていた。

「相変わらず変な形よねぇ」

ミナトさんも相変わらず暢気ですよね。

「ブレードのせいですよ。ディストーションフィールドを発生させる為の」
「そうなんだ。そもそもそのDFってどれくらいの衝撃まで耐えられるのかしら」
「えぇ~と。そうですね」

ルリ嬢の映し出したモニターにDFの説明を載せる。

「DFって空間を歪ませて攻撃を防ぐ訳です。
 だから、ビーム兵器とかグラビティブラストとかそういう光学兵器にはとても有効なんですよ」
「波が伝わりにくいからって事?」
「ま、そんな感じです。防ぐっていうか逸らすっていうんですか?
 そんな感じですから。だから、実弾兵器には効果はあっても薄いみたいですね」

まぁ、高出力になれば耐えられるだろうけど、油断はいけないよな。

「へぇ。じゃあ無敵って訳じゃないのね」
「ええ。特に地上じゃ駄目駄目です。油断してちゃいけませんよ。
 ま、そこはミナトさんがカバーするという事で」
「そう。お姉さんに任せておきなさい」

同じ資格持ちでも俺とミナトさんじゃ月とスッポン。天と地ほど違う。
俺も一応平均よりは優れていると思うけど、ミナトさんはもうトップクラスではって思う程に凄い。
こんな巨大なナデシコをセンチ単位、いや、ミリ単位で修正するとか半端ないと思う。
どんだけ空間認識に長けてるんだよって話。

「あの~、マエヤマさん」
「ん? 何かな。メグミさん」

メグミさんもモニターを見ていたみたい。
何か質問でもあるのかな?

「何で地上じゃ駄目駄目なんですか? 地上と他とで何か変わっちゃうんですか?」

おぉ。鋭い質問だ。
これを把握してないから後々の悲劇に繋がったんだもんな。
丁度いいから話しておこう。

「メグミさんはこの艦がどんなエンジンで動いているか知ってますか?」
「えぇっと。ここには、メインエンジンは相転移エンジンって書いてありますね。
 どんなエンジンなんですか?」

あ。モニターに出てたか。
・・・何か間抜けだな。俺。

「相転移って分かる?」
「えぇっと、実はあんまり・・・」

項垂れるメグミさん。ま、別に知らなくても日常生活には問題ないしね。

「ま、俺もあんまり詳しくないんだけどさ。
 そうだなぁ・・・。ほら、水って冷やすと氷になって、火にかけると水蒸気になるじゃん」
「あ、はい。なりますね」
「その変化が相転移っていうのかな。熱っていう外的要因で相が変わってるみたいな」
「う~んと」
「ごめんね。説明下手で」

もっと頭良くなりたいな。
あの難しい事を簡単に説明できるっていう特殊技能が欲しい。

「あ、いえ、何となく分かればいいですから」
「そう? じゃあ、分かりづらいかもしれないけど、我慢してね。
 相が変わるにはエネルギーが必要になる訳。さっきの例えなら熱みたいな」
「はい。エネルギーが必要な訳ですね。何もなくて変化する訳ないですから」
「そうそう。それで、相の変化にエネルギーが必要なら、
 逆に相の変化で何かしらのエネルギーが消費されている訳」
「え~と、車のブレーキとかで熱が発生するみたいにですか?」
「お。良い例えだね。俺より説明のセンスがあるよ」
「あ、ありがとうございます」

俺ってば説明下手だからな。
難しい言葉を並べて誤魔化すとか良くやってたよ。
だから、逆に質問されると答えられない事が多かった。

「今回の相転移エンジンっていうのはね。
 真空の空間をエネルギー準位の高い状態から低い状態に相転移させて、
 それによってエネルギーを取り出しているんだよ」
「それなら、真空に近ければ近い程にエネルギーが確保できるって事?」
「お。流石ミナトさん。鋭いですね」
「まぁねん」

良く俺の下手な説明で理解できるよ。
俺としては助かるけどさ。

「凄く簡単にいえば、宇宙みたいな真空で一番の出力を得られて、
 地上みたいな真空じゃない所ではあまり出力が得られないって事だよ」

簡単に言えばそうなるよな。
火星でピンチだったのも宇宙に比べて出力が足りなかったからだし。

「出力が得られないならDFとかいう奴も低出力になっちゃう訳よね?」
「はい。だから、宇宙空間で耐えられるものが地上では耐えられないなんて事もあるんですよ。
 グラビティブラストの威力も弱まっちゃうし」

攻撃力も防御力も下がるとかまずいよな。
出来るだけ宇宙空間にいるべきだと思う。

「何か聞く限りだと結構欠点があるみたいね」
「でも、便利ですよ。半永久的にエネルギーが得られる訳ですから。
 他のエネルギーは消費したら終わりじゃないですか」
「それもそうね。戦艦として働く分には丁度良いって訳か」
「ま、そうなります。エンジンの稼働率で色々と調整できますから。
 使い勝手も良いんじゃないですか?」

スピード調整とか簡単そうだし。
ま、整備班は常に点検しないといけないから大変そうだけど。

「御詳しいのですね。マエヤマさんは」

ん? 知ってるのって変かな?

