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私は敵になりません! 作者:奏多
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合流と目撃情報について

 合流地点は、王領地のとある街だ。
 高い壁に囲まれている場所でもないので、一万以上の兵が町の周辺に野営地を広げている状態になっている。
 私やレジー達は見張りの兵から連絡を先に走らせて、ゆっくりと街の中へと移動した。街の入り口に到着すると、アランやイサーク達が待ち構えていた。

「収穫はあったのか?」

 アランの問いに、レジーがうなずく。

「それなりに、だね。先にそっちの状況を知りたいな」
「じゃ、まず町長の館に場所を確保してあるからそっちに移動しよう。お前たちの部屋も空けてもらってる」

 そんな会話が交わされる中、私はカインさんに馬から降ろしてもらい、地上に足をつけた。
 するとイサークが不思議そうに言った。

「お前、いつでもその騎士の馬に乗せられてんのな。自分で乗れないのか?」
「じょ、乗馬くらいできるもの。だけど万が一の時に、こう、私一人で馬に乗ってるといろいろ行き届かないから」

 説明していると、後ろからカインさんが私に言った。

「馬を走らせながら魔術に集中なさるのは厳しいようなので、私がお手伝いしております」

 一応相手が王様なのでカインさんは敬語を使っているけれど、そこはかとなく雰囲気で『話があるのなら私を通してください』といった雰囲気を漂わせている。さすが殺し合いをした相手だけに、カインさんはイサークを警戒しているようだ。
 しかしイサークの方はあっけらかんとしていた。

「じゃあ、一緒に行動するなら俺が乗せても構わないわけだよな? おい、キアラ今度は俺が乗せてやるよ」
「ありがたいけどそれはちょっと……。王様でしょう? 私の言う通りに動いてもらえるわけがないもの」

 ずばりと不安を口にすると、イサークが「それぐらい俺にも可能だぞ」と言い出す。
 いや、アナタ王様ですよね? さすがに冗談だと思うけど、どう言ったら引いてくれるのか。困った私を助けてくれたのは、ミハイル君だ。

「およしになってくださいよ陛下。こういうのは信頼関係が必要なのですから。そちらの騎士も魔術について知識を得た上で行動をしているのでしょうし……」
「ふーん。そんなに信頼してるのか?」

 イサークにずばっと聞かれて、私はうなずいた。

「お兄さんみたいに思っている人ですから」

 そう答えたら、なぜか

「年下の妹……よし。キアラ、俺も兄になってやろう。それなら馬に乗るんだろう? ゆくゆくはお兄ちゃんと一緒にサレハルドで暮らさないか? 雪が沢山降るから、雪遊びができて楽しいぞ?」

 笑顔でそう切り出したイサークに、一歩後ろにいたミハイル君が呆れた顔をし、アランがげっそりした表情になり――レジーとカインさんの方から冷気が漂ってきた。
 さすがにこれはまずい、と私は思った。
 たぶん冗談のつもりだろう。私のことを気に入ってくれているとは思うけど、今そんな誘い方をしたって、たとえ私がレジーを選んでいなくてもついていかないってわかるだろうから。

 しかしこのままでは、まずレジーが王領地へ到着した時のようなことをしかねない。
 ……あれはまずい。意識して、付き合い始めたところにあんなことをされたら、私がどんな慌て方をするかわからないという意味で。
 すると師匠が突然「キシシシシ」と笑い声を上げた。

「サレハルドの小僧よ。キアラの兄だと言うのなら、もちろんわしのことをお父様と呼べるんじゃろうなぁ? イッヒヒヒ」
「は!?」

 イサークが何の話だ? みたいな顔をする。
 助け舟だと察した私は「本当にそうですよね」と同意しておいた。それを受けて師匠が、楽しそうに嘘八百を並べた。

「そこの騎士は兄を自任しておるから、わしのことをお父様と呼ぶしのぅ。王子もキアラについては必ずお伺いをたてるものじゃ。お父様、お嬢様をお誘いしてもよろしいですか、とな。もちろん」

 イサークは「この人形にか?」と言いたげだが、レジーが悪乗りしてきた。

「お父様、後ほどお嬢様を食事にお誘いしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「へっへっへ。よかろう」

 師匠が王子に下手に出られて喜んでいる中、私はむずむずしていた。
 レジーが、普通の家のお嬢さんを外出に誘う許しを得ようなんて行動を、する場面がやってくるとは思ってもいなかったからだ。なにせ私、天涯孤独の身なので。
 その間にカインさんまで同調した。

「ホレスお父様。兄としてはまだ妹を異性と二人だけの食事などに行かせたくないのですが」
「ひっひっひ。娘はいつか嫁ぐものだからのぉ。食事ぐらいは、そのための予行演習として許してやるがいい。あまりに時間が長ければ迎えに行けばいいじゃろ」
「お前ら本気かよ……」

 二人の発言に唖然とするイサークに、カインさんがしれっと答えた。

「当然ですよ? キアラはずっと父親として、ホレスさんを扱ってきたのですからね」
「あ、はい、そうですね」

 私が師匠のことをとても大事にしていたのは知っていても、完全に父扱いしているとは思っていなかったのだろう。

「土偶が父……」

 でも最終的に、なんか可哀想な人を見るような目を向けられたのだけは、納得いかなかったけれど。


 その後すぐに町長の館に移動し、アラン達の状況について説明を受けた。
 そこそこの規模の街だったので、館といってもそれほど大きな建物ではない。将軍達の半分は宿等に移動し、ここにはアランとエメラインさんと元デルフィオン男爵ヘンリーさん、そしてイサークと彼らの騎士達が滞在しているようだ。

 集まる場所も、館の居室の一つを使わせてもらう。
 そこで聞いたのが、ベアトリス夫人率いるファルジアの一軍が、キルレアを攻略。王領地へ入ったところだということ。
 そして先に王領地からパトリシエール伯爵領へ入り込んでいたファルジア側の間者の連絡により、パトリシエール伯爵の軍が、シェスティナへ移動したというものだった。

「伯爵は、自分の領地を捨てた、ということかな?」

 レジーの問いに、アランが渋い表情をする。
 自分の領地を解放してまで、王都の手前に兵を集めて守ろうとしている、ということらしいのだけど。確かになぜそこまで……と私でも思う。

「パトリシエールの軍とシェスティナにいるルアインの兵を合わせたら……2万くらいか? 王子達もあちこちで兵力を削って、あっちもこれいじょう集めにくくなってるだろ」

 そもそものルアインの兵力供給ルートは、トリスフィードを攻略してサレハルドを降伏させたことで、使えなくなっている。これ以上集められないだろうということだった。

「だからシェスティナで決戦をするつもりなのかな? ただこちらも、もう一方の軍と合流する予定だから、余裕で二万は越えるけれど……」

 レジーは腑に落ちなさそうな表情をしている。

「ルアインの軍は、シェスティナ手前のナザントの砦にもいる。王領地には湖側の砦と、キルレア近くにしか配置していなかったようだ。湖の砦にいたルアインの騎士に吐かせた通りのようだ。キルレア付近のルアイン軍は、おそらくもう一方の軍が倒すだろう」

 続けてのアランの推測に、レジーも「キルレア側はあちらに任せよう」とうなずいた。

「あともう一つ、うちの人間をルアインの兵に偽装させて送り出したんだが、そこから報告が来た」

 イサークがそこで教えてくれたのは、気になっていた人の行方だった。

「ルアインの女魔術師。その姿をナザント砦近くで見かけているそうだ。そのままたぶん、シェスティナへ向かったんじゃないか?」

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