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私は敵になりません! 作者:奏多
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魔獣との対戦

 魔獣は戦場を無視して、ファルジア軍の方へ降下してくる。

「こっちに来る!?」

 私の言葉に、師匠が慌てたようにカチャカチャと腕を動かした。

「マズイ、逃げろ弟子。あれは強い魔力の出所に引かれているのかもしれん!」

 つまり私だ。

「キアラさん!」

 カインさんが私を抱えて逃がそうとする。私はそれを止めた。

「間に合いません、それよりも迎撃します!」

 宣言して用意していた銅鉱石を使って、地面から新たな土人形を作った。
 私の手を離したカインさんが、指示を出す。

「早くジナを!」

 その間に、背だけ高く伸ばした土人形(ゴーレム)を立ち上がらせた。
 土人形(ゴーレム)は至近まで来た鳥の魔獣に掴みかかる。
 魔獣はそれを避けながら、炎の雨を降らせた。

「避難を、私から離れて!」

 周囲の兵士に叫んだけれど、間に合わない!?
 目の前の兵士達が巻き込まれる姿を想像したけれど、それより先に地中から伸びた蔓が傘のように頭上を覆い、炎をいくらか減殺した。
 茨姫だ。
 探せば、彼女はもう少し後方で、自分を守る蔦の天蓋を作った上で、蔓を操っていた。

「矢を! 燃やされるとしても撹乱になる!」

 アランの指示で、少し離れた位置から矢が放たれた。
 魔獣は旋回してそれを避けたけれど、矢を真上や味方がいる方向へ向かって射るわけにもいかない。
 それを察したのか、魔獣は矢が届かない高みに一度上ってから、私と土人形(ゴーレム)の方へ急降下してきた。

 慌てて自分とカインさんを覆う土の屋根を作る。
 吹きつける炎が熱い。
 思わず悲鳴を上げた私を、カインさんが庇うように抱きこんでくれた。

「キアラさんは、そこで土人形(ゴーレム)を操って下さい」

 炎が止んだとたんに私から離れたカインさんは、槍を構えて魔獣に狙いをつける。魔獣は炎を吐いた後で再び矢から逃れるように上昇していた。
 でもすぐにまたやってくる。それを狙っているのだろうけど。
 いくらなんでも無茶だ。槍を投げる前に炎の攻撃を受けるかもしれない。

 止めようとした私だったけれど、ふいにカインさんの槍が伸びる。白い氷で。
 降下してきた魔獣が炎を吐く。土の屋根の下に避難した私にも、カインさんの背中から吹きつける様にして炎を払う吹雪が見えた。

 そして地上に近づいた魔獣の翼に、カインさんの槍が刺さる。
 甲高い、カラスに似た叫び声が響き渡った。
 そこへ、さらに吹雪を叩きつける氷狐達の姿が見える。
 上昇した魔獣は、それでも土人形(ゴーレム)の攻撃を避けて飛んでいる。
 今度はこちらを警戒して、上空を旋回し始めた。

「キアラ!」

 そこに、レジーがやってきた。

「レジー、ここは危ないわ!」

 いつまた炎の雨が降るかわからないのにと思ったけれど、レジーは「氷狐達がいるから大丈夫だ」と言って私を土の屋根の下から連れ出す。

「予定通り、あの魔獣を追い返そう。できるかい?」
「大丈夫」

 レジーが剣を構える。切っ先の向こうにいるのは、魔獣だ。
 私は彼の肩に手を置く。
 空を魔獣が飛ぶのなら、私達が持つ最強の飛び道具を使う。そう予め決めていたのだ。

「……っ」

 レジーが剣の先から雷を放つ。
 魔獣の方も、こちらの攻撃を予期していなかったのだろう。直撃は免れたみたいだけど、尾が一部焼き切れて、血が飛び散る。
 その血も炎になって地上に落ちた。

 さすがにふらついた魔獣は、土人形(ゴーレム)の手で払われる。
 一瞬落ちかけたものの再び浮上し、魔獣は腹いせに橋の向こうの戦場に炎をまき散らしながら、王都の壁の向こうへと飛び去った。

「殿下」

 レジーの側に、フェリックスさんが駆け付けた。

「川を下って来た援軍も、土人形(ゴーレム)の撹乱の手助けもあって、ルアイン軍を押しているようです。このまま、あちらの援護に?」
「そうだね、そろそろ川を渡ろう。グロウル達を呼んでくれ。次の作戦に移ろう」

 フェリックさんは、魔獣が去ったことでこちらに集まって来た兵士達を使って、あちこちに連絡を送る。
 すぐにレジーの騎士十数人と、エヴラールの兵から選ばれた精鋭たちが十人集まった。そして茨姫も。
 動き出そうとしたところで、ジナさんに呼び止められた。

「キアラちゃん。やっぱり一匹だけでも連れて行って」

 そう言ってジナさんが背中を叩いたのは、ルナールだ。

「リーラじゃ大きくて目立つし、たぶん作戦の邪魔になるけれど、ルナールなら平気よ」
「でも、無事に戻って来られるか……」

 最悪、私達が倒されてしまったら、ルナールは王宮に一匹で取り残されてしまう。
 助けが来るかわからない場所で、大勢の兵士に狩られるような目にあわせるのは……と思ったけれど、ジナさんが「大丈夫」だと言う。

「氷狐なりの、万が一の身の守り方だってあるわ。それに相手が火属性なら、氷狐がいた方がいいと思うの」
「それにねん。こっちだって急いで王都へ突入するから、あまり待たせずに追いつくわん」

 一緒にいたギルシュさんが、ちょっとしなを作ってそう言った。
 氷狐は魔術師の不在を誤魔化すためにも、王都攻めの軍に残して行くことになっている。ギルシュさんとジナさんと一緒に。
 アランとジナさん達は、このまま王都を真正面から攻めるのだ。
 敵兵の意識をそちらに向けている間に、私達が王妃を討つ計画になっている。

「わかりました。ルナールをお借りします」

 受け入れると、ジナさんとギルシュさんはほっとしたように微笑んだ。

「それじゃ、先に王都の壁を壊してしまいます!」

 私はまだ敵軍の中で動いていた土人形(ゴーレム)を、一斉に王都の壁に向けて走らせた。
 その意図を察したのか、敵兵も、土人形(ゴーレム)を止めようと動く。

 やや小さめに設定したせいなのか、一体だけ足を崩されて倒れたけれど、他の二体が王都の壁に取りつき、破壊しはじめる。
 敵軍は焦って、土人形(ゴーレム)に集中攻撃をする。

 それでも二体が倒れるよりも先に、壁に大きな穴ができていた。

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