「おかしいかな?」
「え、いえ。そうではありませんが」

元々知ってたけどさ。やっぱり乗る側としては把握しておきたいじゃん。
もちろん、何度も資料を見直しましたよ。

「何が目的か分からないけど、機動戦艦なんて名付けてあるんだから、戦う為にあると思うんだ。
 俺はパイロットとかも兼任してるし、生き残る為には把握しておきたい」
「・・・・・・」

何だろう? この尊敬の眼差しは。
普通の事を言っただけですよ。皆さん。

「少なくとも艦長とか副艦長とか、戦闘指揮のゴートさんは把握している筈です。
 俺は全体的に補佐役ですから、補佐役としては色々な事を把握しておく必要があるかなって」
「あ、ああ。もちろんだ」

ゴートさん。狼狽してると疑われますよ。
いつもの仏頂面で誤魔化すのがベストです。

「パイロットの方々も把握しておくべきですね。
 多分、リーダーパイロットのテンカワさんは知ってるんじゃないですか?」
「・・・知ってる」
「ラ、ラピス?」

何を慌ててるんだ? ルリ嬢。
テンカワさんが知ってるのは当然じゃないか。
未来のアキト青年だし。

「ブリッジは特に戦闘に携わると思うので把握しておいて損はありませんよ。
 俺はまだ死にたくありませんし」
「そうよね。私もちょっと勉強しておこうかしら」

お勧めします。ミナトさん。

「何だか怖くなってきました。私達って戦艦にいるんですよね」

まぁ、戦艦なんて現実味ないもんな。軽い気持ちで乗艦してもおかしくないか。

「落とされない為にリーダーパイロットのテンカワさんを始めとするパイロットがいて、
 整備班や艦長、副艦長がいるんです。彼らを信じてあげてください」
「・・・はい。怖いですけど、私も頑張ろうと思います」
「そうだね。メグミさんの通信士って役目も戦闘では大切だと思うから、
 メグミさんの頑張りが皆を護る事に繋がると思うよ」
「私の頑張りが皆の・・・」
「うん。それにね、メグミさんだけじゃないんだ。
 操舵手のミナトさんだってそう。
 オペレーターのルリちゃん、ラピスちゃん、セレスちゃんだって大切な役目」

操舵手にはナデシコの命運が懸かってるし、オペレーターはいつだって大変だ。

「戦闘指揮のゴートさんだって、今はいない艦長、副艦長だって必要不可欠。
 提督の経験は俺達みたいな経験不足の集まりにとっては何より大切なんじゃないかな」

戦闘経験なんて誰もないんだし、戦場で一番大切なのは経験だろうしね。

「あれ? 副提督は?」
「えぇっと」

後ろを見て、いない事を確認。

「どちらかというと情操教育に悪い・・・かな?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

何だ? 何故に沈黙?

「・・・ふふふ」
「ハハハハハハ」

え? だ、大爆笑? そんな変な事言ったか?

「ハハハハハハ。コ、コウキ君、笑わせないで」
「マ、マエヤマさん。クスッ。酷いですよ」

笑いながら言ったって説得力ないってば。

「いや。だってさ、ヒステリックであの顔はトラウマになりかねないし」
「アッハハハ。もう駄目。お腹痛い」

半端なく笑ってますね。ミナトさん。

「クスッ」

お。ルリ嬢が笑った。

「・・・何ですか?」

と、思ったら睨まれた。
何かしたかな?

「いや。なんでもないよ。ルリちゃんは一番大変だと思うけど、よろしくね」
「・・・それが仕事ですから」

子供に仕事を課すのは心苦しいけどしょうがないか。
出来るだけフォローしよっと。

「最後に、ここにいるのはあのプロスさんが選んだメンバーなんだから、間違いないですって」
「コウキ君はプロスさんを信用してるのね」
「俺は色々と兼任してますからね。一応は少しずつかじってる訳じゃないですか。
 だから、一人一人が優秀なんだなって分かりますよ」

ミナトさんの隠れざる技術を発掘したぐらいだ。
プロスさんの眼は凄まじいと思う。

「もちろんです。私が至る所から見つけ出した最高の人材ですから」

おぉ。プロスさん。いつの間に。

「無論、マエヤマさんも最高の人材ですよ」

いや。そう言われると照れるかな。

「マエヤマさんには色々な役職を兼任して頂いてますから。
 大変だと思いますが、改めて御願いしますね」
「ええ。任せてくれとは言えませんが、出来る限りの事をやるつもりです」

