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私は敵になりません! 作者:奏多
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祝福の日に願うこと 1

 結局、魔術を使って自分を治せるようになるまで、一か月かかった。
 でも茨姫の予想より一か月早い。

「貴方の魔力とか回復力は全部おかしいのよ」と茨姫に言われ「うちの弟子は元々おかしい」と師匠には酷いお言葉をもらった。
 べ、別に普通じゃなくてもいいんですよ。早く治った方がいいんだから。

 その間に、ルアインに与した貴族達は、恭順を示して降伏したそうだ。助命を願う彼らに対し、レジーは彼らから領地を返却させ、牢に入れたそうだ。
 ……自由にさせておいたら、今度はどこの国と繋がりを作って裏切るかわからない人達だ。仕方ない。
 そうして統治者がいなくなった領地は、一度王領地として接取。その上で戦の功労者などに分配することになったようだ。

 そして一か月が経った頃には、イサークやジナさん達は、サレハルドへと戻って行った。本格的に雪が深まらないうちに、国に戻る必要があるからだ。
 王宮に一時滞在していたイサークとは、出発の前日にお別れの挨拶をした。

「まぁ、お前が王妃になるなんて大丈夫なのか不安だが、これがお前の望みだったはずだからな。がんばれよ」

 激励とともに頭を撫でられて、ちょっとこそばゆい気持ちになった。
 トリスフィードでも、結局この人は私がレジーのことを好きだとわかっていて、手を離してくれたのだもの。たぶんお兄さんがジナさんと手を取り合えない姿を見て来たりしたから、そういうのが嫌だったんだろうな。

「うん、ありがとうイサーク。元気で」

 お互いに笑顔で握手した。
 春の結婚式には、さすがにイサークもこちらに来ることはできない。サレハルドの状況だってけっこう大変なことになっているからね。
 この時までファルジアに留まっていたのは、戦後の取り決めについて詰めるためだったし。

「ちょっと小さくなってしまったけど、キアラちゃんには新しいお母さんができたみたいで安心したわん。機会があったら、会いに行くわねん」

 ギルシュさんもそう言って頭を撫でてくれた。
 お母さん代わりをしてもらって、ギルシュさんには本当にお礼の言葉しか出て来ない。でも会いに来るのは難しそう……。これからも傭兵稼業を続けて行くらしいので、ギルシュさんが生活の場を離れるのは戦争か紛争の時になる。
 でも会いたいと思っていると伝えてくれたのは、とても嬉しい。

「本当にありがとうございました。いつか会えるように願ってます」

 だからそう答えた私に、ギルシュさんはうんうんとうなずいてくれた。
 ジナさんは別れ際にぎゅっと抱きしめてくれた。

「ありがとうキアラちゃん。あなたのおかげで私、諦めなくて済みそうだし、このバカ王様のことも助けてもらえたし、どう言っていいのかわからないけれど、何かあったら私だけは絶対にキアラちゃんの味方になるから!」

 サレハルドよりも他国の王妃予定者を優先する宣言に、後ろにいたイサークが苦笑いする。
 ジナさんもかなり有言実行の人だから、あり得る事態だ。イサークに真っ向から反対して、剣を片手に氷狐まで動員して喧嘩しかねない。
 でもジナさんが大事にしたいのは、サレハルドの王子様だ。私を優先してはマズイこともあるだろう。……それもわかった上でのことだと思うのだけど。

「ありがとうございます。ジナさんのその気持ちだけでも私、とても嬉しいです」
「うん。あと、なるべく早く会いに行くから。あと、キアラちゃんにもあの人のこと紹介したいし」

 ジナさんがそう言ってくれるのなら、ジナさんの大切な人にも早々に会うことができるかもしれない。

「ぜひお願いします。私も待ってます」


 お別れの後は、急な結婚式に向けての準備が始まった。
 その頃には、レジーの侍女メイベルさんが避難先のタリナハイアから戻って来てくれていたので、ほとんどの采配を任せることになってしまったけれど。

 メイベルさんは埴輪になった茨姫のことを聞いて驚き、泣き、今までのことをしんみりと二人で話し合った後で、老齢とは思えないほど精力的に動き回った。
 布の手配、針子の手配はもちろん、デザインについてもその道に精通した人を呼び、レジーの衣装と合わせて作製を進めて行った。
 私はそのデザインを見て確認を求められただけだ。おかげでとても楽をさせてもらった。

 ……そして心の底から、茨姫に埴輪姿でも魂をこの世に止めてもらって良かったと思っている。助かった。本気で何をしていいのかわからないんだもの!

 合間には、王都を囲む壁の修復もした。
 壁を修復する姿をじっくりと見た王都の人々や、戦争から避難していて戻って来た人達は、とても感心してくれた。
 雪が降る季節の間は、私も参加して衣装を縫ったり、他の細々としたものの確認をする側ら、大工さんの真似事もして過ごした。
 王宮で修復や改造が必要な所も、私が突貫で魔術で作ってしまえば一瞬だから……。王宮はかなりの部分が石で作られているもの。

 その他にも王妃になるなら必要だと言われて、覚える必要があることもあってけっこう忙しい。
 そうして――春が来た。
完結後(の翌日になると思いますが)活動報告に、作品の裏話アップします。

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