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ヤクザの学校
作:タンポポ



教訓その十八〜『付き合う』って難しい!



『なぁ、ヒナどこに居るんだ?』

「えぇ!? いまさらですか!?」

さて、掃除を一葵に押し付けて飛び出したものの、肝心のヒナの居場所が分からない事に気付いた。

いや、デブロン毛が歩き出したから、俺はてっきり居場所を知っているのかと思ってついてきただけだし…。


まさかデブロン毛も知らなかったとは…どうしようもないな。

せっかくデブロン毛が告白する気まんまんなのに。

「仕方ありませんね。ヒナちゃんの寮に行きましょう」

『おっ、それが一番てっとり早いな! …で、ヒナの部屋ってドコだ?』

「そんな事も知らないんですか? 基本ですよ、基本」

何の基本だよ…。

俺はヒナの部屋に行った事がないんだ。知らなくて当たり前だろうが。

飲み会は俺達の部屋だったし、買い物の荷物を持ってあげたのも途中までだ。

「ちなみに今日からヒナちゃんはBクラスの寮に入る事になっているので、こっちですよ」

………あ、そういや俺達も今日から寮が変わるんだった。

帰ったら準備しなくちゃな。まぁある程度は一葵がやっといてくれるだろう。


「さっ、着きました。ここです…」

寮の前で、デブロン毛は言った。何だ、妙に落ち着いてるじゃねぇか。まぁ汗はかいてるけど。

瞳に迷いがない。

まるで、これから死にに行く戦士のように、割り切った表情をしている。

そして、何故ヒナの部屋を知っているのでしょうか?

Cクラス用の寮ならまだしも、今日からのBクラス用の寮の場所さえも知っているのは明らかにおかしい。

さすが、ストーカー。


『準備は良いな?』
「いつでも」
『呼び鈴鳴らしたら俺はこの場を離れるからな』
「ありがとうございます。僕なんかに付き添ってくれて」
『いいってことよ』

デブロン毛は笑った。
正直キモかったが、それは言いっこなしということで。

〜ピンポーン〜

ダッシュ!!


若かりし頃によくやったピンポンダッシュ。
まさか中学三年生にもなってやるとは思わなかったが、俺は呼び鈴を押した後、約束通りその場を離れた。

とは言っても、ヒナの部屋は一番端の部屋だったため、角に隠れている。

ここなら様子どころか声まで聞こえるぜ。まぁはたから見たら俺もストーカーに間違えられそうだがな。

後はヒナが出てきて、デブロン毛が告白するだけだ。

さぁ、デブロン毛の恋は実るのか!?



ーーーーーーーーーー


「ふぅ、これで荷物は全部だね」

「ねぇ、レイナ。『付き合う』って、どういう事なのかな?」

「えっ、どうしたのいきなり?」

「アタシ、まだ一度も付き合った事ないしさ」

「私だってないわよ?」

「でも何となーくレイナなら知ってるかな? って思ってさ。手を繋ぐ事? チューする事? 一緒に遊ぶ事?」

「うーん。それは人それぞれじゃないかな? ヒナが『一緒に居て楽しい、この人を独り占めしたい』って思える男の子が居たら、自然に手も繋ぎたくなるし、キスだってしたくなるわよ」

「そうかなぁ…。あ、マヤちゃん!」

「ちょうどいいわね。マヤちゃんなら付き合った事あるから、聞いてみたら?」

「ねぇマヤちゃん、『付き合う』って、どういう意味?」

「(何だコイツら、この年になってまだ未経験者かよ)
えっと…ヒナは好きな男ができたのか?」


「ふふ、ヒナはジンくんがお気に入りなのよねー」

「違うよレイナ!」

「(なっ…よりによってジンが好きだと!? しかも付き合う意味? って事は…だっ、駄目だ! いくらヒナでもジンは渡せない!よし、ちょっと意地悪してやるか…)

『付き合う』ってのはね、こういう事をするんだよ」

「…え? ちょっ…マヤちゃん…どこ触っ…キャア!」
「なるほど…付き合うというのは、胸を触っても良いという事なんですね?」

「(うわっ…マジで信じてるし。でも面白いなコイツら)
まだまだ、こんなもんじゃないぞ? 次にココをこうして……」

「いやーーー!」



〜ピンポーン〜

「あ…誰か来た…アタシが出るよ…」


ーーーーーーーー


がちゃ


お、ヒナが出てきた。
なぜか涙目で。しかも顔真っ赤で。

中で何があったんだ…?