生き抜かない事には始まらないしな。
やれるだけはやるつもりだ。

「そういえば、プロスさんはどうしてここに?」

うん。俺も気になった。
プロスさんがブリッジに来る必要は今の所なかったはずだし。

「そろそろお昼時ですからな。交代で食事をと思いまして」

あ。そっか。忘れてた。

「それでは、始めにハルカさん、レイナードさん、ラピスさん、セレスさん、休憩にお入りください」

ま、妥当かな。
とりあえず俺がいれば通信と操舵に問題ないし。
技量的に一番のルリ嬢がいれば、二人でも回せそうだ。

「じゃ、お先にね」

ミナトさんを始めとしてぞろぞろ出て行く。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

結果としてルリ嬢と二人っきりになりました。
・・・あぁ。気まずい。

「えぇっとさ。ルリちゃん」
「・・・何でしょう?」

何でそんなに拒まれる?

「俺って何かしたかな?」
「いえ。何も」

じゃ、じゃあ何故に?
ま、まぁいいよ。

「ちょっと相談事があるんだけどいいかな?」
「・・・何でしょうか?」

おぉ? 今度は真剣な顔付きに。

「武装兵器の事なんだけど・・・」
「・・・・・・」

何? その呆れというか、予想外というか、そんな感じの反応。

「・・・・・・」
「・・・何でしょう?」

やっぱり気まずいよ。

「それぞれの武装を誰が担当してるのか聞いておきたくてさ」
「全てオモイカネが制御してくれますが?」

え? オモイカネ任せなの?
あ、そういえば、ミサイルとかもオモイカネ任せだから連合軍に向かったのか。

「レールガンとかもそうなの?」
「ええ。戦艦の攻撃は精密射撃ではなく弾幕を張る事にありますから」
「・・・詳しいね。なんか経験があるみたい」
「ッ!?」

普通は気付かないよね。
対象が自分達に比べて小さすぎるから弾幕を張る事で退けるのが戦艦のスタイルだって。

「・・・シミュレーションの結果です」
「そっか。ルリちゃんも色々と想定してるんだ。頼りになるね」

まだ十一歳なのに偉いよな。
・・・偉いっていうか、子供に負担かけてる時点で大人失格なんだけどさ。

「じゃあさ、もし後方から攻められたらどう対処する?
 グラビティブラストって前方だけじゃん? ナデシコを旋回させるのは手間がかかるし」
「・・・そうですね。レーザー砲とレールガンに任せるしかないかと。
 その為にわざわざレールガンを導入してどの方向にも対応できるようにした訳ですし」

その為に導入した?
まるでルリ嬢が意見を出したみたいだな。 
ま、そんな権限はルリ嬢にはないか。

「それだけで大丈夫かな?」
「アキトさんがいるから大丈夫です」
「そりゃあ、テンカワさんぐらいの凄腕なら大丈夫かもしれないけど、
 最悪の状況を想定するのが大事だと思うんだ」

テンカワさんだけを頼りにしちゃいけないよな。
テンカワさんにだって限界があるんだし?
・・・あれ? ルリ嬢ってこの時期からアキトさんって呼んでたっけ?
何かきっかけがあったような・・・。

「それなら、マエヤマさんならどうしますか?」

あ、ま、いいか。後で思い出そう。

「そうだねぇ。じゃあさ、レールガンの方を俺に任せてくれないかな?」
「・・・レールガンをですか?」
「うん。一応予備パイロットだからさ、射撃とかは苦手じゃないんだ。
 だから、レールガンを任せてもらえばそれなりの命中率があると思うよ」

ふふふ。射撃向上ソフトを用いれば精密射撃も不可能ではない。
エステバリスと違って射撃に集中できるし、絶対に外さない自信があるぜ。

「しかし、弾幕としてレールガンを」
「せっかく木星蜥蜴に有効なレールガンを弾幕に使うのはもったいないよ。
 レーザー砲で敵のミサイルとかを防いでレールガンで仕留めるってどう?」
「悪くないですね。でも、マエヤマさんがいない時はどうするんですか?」

む。それは考えてなかった。

「その時は弾幕として使ってくれればいいよ。俺がいる時にだけ操作を任せてくれれば」
「・・・そうですか。分かりました。プロスさんに訊いてみます」
「ごめんね。御願いするよ」

納得してもらえたみたいだ。
良かった。良かった。

「ま、基本的にDFで戦艦を囲っちゃうと思うから必要ないかもしれないけどね」

グラビティブラストを放つ時にもいちいち解除しなっきゃいけないのって面倒だよな。
ま、仕方ないんだけどさ。砲台だけ外に出す訳にはいかないし。

「色々と詳しいんですね。マエヤマさんは」
「そうかな? 普通だと思うけど」
「DFの特性、DFの弊害、武装の事など普通の人では考えない事ばかりです。
 それに後方から攻められた場合なんて考える人はいません」
「いや。だって、死にたくないしさ」

