ペットボトルの水を飲むと、それがどこから流れてきたのかが気になる。
ボクはそういう人だ。
水を一口飲んで、想像する。
まず海が蒸発して雨が降る。それはどこかの森の木に落ちる。
葉が受け止め、枝に染みこませ、幹を伝い、根に吸収される。
それは木が飲んでいる水だな。
とボクは気づく。そしてもう一口水を含む。
違う違う。ボクが飲んでいるサントリーの水だ。ボクはもっと想像するべきだ。
ボクはボクの黒い海に落ちる。それが集中想像の合図。ボクはやがて海の一部となる。言い換えれば、ボクの体が海に溶けて揺れる。
海がボクであり、ボクは海だ。
それは全体ということでもあるし、一部ということでもあるのだ。
例えば空気だ。
まぁそんなことは良い。空気の想像はまた今度にしよう。
想像。
始めは同じく海が蒸発し、雨になり、山に落ちるかな。
岩、石、砂、泥、塵が濾して、地下に溜まるのだ。それをサントリーの社員がぐんぐんくみ上げて(もちろん彼らはスイッチを押すだけだ。後は機械がやってくれるはずだ)、トレーラーに乗せ、運送業者の人が工場まで持っていく。それが百トン単位のタンクに入れられ、何十万本というペットボトルをコンベアーが運び運び運び運び、機械が充填し充填し充填し充填し、包装紙がまかれまかれまかれまかれ、キャップが閉められられられられていくのだ。
途方もない。それを毎日見ていたい。多分面白いだろうと思う。
それは置いてだ。
できた水は段ボールに詰められる。それを今度はトラックの運ちゃん(おそらく極端に労働条件が悪い人達で、睡眠時間は三日で三時間『方法は、PAで仮眠を取る』。それ以外はずっと高速道路を走っている。時たま運転を誤って死にそうになる)が運び、卸売業の人が買う。それを全国のスーパーが注文し、発送(この時にも労働条件の悪い人が出てくるのだ)。
水が届いたら、パートの人たちが(時給700くらいだ)朝起きてご飯を食べ歯を磨いて家を出て通勤し、朝礼を済ませてから棚に陳列し、値札を貼り、ポップを書き、客が来るのを待つのだ。
ボクは買い物が嫌いだ。ただどうしても水が飲みたくなるので、いつもサントリーのものを買いに来る。
並んでいる2Lペットを一つ手に持ち、そのままレジまで持っていき、二つ折りの黒いマンシングの財布から120円を出し、受け取り、テーブルに持って行って袋に入れる(この間レジ打ちの人はバーコードを読み取って、ボクから120円を受け取り、足下からビニール袋を出してボクに渡した。そのあとも、知らない人の買い物の手助けをしている)。
ボクはそれを家に持って帰り、今飲んでいるというわけだ。
「……ばっかじゃないの?」
美人の妹がボクに言う。本当に美人で、ボクにはもったいないくらいだ。
キスもセックスもしている。ただボクのこういうところは嫌いみたいだ。
「仕方がないだろう。ボクはそういう人なんだから」とボク。
ボクはそういう人である。妹がなんと言おうと、ボクはそういう人だった。
終わり。 |