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私は敵になりません! 作者:奏多
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王宮への潜入

 王都への突入経路は出来た。
 アランが全ての兵を橋の向こうへと移動させる。

 敵の貴族連合軍は壁の向こうに避難した。劣勢に立たされたのだから、少しでも隠れられる場所に逃げたくなるのは当然のことだ。
 そうして壁という盾を使いながら、再び魔術師くずれをぶつけてきたため、アラン達も攻めあぐねることになったけれど。

「それでいい。時間がかかる分、こちらに意識がひきつけられるはずだ」

 レジーはそう言い、私に上流からの援軍への攻撃を指示する。
 私は魔獣と戦わせるために作っていた土人形(ゴーレム)を、援軍側に差し向けた。
 こちらは何度か土人形(ゴーレム)と戦ったことがあるルアイン軍だったからか、、土人形(ゴーレム)への対処を優先させたようだ。

 魔術師くずれを作り出して土人形(ゴーレム)を足止めし、魔術師くずれが足を崩した土人形(ゴーレム)に一斉に斬りかかる。
 むしろ援軍の方が土人形(ゴーレム)に慣れていなかったせいで、進軍の足を止めた。でもそれでいい。

 レジーが再び、剣から雷を放った。
 土人形(ゴーレム)もろとも、ルアイン軍に雷が直撃する。
 地響きと悲鳴が起こった。
 高い場所に居ないから見にくいけれど、土人形(ゴーレム)の周辺にいた敵兵はかなりの数が死んだだろう。

 そこが引き際だと思ったに違いない。ルアイン軍はすみやかに王都の壁の向こうへと逃げて行く。

「あとはアランに任せよう」

 そうして私達は、アランが率いるファルジア軍に合流する援軍の後ろを迂回しつつ、王都の北側に広がる森の中へ侵入した。
 既に放っていた索敵から、森の中には敵兵があまり配置されていないことはわかっている。敵側も兵数が限られているからなのか、森の一部を囲むように作られた王都の壁を守っているらしい。

 私達は、レジーの指示に従って森の中を進む。
 馬は途中で索敵の兵に預けて、戻るよう指示し、徒歩で道なき道を歩いた。

 やがてたどり着いたのは、大きな岩が点在する川原だ。
 人の背丈より少し高い程度の、小さな崖になっている周辺には、苔むしたり土や倒木の下になっている岩があった。
 岩には時折直角に割られているものが混じっていて、自然のものではないことがわかる。

「王宮を作る時に、余った石材を放置した場所だよ。こういう場所がいくつか森の中にある。そのほとんどが囮で、ここだけが正解なんだ」

 いくつもある岩の間の一つをレジーが指で示した。
 伸びている蔦を避けると、そこに狭い隙間があった。男性がかろうじて通り抜けられる程度だろう。
 あらかじめ用意していたランプを手に、数人の兵士が先行する。

「中はきちんと石で組まれた通路になっている。湿気で滑ることだけ注意して」

 レジーの言葉にうなずきながら、私は彼に続いて通路に足を踏み入れた。
 横幅は狭いながらも、高さが保たれた通路の中は静かだった。
 敵も攻めて来ない。
 ただ中を進む仲間たちの息遣いと、足音が響く。

 私はランプを持たなかったから、足下が暗いし周囲もよく見えないけれど、前にいるレジーの背中を追いかけ続けた。
 途中、二度ほど分岐点があった。
 そう言う時は止まって、尋ねる密やかな声とレジーの指示が行き来して、再び歩き出す。

 30分も歩いただろうか。
 さすがに狭い場所を進み続けて、少し閉塞感から不安になりかけた頃、道が坂になった。

「階段が始まる。足下に気をつけて」

 レジーが教えてくれたので、つま先でさぐりながら階段を上った。
 そうして出たのは、木の葉が黄色や赤に色づいた木々に囲まれた場所だ。

「王宮の森だよ。壁からは離れている。王宮の建物からは北東の辺りだ。ここから見つからないように王宮内に侵入するためには、もう一つ通路を使う」

 レジーが説明しながら、予め用意していた地図を出して指さす。

「ここから、池を挟んだ場所にある管理小屋から王宮の地下に続く道がある」
「先に、管理小屋周辺にいるだろう兵を倒す必要がありますね」

 地図を覗き込んで言ったカインさんに、茨姫が言う。

「足止めしたり、動けなくするのは得意だけれど、声を上げる前に口を塞げるかしら……」「目標を決めて、順次茨姫に動きを止めてもらうと同時に倒す方向でいきましょう」
「私も何か……」

 協力できることはないかと言いかけたところで、茨姫に止められる。

「キアラと殿下は、力を温存して。後で嫌というほど使うことになるでしょうから」

 なるほど素直に引き下がった私とは違い、レジーはそんな茨姫に尋ねた。

「ということは、かなり魔術を使わなければならない戦いになると……?」
「私が知っている未来では、魔術師くずれなど使わなかった。だからこそ魔獣を操るだけで済んだとも言えるわ。今回は、王宮の中でも魔術師くずれに警戒しなければならないでしょう。それに……」

 一度言いにくそうに、茨姫が言葉を切ってから続けた。

「今まで未来で殿下が死にかける状況だった時、回避しようとしてもさらに過酷な状況になったことがあるでしょう?」

 クレディアス子爵との戦いも、かなり厳しかった。本当に、運の差だったと思う。

「私は何度も望むままに未来を見ることができるわけではないわ。だから私が王妃と戦ったのを魔術で見たのは、辺境伯子息のアランだった。彼は王妃というより魔獣と相打ちになった。彼は魔獣と戦わない場所にいるけれど、代わりに王妃と対峙するあなた方が同じように王妃と戦うことになるし……、魔獣もその通りの能力とは限らない」

 だから用心して、と茨姫は言う。

「王妃がどういう手を使うにしても、魔術が必要になる。場合によっては他の兵士達はその場から避難させて、あなた方だけで戦うことになるかもしれない。だから人で対処できる間は、温存すべきよ。さもなければ、全滅することもあり得るわ」
「そうですか……わかりました」

 茨姫の話に、レジーやカインさん達が納得したようにうなずく。

 まずは王宮への進入路の確保にかかった。
 監視小屋は、森の中を巡回する役目のルアイン兵が数人いた。
 まずは窓から見えない場所に移動した外の兵士を、茨姫が蔓で捕まえて口を塞ぐ。素早く近づいた兵士達がそれを倒した。

 それでも物音で、小屋の中にいた兵士が外を確認しに出てくる、
 茨姫の蔦が勢い良く伸びて小屋の中に入り込み、中にいた人間を引きずり出したところで、兵士達が彼らを倒す。
 倒した兵士は、私が土の中に埋めた。
 証拠を消して、交代などでやってきた兵士にすぐ気づかれないためでもある。

 王宮内への通路は、建物の床にあった。物を避けて、また狭い通路に入っていく。元に戻すのは、茨姫が蔓を使って上手く物を動かしてくれた。
 これでまた少し、時間が稼げるだろう。

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