戦艦に乗るんだぜ。
把握しとかないと怖いじゃんか。
未来知ってるからって危険がない訳じゃないんだし。

「それに、ルリちゃんだって考えてたでしょ? 皆お気楽だからね。
 考えている人の一人や二人いないと墜ちちゃうよ?」
「お気楽がナデシコの良い所ですから」
「そっか。子供が少ないからさ。お姉ちゃんとしてルリちゃんが面倒見てあげてね」
「・・・子供じゃありません。・・・ですが、任されました」

少女です。が聞けると思ったけど、聞けなかったな。ちょっと残念。

「うん。頼りにしてるよ。お姉ちゃん」

お姉ちゃんとしての自覚がルリ嬢に良い影響を与えるかもしれないな。
うんうん。結構、良い事したみたいだな。俺。
改めて助け出せて良かったって思うよ。

「あの、聞いてもいいですか?」
「ん? 何だい?」

おぉ。少しは距離が縮んだか。
ルリ嬢から話し掛けてくれるなんてな。

「マエヤマさんはどうしてナデシコに乗ったんですか?」

ん? 前にも似たような事をテンカワさんに聞かれたな。

「それは理由とか目的とかって話?」
「はい。天才プログラマーのマエヤマさんが何故戦艦に乗っているのかと」
「ルリちゃんもテンカワさんと同じ事を訊くんだね」
「ッ!?」

何だかんだいって気が合うんだろうな。
一緒に暮らしてた時期があったみたいだし。
合わなかったら一緒に暮らさないだろ?
思考展開とか似てるのかも。

「そうだなぁ。お世話になった人を死なせたくないってのと、生き抜く為にって所かな」
「お世話になった人とは、ミナトさんの事ですか?」
「え? 良く知ってるね」
「ミナトさんと共に紹介されましたので、接点があるのかと」
「鋭いね。ルリちゃん」

ま、一緒に回ってたんだからそう思われるか。
偶然、同じタイミングで合流したとか思うよりそれらしいし。

「ミナトさんにはお世話になりっぱなしなんだ。
 恩人を一人危険な所に向かわせるのは薄情だしさ、役に立てる事があるかもしれないじゃん?」
「・・・ええ。まぁ」

納得してもらえなかったかな?

「それでは生き抜く為ってどういう事ですか?」

う~ん。ナデシコに乗るのが当たり前になってたって言うのはおかしいよな。
とりあえず、誤魔化しておくか。

「木星蜥蜴が襲ってきてるでしょ?」
「はい。それとマエヤマさんに何か関係があるんですか?」

スーッと眼が鋭くなるルリ嬢。
いやいや。襲撃と俺に関連性はないですから。

「そうじゃなくてさ。どうせ巻き込まれるなら、中心になりそうな所で頑張りたいと思って」
「・・・何故、ナデシコが中心になると?」

うわ!? 余計に鋭くなった。

「ちょっと考えれば分かるって。軍の情報を見ると他の戦艦じゃまったく相手にならない。
 ナデシコは地球最新鋭。なら、ナデシコは対処可能。違う?」
「・・・理論上は対処可能です」
「それなら、ナデシコが中心になってもおかしくないでしょ?
 まぁ、すぐに同系統の戦艦が出来上がってもおかしくないけど」

それでも、施工に時間がかかる事に変わりはない。
コスモスとか後一年ぐらいかかるみたいだし。

「・・・そうですか。マエヤマさんにはそんな理由が」
「うん。それじゃあさ、ルリちゃんの理由と目的を聞かせてもらっていいかな」
「・・・・・・」

あ。無言。
・・・まずかったかな?
ルリ嬢ってネルガルに買われて強制だった訳だし。
特に理由はありません、買われただけです、とか言われたら俺も嫌だしルリ嬢も傷付くと思う。
あぁ。俺ってばバカ! 無神経すぎる!

