6:Part6 悠介は生きていた!!
健太と厚子が殺人鬼にミンチにされていた頃、悠介はひとり廃墟をさ迷っていた。
数十分前まで一緒にいた絵美と行人とは今や完全にはぐれてしまい、今も自分が何処にいるか判らない状況が続いていた。
そうこうしているうちに、彼は地下に潜る階段を見つけた。窓がないため周辺は薄暗く、光は切れかけた蛍光灯が瞬き照らすのみ。
深夜の病院さながらの風景を醸していた。彼は絵美達と合流するために地獄へと続いているこの階段を降りることを決意した。
ここに来るまで1階と2階はくまなく探したつもりだったし、それ故の判断だった。
しかし、彼は重要な事を忘れていた。
それは声を出して4人を呼ぶことだった。
そうすれば、この広い廃墟を歩き回ることで無駄に体力を消費せずに仲間達をみつけられただろう。
スポーツが得意な彼であるが、脳筋故に彼はそこまで頭がまわらなかった。
先程、無駄な体力を消費するとは言ったものの、体育会系の彼はほとんど疲れを感じなかった。
埃っぽい空気にまみれつつも彼は階段を降りる。
長い年月の影響だろうか、既に光沢を失ったステンレスの手すりに手をかける。
冷たさと共に埃と錆がザラザラとした感触を手のひらの皮膚につたえた
。
カンカンと靴音が冷たい階段に響き、靴が階段に擦れわずかに埃が舞い上がる。
しばらく降りていると、紙のように薄くモーターのような音が彼の鼓膜を刺激し、それと同時に足が止まる。
彼は地下1階に到着していた。
すると今までにここで聞いた音といえば木々の擦れる音、扉の軋み、靴の反響などの無駆動音だったが、これは今までと違い、機械の動く人工音だった。
ひょっとすると健太達が何か動かしているんだろうか、そう彼は一人ごこち、音の鳴る方に向かった。
「ここにもいないな……」行人は呟く。
ここは1階の三方向に伸びる廊下の右端の部屋。
ここの1階は主に無数の小部屋で占められており、他はロッカー室や大型のトイレルーム、鍵が掛かっている妙な部屋があった。
小部屋は入り口から見て、正面に白いシーツと枕と敷き布団、骨組みだけで構成された簡易ベッドが右壁に頭を向けてと壁にぴったりと付けられており、右壁中央にはステンレスの机がある。
天井には蛍光灯が2本。
真上から見ると正方形の形をしており、窓はない。
どれも同じ造りになっていた。
三人を追って絵美と共に廃墟に入ったのはいいものの、すぐに見失ってしまった。
それから、絵美の提案で2つ手にわかれて探し始めたがいっこうに見付けられないでいた。
悠介が腕時計を見ると探しはじめてから既に1時間が経過していた。大声で呼んでもまるで応答は無い。
携帯電話も繋がらず、足も疲れてきた。
このままではどうしようも無いので、ひとまずエントランスホールに行くことにした。
エントランスホールは何かあった時に集まることにしていたからだ。
エントランスホールに向かって足を早める。数歩踏み出した所で凄まじい音がした。
粘りつく金属音のようなそれはあっという間に悠介の鼓膜に到達し、不快感をもたらすとともに一種の警告を脳髄に与えた。
勇敢な彼はすぐさま音の聞こえたほうに足を動かした。
それはまさに愚かにも自ら炎に飛び込む虫けらそのものだった。
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