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私は敵になりません! 作者:奏多
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予期しないイベントの変更?

 翌日は準備と魔術披露に追われて、バタバタと過ぎ去った。

 そんな中でも私はまだ考えていた。
 せっかくの序盤から魔術師になって参加しているという、この有利な状況。これを上手く使えば、もっと被害を小さくできるのではないだろうか、ということだ。
 問題は私の持続力と、使える手である。

 問題1:持続時間は作成するものによる。
 小さなものなら半日ぐらいは維持できる。けれど巨大土人形レベルになると、歩かせることだけの動作は一時間。走らせたりと色んな動きをさせたら20分持てばいい方だ。

 歩かせるにしても、弓矢が飛びかい、敵兵が土人形の足にダメもとで斬りつけてきたりするような状況では、私が気を払うものが多すぎて、精神疲労を起こして維持に集中できなくなるから、30分ちょい持てばいい方だろう。
 たった30分、敵をかく乱するだけというのも、そこそこは効果があると思う。けれど乱戦になった場所には手を差し伸べられない。味方までかく乱しかねないからだ。

 問題2:土人形で砦を破壊しに行くのは難しい。
 持続時間から考えて、なんとか至近まで忍び寄って土人形を登場させなければならない。さもなければ、えんやこらと砦を叩いているうちに時間制限がきて、敵を脅しただけで終了になりかねない。

 私一人じゃ無理なので、潜行部隊を作ってもらうしかないだろう。
 移動がなんとかしたとしても、砦の壁を壊したら、たぶん私の限界が来る。
 へろへろになった私を抱えることになるカインさん達には、追いかけてくる敵数千からの、死の逃走劇を実行してもらわなくてはならないのだ。
 ならば味方の軍に近くにいてもらったとしても、やっぱりかなりの距離を逃げ回ることになるだろう。一歩間違えば私もろとも全滅だ。リスクが高い。

 そもそも、毎回決死隊を作らせるのか?
 ちょっと現実的じゃないというか。ランダム選考やくじ引きになってしまったら、兵の士気が心配だ。
 そこで私が離れた距離から、土人形を動かすという手を考えたが、それも問題がある。
 あまり遠くには離れられない上、どうしても地面に手をついたままじゃないと、土人形を動かせないのだ。
 下手をすると、戦場のど真ん中で地面に座り込んだ私を、皆に守ってもらうというとんでもないことになる。だめだめ、リスク高いわ。

 それぐらいなら、軍と一緒に行動し、進軍とともに一目散に砦まで走って、砦を殴って土人形に乗って帰る、というのを繰り返すのが関の山だ。
 アランとも相談した時は、それが最善だろうという結論に至った。
 でも、それでどれだけの効果が出るだろう。

「そういえば師匠って戦争には参加したことが?」
「若かりし頃にはあったかのう、ククッ」
 就寝時間。早々とベッドの中に潜り込みながら、枕元に置いた師匠に尋ねれば、師匠は昔を懐かしむように答えてくれる。
 師匠が若かった頃っていうんだから、40年くらい前のことだろうか?

「その頃はサレハルドにおったのぅ。内乱があってな、とりあえず師とともに居住地周辺があらされるのが嫌で、色々やったのだったか。ウヒヒヒ」
「主に何をしたんです?」
 他の魔術師がどんな風に戦うのか、興味がある。それを聞いていたら、もっと何か思いつくんじゃないかと思ったのだ。

「まぁ、風で矢が届かぬのは所の口よな。師が炎使いであったゆえ、扇よりも効率よく仰いで山一つごと敵を焼き尽くしたこともあったかのぅ。イヒヒヒ。あれからずっと禿山になっておったと耳にしておったが、今はどうなっているやら」
「あれ。ずっとサレハルドに居たんじゃないんですか?」

「寄る年波には勝てんでの。あそこは寒い地方じゃ。南の方が過ごしやすかろうと移住したんじゃ」
 なるほど。実に生活臭漂う理由だ。師匠らしい。

 その後ホレス師匠は、どうしてかファルジアをうろつき始め、小金を稼ごうとしてパトリシエール伯爵の言葉に騙されて、クレディアス子爵に支配される契約の石のかけらを飲みこまされたとか。
 とにかく、魔術師の戦い方自体は、私が想像していたファンタジーな魔法の戦いみたいなもので間違いないようだ。

「やっぱり火とかって、一番攻撃には最適ですよね……」
 その点土というのは、石つぶて程度を投げても痛いだけで、火ほど恐怖にかられないだろう。
 そりゃ巨人を作って踏み潰されそうになったら怖いけど。けれどあのサイズのものを維持して動かすのって精神力の摩耗が激しい。

「術を維持するとなると、媒介使うぐらいか……」
 銅貨というか、銅鉱石をヴェイン辺境伯様からある程度譲ってもらえたので、今回はそこそこの量を所持している。これを使って使用時間はどれくらい延長できるだろう。