「・・・そうですね。私がここにいるのはここが私のいるべき所だからです」

いるべき所って・・・買われたからって意味?
・・・やばい。罪悪感で胸が痛い・・・。

「目的は幸せになる事です。私が望む幸せに」

あれ? 予想と違った答え。

「幸せになる・・・か。難しいけど、素敵な目的だね」
「・・・馬鹿にしてます?」
「まさか。俺も似たようなもんだよ」

そう白い眼で見ないでくれよ。
馬鹿になんかしてないんだから。

「笑われるから秘密にしてね」

口元に指を立ててしゃべらないでと忠告。
ま、ルリ嬢は秘密にしてって言った事を誰かに話すような人じゃないだろ。きっと。

「俺の最終目的は幸せになって平穏な生活を送る事なんだ」
「・・・幸せと平穏・・・ですか?」
「男の夢にしては小さいかな?」
「い、いえ。素敵な目的だと思いますよ」
「ハハハ。ルリちゃんもそんな感じでしょ?
 今は戦艦なんかに乗ってるけど、誰だって幸せになりたいと思う。
 それなら、こんな戦争なんて早く終わらせなくちゃ」

戦争なんて百害あって一利なし。俺みたいな庶民にはね。
それに、そもそも戦争の理由がくだらないと思う。
どっちが悪いって訊かれたらどちらかというと地球だと思うし。
いや。どっちも悪いんだけどさ。
どっちかっていうと地球側だよね。独立派に核を撃ち込むとかありえないと思う。

「・・・戦争・・・ですか?」

あ。まずったか?
戦争って人間対人間を表す言葉だもんな。
未確認物体からの襲撃は侵略というのが正しいかもしれん。
ま、どうにかして誤魔化そう。

「侵略ってのが正しいのかもしれないけど、いまいち相手側の目的が分からないんだよね」
「相手側って。向こうは知性のない―――」
「知性がなかったらもっと被害を受けてるって」

知性がないからこの程度で済んでるってのもおかしいでしょ。
知性がないなら野生の獣みたいなものだよ。見境なく破壊するって。
知性があるからこそこれだけの被害で済んでると思うんだよね。

「それにさ、機械で攻めてくるって事は誰かしらがどこかで制御してるって事じゃないかな?」
「じゃあ、何故接触してこないんですか?
 知性があるのなら、誰かしらに接触すると思うのですが?」
「う~ん。そうだな。言葉が通じないとか?」
「・・・はぁ・・・」

呆れられちゃった。ミスったかな?

「言葉が通じなくても意志の疎通は可能だと思います。
 そうでなければ、地球連合が発足する訳がないではないですか?」

ま、そうだよな。
言葉が通じなくても意志疎通が出来たから国際間で手を取り合う事が出来たんだ。
そりゃあ誰かが通訳としていたのかもしれないけど、
その通訳自体が意思疎通できなければ始まらないし。

「マエヤマさんは鋭いようでどこか抜けてるんですね」

呆れられた果てに嫌な印象を与えてしまった。
抜けてるとか。十一歳の子供に言われるのは情けなくないか?

「ルリちゃんが鋭いんだよ。ルリちゃんは大人だね」

背伸びしてる感じ? 子供扱いされるのが嫌いって早く大人になりたい証拠でしょ?

「大人にならなければならない環境にいましたから」

えぇっと。とても十一歳の子がする表情じゃないんですけど。
憂いとか蔭りがある表情とか。本当に十一歳?

「そっか。でもさ、ナデシコなら子供でもいいんじゃないかな? 優しい人ばっかしだし」

ミナトさんがいればルリ嬢は甘えられると思う。
今までは研究所で機械みたいに育てられたみたいだけど、
これからミナトさんが優しく暖かく育ててくれる筈だから。

「私、子供じゃありません。少女です」

おぉ。ここにきてこの台詞が聞けるとは。

「そっか。それなら、少女として大人の女性に色々と教えてもらいなよ。
将来立派な女性になる為にもね」

少女も子供だよって言い聞かせるのもいいけど、こういう説得方法も悪くないんじゃない?
こう言えば、もっと早くミナトさんとかに心を開くかもしれないし。

「・・・そうですね。そうします」

・・・納得してくれました。
何だろう? こんなに物分りの良い子だったっけ?
他人を遠ざけるような態度も取らないし。
・・・俺は敵視されてるけどさ。
・・・自分で言っててなんか悲しくなってきた。

シュンッ。

「コウキ君。ルリちゃん。交代しましょ」

ブリッジの扉が開いて、ミナトさんの声が聞こえた。
食事を取り終えたみたいだ。

「分かりました。ルリちゃん。一緒に行く?」
「・・・いえ。用があるので」

・・・断られてしまいました。
やっぱり俺には心を開いてくれないか。

「そっか。分かった。じゃ、また後でね」

一人寂しく食堂へ向かいます。
あぁ。早く友達作らないと。
ずっと一人で食事とかになったら嫌だしな。
ま、早く食って来て、さっさと戻ってきますか。
今日はカツ丼にしよっと。





SIDE MINATO

「えぇ!? 同棲してたんですかぁ!?」

食堂でご飯を食べてると自然とコウキ君の話題になった。
メグミちゃん曰く・・・。

「大人って感じですよね。何かお兄さんみたいでした」

ふふふ。それは日常生活のコウキ君を知らないからよ。

「コウキ君って結構子供っぽいのよ。初心だし。変な所で負けず嫌いだし」
「・・・ミナトさんってマエヤマさんの事に詳しいんですね」
「そりゃあ一年間ぐらい一緒に住んでたもの」
「へぇ。一年間も・・・って。えぇ!? 同棲してたんですかぁ!?」

