挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
私は敵になりません! 作者:奏多
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

225/277

かつて茨姫が求めた物

 到着したのは、イサークが言っていた通りの館だった。

 館そのものは三階建てで、離宮というだけあってそこそこの規模がある。部屋は五十室はありそうだ。
 そんなコの字型の館の周りには、砦や魔獣を警戒する都市のように堅固な壁がめぐらされている。見張り塔まであるのだから、元は砦があった場所に館を建てたんだろう。
 レジーがその考えにうなずいて、教えてくれた。

「たぶんここは、元はパトリシエール伯爵家が持っていた砦だったんだろう」

 パトリシエール伯爵家は、元々現在の領地と、その北にある王領地までを治めていたらしい。けれどルアイン王国と繋がりが深く、昔の戦で裏切りに近い行為があったということで、領地を半分取り上げられたのだ。
 なるほど。そんな砦の一つに、壁を利用して離宮を作ったということなんだろう。

 一応塔から順番に中を調べた。
 クレディアス子爵達は塔も使っていたようだ。

「監視をしてたのに、周辺に魔獣が出るわけでもないし、何を隠していたんだろ……」
「考えられるのは、実験じゃろうな」

 師匠が私のつぶやきに応じてくれた。

「実験?」
「人に見せられん実験で、クレディアス子爵は魔術師じゃ。想像できんか? ウッヒッヒッヒ」
「…………」

 言われて思い当たる。うん、魔術師くずれの実験とかしてたら、確かに周辺に人が近寄らないか見張りたくなるだろう。

「でも普通の館にしか見えなかったって報告を受けたって、イサークが言っていたけど」
「サレハルドの騎士に行かせたのだろうし、魔術師の実験場だと思って調査をしたわけじゃないのかもしれない。そうすると、隠しきれなかったものを、見つけられるかもしれないね」

 側にいたレジーの言葉に、あ、と思う。
 そうだ、ここには茨姫が探すように言った品物があるかもしれない。
 茨姫がここにどうかかわるのかわからないけれど、ゲームで探索した場所に、もしかすると魔術師くずれの実験について隠されている可能性がある。

「そうしたら、館の中を探そう」
「主にどこがいい?」

 レジーが尋ねてきた。まずは私の知識を参考に探索するつもりなんだろう。

「館の、二階の部屋なんだけど。確か右翼側だったような」
「部屋の中に、隠し扉でも?」

 私は首を横に振った。

「部屋にある壁に、埋まってるの」
「壁?」

 レジーが困惑した表情になるのも無理はない。だけどそういう話だったのだ。

「部屋の特徴は特に無くて、どこもある程度焼け焦げたり、ちょっと壊れたりしていて」

 館の中に入ってみると、私がゲームで見たのと同じような状況になっていた。
 玄関ホールから、あちこち穴が開いたりしていた。天井から落ちたシャンデリアの硝子や蝋燭が散乱している。

「引き払う時に、ひと騒動あったような感じですね」

 一緒に来ていたフェリックスさんの言葉に、レジーがうなずく。

「派手さから考えると、やっぱり魔術師くずれかな。煉瓦の壁をへこませるなんてそうそうできないからね」
「念のため警戒はしましょう。サレハルドの配下は放置しても、殿下方に対しては何かを画策しないとも限りませんから」

 グロウルさんが兵達をなるべく固めながら二階へ向かう。
 部屋の様子はゲームでも詳しくは描かれていなかったけれど、文字で簡単に説明されていたように、玄関ホールと同じように壊れたりしていた。
 その部屋を分散して探って行くけれど、なかなか見つからない。
 一度休憩を取り、再び探し直す。
 それで見つからなかったら、他の階の部屋を探すことになっていたのだけど。

「隅っこ、隅っこね……」

 レジー達にも伝えた情報をつぶやきながら探す。
 とはいえ、四つ角などを探してもなかなか見つからない。
 首を傾げていた私は、ふと足下に視線を落としたところで、大きな木の寝台近くの壁に目を引かれた。

 部屋の壁には漆喰が塗られているけれど、破壊の痕のせいでどこもかしこも汚れや削れがあって塗り直された場所に判別がつかなかったけれど、壊れた寝台が逆に壁の代わりをしたのか、その周辺は綺麗だ。
 むしろ、壊れてすぐ露出するような場所には、物を隠さないんじゃないだろうか。

「漆喰なら、土の魔術で……」

 その周辺の漆喰を砂にしてはがしてしまう。
 すると白く積もった砂の上に、ぽろりと装飾品が落ちてきた。
 壁に塗りこめられるようにして隠されていたものだ。

「まさか、これ?」
「そうじゃろうな」

 師匠が同意してくれる。声を聞いてカインさんも近づいてきた。

「見つけたのですか?」
「たぶんこれです」

 そう言って見せたのは、二つの物だ。
 古ぼけた赤いリボンが巻かれた、紋章の掘られたカメオ。そして宝石もついていない黒ずんだ銀の指輪。
 たったそれだけだけど、確かにゲームでアランはカメオを手に入れて、茨姫に渡していた。
 その時は、茨姫の思い出の品なんだろうと思ったけれど。

「この紋章……」

 ぼんやりしていた私でも、この紋章だけは覚えている。カインさんは私よりも詳しかっただろう。すぐにわかったようだ。

「パトリシエール伯爵家のものですね。こちらは……」

 指輪の方を手に取って確認したカインさんは、やや眉をひそめてから言った。

「とにかく調べるのは終わりと見ていいでしょう。殿下達にこれを見せましょう」


 一緒にいた兵士に連絡に走ってもらい、私とカインさんは集合場所にしていた、玄関ホールへ降りる。
 最初に降りてきたのは、レジーとは別行動で捜索をしていたグロウルさんだ。
 とても渋い表情で薄い冊子を二つ手にしていた。何か見つけたのだろうけど、あまり良くないことが書かれているもののようだ。
 そしてレジーがやってきて、主要な人間だけで比較的被害の少ない部屋の一つだった、一階の正餐室に集まった。

「では、見つかったものについて報告してもらおう。まずはキアラ」

 私は見つけた状況を話して、リボンが巻かれたカメオと指輪をカインさんからレジーに渡してもらった。

「パトリシエール伯爵家の紋章か。どれくらい前のものかはわからないけど、きっと伯爵の親族も犠牲にしたんだろうね……」

 やっぱりそう思うよね。紋章入りの装飾品を持っているのなんて、伯爵家の人間だとしか思えない。
 そうすると、パトリシエール伯爵の娘だろうか。それとももっと前に生きていた人? どちらにせよクレディアス子爵と交流し始めたのは、だいぶん前からのことだったようだ。
 こちらに関しては、その場にいたレジーや騎士達、カインさんも予想済みだったのだろう。それほど驚きはしなかった。

 けれどもう一つの指輪をじっと見ていたレジーが、さっと表情を変えた。

「これは……」

cont_access.php?citi_cont_id=214034477&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