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私は敵になりません! 作者:奏多
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茨姫と記憶 2

 確かにおかしいな、とは思っていた。
 茨を操り、未来のことがわかるという、二つの魔術だけならまだわかる。
 でも一瞬で姿を消したのは? 未来のことがわかるにしても、私のごく個人的なことまで知っているのは?

「茨姫は……複数の魔法が使えるのだと思っていたの」
「例えばどんな?」

 何を考えていたのか教えてくれと言われて、私はいくつか候補を上げる。

「茨を操る魔術と瞬間移動できる魔術。あと未来のことを知る魔術……。でも、それでも説明できないから、もしかすると相手の過去に起こるかもしれなかったことを、知る魔術とか?」

 私の言葉を聞いた茨姫は、くすくすと笑った。

「そうね。普通に考えるとそうなると思うわ」

 そして茨姫は、魔術を使って周囲に茨を張り巡らせた。ざわつく音に外を見ると、天幕の周囲に茨が茂っていたので。
 外にいたカインさんが、ぎょっとした表情をしていたけれど、

「ごめんなさいね。できれば他の人には、まだ知られたくないのよ」

 茨姫にそう言われて、私はカインさんに謝った。

「魔術師の内緒の話があるみたいなんです。申し訳ないんですけれど、他のひとが近寄らないようにしてもらってもいいですか?」
「そういうことでしたら……」

 納得してくれたカインさんにお礼を言って、私はまた天幕の中に引っ込む。
 そうしてまた茨姫の側に並んで座ると、茨姫は前よりも小さな声で語った。

「あなたには話しておくべきだから言うわ、キアラ。……私が貴方の運命を曲げることになったのは、貴方と出会ったからだったのよ」
「え、いつ……?」

 いつの間に出会っていたんだろう。私が小さい時?

「貴方に初めて触れたのは、アランに貴方が刺された直後だった」
「……!?」
「私は、大怪我をした騎士から、貴方が絶望していることを聞き知っていた。だから、延命させたいと思ったけれど、致命傷で救えそうになかった。それなら、王妃達のことを記憶から探らせてもらおうと思って、貴方に魔術を使ったの」
「え、あの……それ……」

 私は目を丸くする。
 だってそれは。アランに殺されるのって『もし私が結婚から逃げなかった』場合のキアラの物語だ。ゲームで知ったそのままの。
 そして白昼夢で見た、アランに殺される状況が脳裏に蘇った。
 茨姫は、戸惑う私に構わず話し続ける。

「そして私は、貴方の中に不可思議な記憶が眠っていることを知った。ここではない世界。不可思議な灰色の道や建物が多い街並みと、様々な風景が映し出される板がある世界のことを」

 それは、前世の記憶だ。
 コンクリートの道や建物。テレビ。けどそんな記憶を覗ける魔術って何!?

「同時に、貴方の奥底には、それまでの戦いとほぼ酷似した内容の物語が記憶されていた。こうしたい。こうだったらいいのにという想いと一緒に。……その時には、まだ貴方をどうこうしようと思わなかった。不可思議なことを知っている人もいるのだと。そう思ったわ。でも結果的に王妃とアランが共倒れになった後、何度繰り返してもレジナルドを助けられなかった私は、貴方という味方を作ることにした。貴方なら……レジナルドを救ってくれると思ったから」

 私は呆然とするしかない。
 茨姫が言っている言葉が、わからないわけじゃない。でもそれを実行するには……たぶん、私が思っていたのと違う魔術が必要だとわかった。
 相手の記憶を読み取れる、何かの魔術だ。
 でもその発端が、レジー? どうして?

「茨姫、貴方は……レジーと知り合いだったの?」

 王族の娘であるエフィアなら、確かにレジーと知り合うことは可能だ。でもレジーはエフィアの存在も知らないようだったのに。
 茨姫は初めて、泣き出しそうな表情を見せた。

「私はエフィアではないわ……。クレディアス子爵の実験台にさせられて魔術師になった、レジナルドの母親よ」
「…………!」

 息が止まるかと思った。
 レジーのお母さん!? え、でも外見は銀の髪って、レジーのお母さんは王族の人じゃなかったはずだし、え!?

「レジーの……おかあさんて、リネーゼ……さん? 髪の色も茶色系だって……聞いて……」

 でも先代の王妃様、なの?

「あの子は、貴方に私のことも話しているのね。……忘れないでいてくれたのね」

 茨姫はぐっと唇を噛んだ。

「私の魔術は、憑依よ。生き物を乗っ取ってある程度操作できる」
「憑依……それで、茨を操って?」
「そういうことよ。茨は、私がこの植物だと憑依と言う形で最も操りやすい植物だっただけ。だけど私は死ぬ寸前だった。魔術師として生きて行くには、体が魔力に耐えられなかったから。その時復讐と引き換えに、憑依して自分を乗っ取っていいと言ったのが、エフィアだった」

 それで、エフィアの姿形をしているのか。わかったけれども、とてつもない事情に私は呆然としてしまう。

「憑依したエフィアの魔術を私は使うことができたわ。エフィアは過去にさかのぼれた。自由にいつの時間でも、ということではなかったけれど」
「あ……」

 私はようやくわかった。
 茨姫がなぜ全てを知っているのか。どうしてあり得なかった過去のことを知っているのか。

「茨姫、貴方は……運命を変えるために、過去に遡ったのね」

 茨姫はようやくわかったのね、というように微笑んだ。
 順番的にはこうだ。

 茨姫=リネーゼは死にかけたところで、エフィアの体に憑依した。この時エフィアが使えた魔術と、元々の魔術の両方が使えるようになる。
 その後、レジーが亡くなったと聞いて驚くリネーゼ。過去に戻って救おうとするも、レジーが死ぬのをどうしても避けられない。たぶん、茨姫もエフィアもクレディアス子爵を師として魔術師になったせいで、どうしても手を出せない場面があったのだと思う。

 結果、茨姫はアランに手を貸して王妃達を倒す方を選んだ。
 でも王妃とアランが共倒れってどういうこと?
 茨姫はそれを覆すために、私を使うことにした……ということよね。

「戦争の展開についての記憶を持っている私なら、どうにかできるから、それで私に関わったの? でもどうやって?」

 茨姫は、いつ私に接触したんだろう。

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