となった訳。ま、同棲してたなんて普通じゃないものね。

「同棲じゃないわよ。同居してただけ」
「で、でも、同じ部屋に男女でいたんですよね」
「嫌ねぇ。姉弟みたいなものよ」

初めて部屋に入った時なんてカチコチだったし。
ふふふ。思い出すだけで可笑しいわ。

「それじゃあミナトさんとは何もないんですか?」
「え? 特には・・・」

何だろう? 認めたくない。
それでも、私のペースは崩さない。

「どうしたの? 惚れちゃった?」
「そういう訳じゃないんですけど、何か頼りになるし。若くして成功してますしね」

・・・何だ。
憧れか。
・・・良かった。

「あら。玉の輿って奴を狙ってるの?」
「そんなんじゃありませんよ。でも、成功してて悪い事なんかないじゃないですか」

ま、若い子には魅力的よね。
・・・私もまだ若いけど。
何だろう? やっぱり私は結婚とかにも充実感が欲しいかな。

「ミナトさんはマエヤマさんの事をどう思ってるんですか? 姉弟とかじゃなくて、個人として」
「そうね。優しくて可愛い変な子って感じね」

優しいし、いじり甲斐がって可愛いし、変な子だし。

「・・・とっても穏やかな顔してますよ。ミナトさん」
「そうかしら?」

コウキ君といると落ち着くしね。

「セレスちゃんとラピスちゃんはマエヤマさんの事をどう思ったかな?」

メグミちゃん。
小さい子に何を聞いてるのよ。
でも、ま、女に年齢なんて関係ないか。

「・・・悪い人じゃない」
「・・・優しい人だと思います」

ふふっ。良かったじゃない。コウキ君。
高評価よ。
飴が効いたかしら。

「そっか。じゃあ、色々とコウキ君を頼るといいわよ。コウキ君って結構世話焼きだから」

子供好きなのかしら?
セレスちゃん達を相手にしている時、とっても優しい眼をしている。

「・・・分かった」
「・・・はい」

頑張ってね。コウキ君。

「そうそう。ミナトさん」

ここからは女の子だけの姦しい話みたいね。
メグミちゃんもそうだし、皆良い子みたいだから、これからが楽しみね。

SIDE OUT






「えぇっと、プロスさん、艦長とかって・・・」

食事を終えて、再度ブリッジで活動中。
オペレーター、操舵手、通信士の仕事を再度確認して、
ミナトさんの隣の席で一息ついた時、ミナトさんがプロスさんにそう問いかけた。

「・・・えぇ~~~・・・」

そうですよね。困りますよね。
いえ。プロスさんが悪い訳ではないんですよ。
ただですね。えぇっと。そう。艦長が悪いんです。
ミスマル・ユリカ嬢が悪いんですよ。
・・・胃薬準備しておこうかな? プロスさんの為に。
まだ外に出ても大丈夫そうだし。

「本来であれば一週間前に着任の予定です」

ルリ嬢、プロスさんを気遣ってあげようよ。

「あれ? じゃあとっくにいる筈なんだ」
「・・・え、ええ」

・・・今回はマジで冷や汗を掻いてますね。
ハンカチがびしょ濡れにならない事を祈ります。

「大丈夫なんですか? 遅刻するような人が艦長で」
「・・・・・・」

メグミさんまで。

「副長はどうなのよ?」
「・・・・・・」

ミナトさん。トドメですよ。それ。

「ま、まぁ、落ち着きましょうよ。ミナトさん。メグミさん」

き、きっと優秀だった筈。
だ、だって、あんな激戦を生き抜けたんだから。

「コウキ君。遅刻なんかする艦長を庇うの?」
「私、マエヤマさんに言われてこれが戦艦なんだって自覚しました。
 遅刻するような艦長は信じられません」

や、やばい。余計な事を言ったか? 俺。
ブリッジクルーのお気楽さと団結力こそがナデシコの強さだろ?
それがなくなったらやばいって。

「と、とりあえず、艦長がどんな人かを吟味してみましょうよ。ルリちゃん。御願いできるかな?」
「分かりました」

モニターに映るユリカ嬢の経歴とピースしている写真。
うん。ピース姿なのはちょっといただけないかな。不真面目に見える。
ま、美人なのは認めるけどさ。

「ほぉ。戦略シミュレーションで無敗か。凄いな」

ゴート氏が唸る。
まぁ、確かに凄いよね。
でもさ、それって参謀とかの役目だと思うんだよ。
だって、ゴートさんが戦闘指揮としているんだし、参謀がいてもおかしくないでしょ。
ってか、原作見た限り、ユリカ嬢の独断で全て行ってた気がする。
副長のジュン君とか書類整理ってイメージしかないし。
あれ? ある意味、圧倒的カリスマ性と見て良いのか?
ま、プロスさんがスカウトしたんだから、間違いはないんだろうけど。

「いやぁ。彼女を引き抜くのは苦労しましたよ」

あ。プロスさん。復活。
意気揚々としていらっしゃる。

「へぇ。凄いじゃない」

うん。単純に凄いと思うよ。

「・・・ねぇねぇ、コウキ君」

ん?

