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ヤクザの学校
作:タンポポ



教訓その五〜例えチーム名だろうと、名前は適当に決めるな!



「プレイボール!!」

担任のヤス先生が、右手を高く上げ、叫んだ。


「しゃあ!」

一葵が気合いを入れてバッターボックスに入る。


ついに始まったクラス別対抗ランク昇格を賭けたイベント。今回の競技はソフトボール。


広すぎる校舎は運動場のスペースも多く、一度に試合が行われる。

俺達C−4組の五人、俺、ヒナ、マヤ、レイナ、一葵のチーム名《ダーッと行ってワー》(命名一葵)の、一回戦の幕開けだ。


一番ショート、一葵
二番キャッチャー、レイナ
三番センター、マヤ
四番ピッチャー、ヒナ
五番セカンド、俺


野球に自信がある一葵と、運動神経抜群のヒナを中心に組んだオーダーだ。

頭脳明晰で、ヒナを良く知っているレイナをキャッチャーに。

バッテリーまでは簡単に決まったが、問題は野手だ。

普通は野手は七人いる。
しかし、残り三人しかいないのだ。

つまり、マヤと一葵と俺だけでグランドを掛けづりまわらなくてはならない。

そこで、一番リスクの少なくしたのが、この守備形。

俺はセカンドにつきながら、一葵に打球が転がった時点で、ファーストにダッシュして着く。

万が一だが外野に打球が行けばマヤに任せるが、マヤはセンターとレフトの間に守らせ、ライト方面を担当するのは俺だ。


色々と考えた一葵だったが、心配ご無用だった。

何せ一回の表は相手チームの攻撃だったが、ヒナの剛球により、あっさり三者三振という好スタートをきったのだった。


試合は短期戦。攻守回数を三回を繰り返すか、30分の時間が経った時点で終了。

一回から先取点を取れればかなり有利になるのだ。


さて、気合いを入れた一葵。バットを長く持ち、一発長打の構えだ。

「よっしゃ!いただき!」

初球を迷わず振り抜いた打球は、見事にセンターの横を抜けた。

『長打コースだ!走れ一葵!』

「わーってるよ」

守備が少ないという条件は相手チームも同じである。
確実にアウトにできる内野手に二人、外野を一人という守備形にするのがセオリーだ。

センターが慌ててボールにたどり着いた時には、既に一葵は三塁ベースを回っていた。

返球むなしく、そのまま一葵はホームイン。

「プレイボールホームラン」

ホームベースの上に立ち、人差し指を立て、手を高く上げた一葵。

どうでも良いから早く戻ってこい、恥ずかしいわ。


続いて二番レイナがバッターボックスに入る。

力がないレイナは一番軽いバットを短く持ち、打席の一番後ろに立って構えた。

バットをねかせている所を見ると、確実にミートし、シングルヒット狙いのようだ。

ソフトボール未経験者が下手投げをすれば、もちろん球はフワァーンと山なりになる。

「球速およそ50キロ。真ん中高めの山なりのボールはミートするだけで……」

何やらレイナがバッターボックスの中でブツブツと呟いている。

「入射角よし、打球は…」

レイナがバットを振り抜く。

「…レフト前へ」

パコンとジャストミートした打球はレフトの手前に低い球道を描いて飛んでいった。

よく分かんないけど、なんか凄いな。


続いて打順はマヤ。

連打を浴びた相手投手は既に肩で息をしている。

相手だって昇格のために必死なのだ。

それを今の俺達の《イケイケ押せ押せ》状態の前に、すっかり顔が青ざめている。

「おぅテメェど真ん中投げなかったらどうなるか分かってるよなぁ!」

さらにマヤのこの脅迫だもん。そりゃ青ざめるよね。

相手投手がビクビクしながら投げたボールは、手元が狂ったのか、マヤの顔目掛けて一直線。

いくら球速が遅くても、決して柔らかくはないソフトボールが顔に当たったら無事ではないだろう。ましてやマヤは女の子だ。顔に傷でもできたら大変だ…!

『マヤ!危ねぇ!!』

「この…真ん中っつっただろうが!」

マヤは避ける事なくバットを縦に振り下ろした。

一刀両断を思い出させるスイングでボールを叩く。

バットにズレもなく当たったボールは理論上、正面に飛んでいく。

マヤの正面には、もちろん相手投手がいるわけだ。

怒りを込めてフルスイングしたバットにジャストミートだ。打球のスピードも半端ではない。

しかもソフトボールは野球よりも、ピッチャーマウンドとバッターボックスの距離が短い。

当然、この打球に反応しきれなかった相手投手の顔面に直撃…!!