「あっ、アタシとレイナの机を持ってきてくれた…」

「こっ、こんちは」

良かったじゃないかデブロン毛、お前の事覚えてもらえてるみたいだぞ。


「あの、僕と『付き合って』下さい!」

やっふぅー!
ついに言いやがったぜー!

さぁ、ヒナの反応は…?

「付き合う…?」

うん? ヒナの表情が曇ったが…?

「絶っ対っ嫌っ!!!」

「ーーっ!!」

フラれんの速っ!

「この変態っ!!!」

「ふぐぅ!」

しかもデブロン毛殴られた!!


好きな子に『変態』と呼ばれたデブロン毛は、その場に崩れ落ちた。

…が、落ち込む暇など与えないとばかりに放たれたヒナの異常なスピードと破壊力パンチを浴びたデブロン毛は、後方へ吹っ飛んだ。

ヒナひでぇな。

いくら何でもそこまで拒否らなくても…ってか殴る事ないのに。

しかも涙目で。顔真っ赤にしながら。

そんなに嫌だったのか…。

そういえばヒナの怒った表情を見るのは初めてだな。



ヒナは冷たい目をデブロン毛に向けると、ドアを閉めてしまった。


俺はデブロン毛の元へ駆け寄る。


何て声をかければ良いのだろう?



自信がなかったデブロン毛が、勇気を振り絞って告白したのに…ヒナから返ってきた返事は『絶対嫌』『変態』『拳』だもんなぁ。

もしこれが俺の立場だったら泣くね。


『あぁー…デブロン毛? その…なんつうか………大丈夫か?』

倒れていたデブロン毛を何とか起こし、俺なりに気を使って声をかけてみたが、まぁ自分で聞いといて何だが大丈夫じゃないだろうなぁ。

「やばい、目覚めそう…!」

…………………。


『この変態がっ!!』


「ほぐぅ!?」


心配して損したぜ…。



その後、デブロン毛は諦めたのか、『あ、じゃあ帰ります…』と言ってトボトボと帰って行った。

さて、俺も帰って引っ越しの準備をしなくては。

荷物整理もしてなかったから、今頃一葵も必死だろうし。


その時、ヒナの部屋のドアが開いた。

「ジッ、ジン君!?」

中から出てきたのはレイナだった。

「何してるの? ここ女子寮だよ?」

『えっと…デブロン毛の付き添いで…』

「ヒナ泣いてたわよ? まさかジン君が勧めたの?」

『………っ。いっ、いや、デブロン毛の自分の意志ですね』

何か一瞬レイナが俺を見る目がメッチャ怖かったんですけど…。


「なら良いんだけど…。あっ! この前の飲み会の時ね、ヒナがジン君達の部屋から『ツンデレ雑誌』を持って来ちゃったんだけど…」

ツンデレ雑誌…あ、そういえば一葵がなくなったって騒いでたっけ。

『あれ一葵のだから、別に問題ないけど』

「うーん、でもほら、一応返しますね。ちょっと上がってきます?」

え!? おっ、女の子の部屋入っちゃって良いんすか!?

……なーんて、どっかのハーレムネタの清純主人公じゃあるまいし。


『おっ、おう。じゃあちょっとお邪魔しようかな…』

えぇ。でも僕チキンなので緊張はしますよ。


「それに…ちょっとジン君に言いたい事もあるし…」

こっ、これはまさか…。

デブロン毛の失恋は伏線で、俺とレイナにフラグが立つのか!?

こうして緊張しまくりの俺は、部屋の中にお邪魔したのだった。












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