「何ですか?」
「ちょっと耳貸して」

あぁ。内緒話ですか。

「・・・何です?」
「・・・優秀なのよね?」
「・・・優秀ですよ。性格はともかく能力に関しては」
「・・・遅刻するのに?」
「・・・性格はともかく能力に関しては」
「・・・そう」

何だろう? そのやるせない感じ。

「・・・いざとなったら護ってくれるのよね?」
「・・・ええ。その為に俺がいるんですから」
「・・・頼むわよ。コウキ君」
「・・・ええ」

内緒話を終えて、離れていくミナトさん。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

何だろう? こっち見てるんですけど。

「どうしたの? メグミちゃん。ルリちゃん」
「な、なんでもないですよ。ミナトさん」
「いえ。特には・・・」

じゃあ、何でだろう?

「・・・・・・」

ん? 裾が引っ張られてる。
えぇっと、セレスちゃん?

「どうかした?」
「・・・教えて欲しい事があります」

あ、そっか。補佐だもんな。俺。

「うん。何だい?」
「・・・ここです」

頼られるのは嬉しい限りだな。
教えられる事なんて少ないけど。

「マエヤマさん、レールガンの件ですが」
「あ、うん。何だい?」
「プロスさんの許可が下りました」
「そっか。ありがとう」
「いえ。優先順位の第一位をマエヤマさんに設定してあります。
 操作や調整は御手元のコンソールからどうぞ」
「分かった。後でちょっと調整に付き合ってくれるかな」
「いいですよ。仕事ですから」

おし。これでレールガンが撃てる。

「レールガンって?」
「操作権をもらったんですよ。戦闘中に何も出来ないのは嫌ですからね」
「そっか。コウキ君って誰か欠員が出なければ役目なしなんだ」
「・・・・・・」

いらない存在と言われたようで胸にグサっときました。

「ごめんごめん。ほら。コウキ君は色んな補佐をしてくれるから頼りにしてるのよ」
「そ、そうですよ。マエヤマさん。そう落ち込まないで下さい」

フォローありがとうございます。
・・・一応、立ち直りましたから。

「どうしてレールガンなの? 他にもあったじゃない」
「レールガンが一番木星蜥蜴に有効ですからね」
「え? そうなの?」

まだ相手側の戦艦って出てなかったな。
どう説明しよう。
・・・あれ? それなら、何でルリ嬢、さっき肯定したんだ?

「コウキ君?」

火星大戦から情報を得てたのかな?
ま、相手方がグラビティブラストを持ってたら、
ディストーションフィールドを持っているって気付いてもおかしくないもんな。
あ。チューリップがあったか。いや。チューリップはDFとか張ってなかったな。
・・・どうしてだろう?

「コウキ君!」
「は、はい? な、何ですか?」

な、何だ!?

「無視なんて酷いじゃない」
「え、あ、すいません。ちょっと考え事をしてまして」
「許さないわ」
「えぇ!?」
「そうね。今度、ご飯を奢りなさい」
「えぇっと」

お金あるからいいけどさ。
何か理不尽じゃない?

「わ、分かりました。ホウメイさんの料理、美味しいですもんね」
「そうなのよぉ。和洋中全部揃ってて、ついつい食べ過ぎちゃうのよね」
「・・・食べ過ぎると太―――」
「その話題は禁止!」

ゴンッ!

「イタッ! ・・・久しぶりに拳骨を喰らいましたよ」

あぁ。頭が割れるぅぅぅ。

「女性に失礼よ」
「私もそう思います」
「す、すいませんでした」

理不尽だよ。

「それで? どうして、レールガンなの?」
「火星大戦の映像を調べててですね。
 向こうが重力波、要するにグラビティブラストを放ってきたんですよ」
「あ。じゃあ、DFもあるかもしれないって事?」
「予想でしかないんですけどね」

ま、実際に後々バッタですらDFを纏うし。
レールガンがあると便利だろ。
というか、ミナトさんも良くやってくれるよ。
俺が未来知っているって分かってるのに誤魔化しに付き合ってくれて。
本当に感謝です。頼りになります。