「やや長くなる程度で考えた方がいいじゃろな。まぁ作成する代物の大きさにもよるじゃろ。銅そのもので作るなら、二倍と考えれば良いだろうがな。イッヒヒヒ」
「それ、銅鉱山でも手に入れないと不可能じゃないですか」
 巨人が作成できるほどの銅の量って、もう鉱山レベルじゃないと手に入らないだろう。
 ようするに、不可能だ。

 がっくりとしたが、とりあえずは銅を使っての作戦を考えることにして、その日は就寝した。

 翌日の朝、私達は予定通り1万5千になった軍を二つに分け、別々に出発させた。
 目指すは北北西、カッシア領にあるクロンファード砦だ。

 砦はエヴラールから王都まで、枝分かれしながら伸びる街道の傍にある。ようは王都からルアイン等に遠征するにも、ルアインが王都へ進軍するにも、街道を通るのが一番楽だということになる。
 だからこそ領ごとに砦が築かれ、万が一のために兵を置くことになっているのだが。

 エヴラールから侵攻の知らせを送ったものの、魔術師くずれと敵軍の数の前に、あえなく明け渡すこととなってしまったという。
 対抗できたエヴラールが幸運だったのだろう。

 ルアイン本隊がかなり西へ移動しているので、現在砦を占拠しているのは、多くても1万5千人くらいだろうと予想された。けれど砦に籠られてしまえば、二倍の兵力があっても長期戦になってしまう。
 そこでアラン達が合議の上、軍を二つに分けることにした。半分が先行し、半分がやや遅れて後を追うことになっている。
 これで砦にいるルアイン軍をおびき寄せておいて敵を減らし、砦に残った者たちに降伏させるのだ。

 アランや私達は先行組にいる。
 軍の構成としては七割がエヴラールの兵で、三割がリメリック、レインスターの兵だ。

 クロンファード砦までは5日かかる。
 5日かけて至近まで移動。6日目に攻略を開始する手はずになっている。

 そんな移動を始めて4日と半分近くが経った頃、エヴラールを出発した時と同様に馬車の中で揺られていた私は、揺れる馬車の中から外を眺めていた。
 スプリングなど存在しない馬車は、馬上よりはマシだが、けっこう揺れる。特に石畳で舗装された町から出て、砂利を入れて踏み固められただけの道では、クッションがなければ酷い目に遭っただろうと思うぐらい、体が弾む。
 書き物などもっての外という状況では、景色を見る以外に何もできないのだ。

 それでも、もうすぐ休憩時間だ。
 騎馬や馬車を操る者以外は徒歩なので、兵士の体力温存のためにも時々休憩時間をとる必要がある。

 昨日は久々の野宿だった。
 魔術の練習ついでに、いくらか兵士用にと、十人は入れる土のドームを作ったりもしたので、少しは従軍している人々の体力維持に協力できたと思う。
 突然に盛り上がる土の様子を見た兵士は、最初土のドームになかなか入りたがらなかったけれど。勇気を出して寝泊まりした者には、おおむね好評だったようだ。テントよりも防音性が高いので、家の中にいるような安心感があったらしい。
 私も自分用に作成したものに寝泊まりしたのだが、おおむね問題なかった。

 おかげで割に元気だったので、休憩時間になった時に、私は銅鉱石を使って巨大土人形を作成してみた。
 もちろん休憩中な兵士の皆さんをびっくりさせないよう、少し離れた場所で、だが。

「おーいい眺め」
 今回も土人形の左肩に搭乗スペースを作り、そこに乗り込んでぐるりと見渡す。

「それより、お前さんの術の感じはどうなんじゃ?」
「あ、そうでした」

 ホレス師匠に、術の安定度や持続時間はどうなんだといわれて、今土人形に割いている魔力なんかを確認する。
 ……うん、なんかいつもより楽だな。
 核に使った銅鉱石が少し増幅してくれてるみたいで、くるくると歯車が綺麗に回っているような感覚がある。

「いつもよりいいみたい。1.2倍くらいは維持できそ……」
 ホレス師匠に話していた私は、ふと遠くに人の集団を見つけた。

 街道脇の山の裾野を下る細い道だ。
 木立などのせいで、休憩場所からは見えないだろう。
 街道から外れていることもあって、軍の進路を確認しているだろう斥候もまだ見つけていないかもしれない。
 目を凝らせば、馬車と、蟻よりも小さく人が何人か固まっているのと、それを追いかけるような集団がいるように見える。
 そこへ駆け付けようとしているのか、街道側から駆け登って行く別の集団がいる。

「師匠、なんか追われてるっぽい人がいる」
「なんじゃ、カッシアからの逃亡者か? しかしただの庶民が追われるというのもおかしいのぅ。混乱に便乗して出てきた山賊かいな?」
 師匠の言葉に、私はハッとする。

 ――イベント?
 でもあれはクロンファード砦の後のことのはず。
 そうは思ったけれど、もしこれが「ティロン河川で逃げてきた人達を守っての山賊との戦い」の変則イベントだとしたら?
 私が行動したり、エヴラールが壊滅せずにルアインを退けた影響だったとしたら。
 助けようとしているのかもしれない、別な集団が気になる。

 だから地上でこちらを見守ってくれているカインさんに言った。
「この先に追われてる人がいるの! 助けに行きます!」

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