あらら…鼻から赤い色の水性の液体が出てますよ…。


試合は相手投手の治療を優先させるため一時中断。誰の目から見ても、明らかに戦闘不能なので、人数のハンディをなくすために俺が試合から除外される事となった。

まぁ、ヒナの球は打たれないから問題ないだろう。


ーー試合再開。
マヤはシングルヒット扱いになったので、一塁に。レイナは二塁。

ノーアウト一、二塁と言うチャンスに四番ヒナ。

「よろしくねぇ〜♪」

新しい相手投手にニコッと可愛らしく微笑むヒナ。

「ヒナたん…萌え」

うわ、あの投手は以前ヒナに投げ飛ばされて壁にメリ込んでた奴だ。

デブでメガネでキモくてオタクでロン毛だから、あだ名は《デブロン毛》に決定〜。

「いくよ、ハァ…ハァ」

すでに肩で息しているデブロン毛。まぁ理由はちょっと違うけど。

「えい♪」

そして可愛らしい掛け声とは裏腹に、ありえない飛距離をたたき出した打球。

センターの頭上どころか、遥か彼方まで飛んでいった。

「ほぇ〜…」

これには一同ア然。

とにかく、スリーランホームランで一気に三点追加。一葵の一点に加えると四点だ。

「ゲームセット!」

ヒナがホームインするとヤス先生がコールした。

時計を見ると、試合開始から既に30分が経過している。

どうやら、マヤが怪我させた奴の治療に思いの外、時間を費やしたみたいだ。

相手チームの攻撃を終えるまでの時間もないとの事で、試合は強制終了した。

何はともあれ、俺達は見事に一回戦を突破したのだ。
ちなみに俺は何もしてない。


「ナイスホームラン、ヒナ」
「ありがとぉ〜♪」
「いや、この試合の決定打は俺のプレイボールホームラ…」
「お前のはまぐれだろ」

いける…このメンバーならマジで優勝も夢じゃない。

「お前ら、まずは一回戦突破おめでとう」

「あ、ヤス先生〜♪ヒナのホームラン凄かったでしょ〜」

「あぁ、凄かったよ。失くなったボールの請求書が俺のトコに来たがな」

「アハハ、ゴメンなさ〜い」

「それより、勝ったチームは体育館へ行って試合の結果を報告してこい。失格になっちまうぞ?」

「はーい。行こ、みんな」

そして俺達は試合に勝った事を報告に体育館に向かった。

この学校の体育館はとにかくでかい!

もう全国大会の会場に使われてもおかしくないぐらいだ。

『すいません、え…と、一回戦、4-0で勝ちました』

受け付けの所にいた先生に話し掛ける。

「おめでとう。チーム名は?」

チーム名…

『ダーっと行ってワー…です』

「ダーっと行っ…プッ!おっと失礼」

ばか一葵が! 恥ずかしいじゃねぇか。

「次は30分後にグランドBで試合だ。遅れるなよ」

『はい!』

先生がトーナメント表に結果を書いている。次の対戦相手は…って気になったところで、俺にはどのチームに誰がいるかなんて分からないがな。

「おい…やべぇぞ。次の奴ら」

一葵の顔色がよろしくない。どうしたんだ?

「B-1組って…アイツがいるクラスじゃ…」

B…って、ひとランク上の奴らを相手にすんのか!?

いや、でも関係ねぇだろ。ランクが上でもソフトボールだったら、俺らのチームにも勝ち目は…

「23対0…派手にやってくれるわね」

わー…たった30分で23点も取った人達が相手なんだ。

「二ノ宮 にのみや まさる…高校二年生だ。こいつはチームを甲子園出場に導いた男だったが、不祥事を起こして、学校側から責任を取られ、この学校に来た奴よ」

甲子園出場…かぁ。あ、そういえばニュースで甲子園出場を没収された学校とかで騒がれてたっけ。

次の対戦相手が…そいつがいるチームなのか…。


「もしかしたらアタシの球も通用しないかもね♪」

『そんな明るく言うなよヒナ…!』

「イィの!ってかもし打たれたら嬉しいし」

嬉しい…って。

『ヒナってMなのか?』

「違う違う♪むしろS…って何言わせてんのよ!」

自分で言ったんじゃないか…。
可愛い顔して何言ってんだか…。

「アタシがこの学校にきたもう一つの目的はパートナー探しなの♪アタシより強い人を…ね」

『パートナー?』

「殺し屋よ♪残念ながらレイナは…その気がないみたいね」

レイナが苦笑いで頷く。
殺し屋のパートナー探しか。よし、ヒナの前では大人しくしとこ。












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