「・・・次はどうするんですか?」
「あ、うん。ごめんごめん。次はね」

セレスちゃんをスルーしていた。
気をつけないと。

「・・・コウキ」
「ん? ラピスちゃん。どうしたの?」

次はラピス嬢か。
何か色々と忙しいな。

「・・・アキトが言ってた。コウキのパイロットとしての腕は確かだって」

おぉ。俺ってば褒められてたのか。

「・・・どうやってアキトが認める技量を身に付けた?」

どうやって訓練したかって事?
俺がそれなりに戦えるのはナノマシンの恩恵と卑怯ソフトを使ってるからなんだけど。

「俺自身はそんなに強くないよ。色々と使い勝手の良いソフトをインストールしてるだけ」
「・・・そんな事をしたら容量が不足する」
「必要な分を的確に最小限に」
「ん?」

首を傾けるラピス嬢。
うん。可愛らしいね。

「それが基本だよ。無駄を減らして最小容量にして更に圧縮すれば結構大丈夫」

かなりの量が俺の自作で埋まってるもんな。俺のアサルトピットの中。
ま、遺跡からのパクリだけど。

「・・・でも、それと戦闘は違う」
「元々エステバリスのコンセプトはIFSさえあれば子供でも乗れる、だしね。
 多少、銃器とかそういうのが使えれば・・・」
「・・・普通、銃器は使えない」

・・・あ。しまった。

「・・・どうして銃器が使える?」
「そうね。私も気になるわ」
「私もです」
「私も気になります」

嘘!? 四面楚歌? 孤立無援?
ゴートさん達まで睨んでる?

「えぇっとさ。笑わないでね」
「・・・笑わない」
「銃器が使える笑える理由って何よ?」

いや。だってさ。恥ずかしいじゃん。

「俺ってさ、子供の頃から結構ゲームとかにはまっててさ。
 シューティングアクションゲームとかやりこんでたんだよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・それだけですか?」
「そういえば、コウキ君がスカウトされたのもゲーム機だったものね」

やめて。その呆れた眼。
本気で恥ずかしいから。

「IFSなら撃つってイメージと標準だけ合わせれば撃てるからさ。
 だから、ゲームをやりこんでたおかげでイメージは割と簡単に出来る」

まさかゲームがこうまで役に立つなんて俺も思わなかった。

「それじゃあ普通には使えないって事?」
「俺の経験はエアーガンぐらいです」

エアーガンと普通の銃とかって全然違うでしょ?
IFSって凄いよね。
イメージだけで万事解決なんだから。

「・・・そう」

う~ん。周りも苦笑とか呆れとかだよ。

「あ。ゴートさん」
「ん? 何だ?」
「今度、銃の扱い方を教えてくれませんか? きちんとしたイメージも持ちたいんで」

一応ね。使えないよりはマシでしょ?
これからの為にもさ。

「いいだろう。時間を取っておけ」
「ありがとうございます」

これでもうちょっと強くなれるかな?

「・・・次はどうしますか?」

おぉ。またもやスルーしていた。
まずいまずい。

「お。大分出来てきた。後はもうちょっとだね」
「・・・はい」

成長が早くて楽しいな。
・・・教えるのって結構楽しいかも。
将来、教師とかやってみようかな?
知識量だけは半端ないし。

「うんうん。ちゃんとお兄ちゃんやってるじゃない」

何を暖かな眼で眺めていらっしゃるのですか? ミナトさん。
ってか、お兄ちゃんって。

「・・・・・・」

・・・全然似てないから無理でしょ。
妖精の兄は凡人。
ハハハ。ないない。
・・・あぁ。今日の晩飯は特別なものにしよう。
自分を慰めるのって大切だと思うんだ。

「・・・終わりました」
「うん。良く出来たね。偉い偉い」
「・・・・・・」

皆して暖かい視線を送らないで下さい。
注目されるの慣れてないんで。





「今日、ナデシコの危険性について話していました。どうやらかなり詳しいみたいです」
「ナデシコについて詳しい・・・か。一体何者なんだ?」
「分かりません。それと、何だか木連についても知っているような気がします」
「ナデシコを知り、木連を知る存在。まるで分からんな」
「レールガンの操作権を譲るよう言われました。木星蜥蜴に有効だからと」
「何? それを認めたのか?」
「害はなさそうでしたので。少なくとも私達よりは使えると思います」
「・・・そうか。武装が足りないと説得して無理矢理導入させたレールガンだからな。
 使えた方がいいのは確かだが、危険ではないか?」
「先日の結論通り、悪い人ではありません。ナデシコに危害を加えるような事はしないかと」
「・・・果たして信じていいのかどうか」
「幸せと平穏を望むと。そう言っていました。
 断言できる訳ではないですが、その言葉に嘘はないと思います」
「・・・頼りになる味方か、それとも、狡猾な敵か。どっちなんだろうな・・・」
「味方であって欲しいですね」
「・・・そうだな」






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