Cのエピローグ
「うわぁぁああああ!」
「な、なんだこいつら! うわぁ!」
無事新兵器が起動し、破壊神の脅威を退けて安堵した隊員たちがシェルターから出て、そこで見たもの。
そこに居たのは、新たな脅威の種。
「くそっ、こいつらどこから・・・」
ダダダダダン! ドゴォン! ガキィン!
銃声が響く。魔弾が放たれる。剣が振りかぶられる。破壊神の脅威は去ったと言うのに、何故戦わなければならないのか。それは何のために放たれるのか。
ギャオオオオオオオオオオン! ウガァアアアアアアアアアア!
その答えが、轟いた。
障壁内に木霊するのは無数の獣の咆哮。
竜、幻獣、亜人、合成獣、精霊。人間界に少数しか存在しないはずの魔物たちが、突如開いた異世界に通ずるゲートより、障壁内に溢れ出していた・・・!
C
『本部! 障壁内にて正体不明の魔物が氾濫している模様! 出どころも不明、ただいま隊員たちが応戦していますが、敵は強力です! 形勢は不利! 既に撤退命令を出しました!』
対策室本部。新兵器の起動成功の知らせを聞いてそこにいる全員が心を休めていたその時、壁に取り付けられたモニターから、軍人風の男が報告した。その表情はひきつっており、額には汗を浮かべている。
「な、どういうことだ?」
「魔物? 新兵器の起動は成功したんじゃないのか」
その言葉に会議室の要人たちがまたザワザワ騒ぎ始める中、本部の代表としてバスター総帥が答える。
「分かった、賢明な判断だ。障壁の外で待機している者も障壁ゲートの守備のために中に入れろ。それとカメラも持っていけ。内部カメラが既に壊れている」
『・・・了解!』
距離による声の遅れで、総帥の指示から数秒後に軍人は敬礼し、モニターのウインドウが閉じられた。
そして少しした後、・・・会議室の中の要人たちは、総帥の指示によって持って行かせたカメラから会議室のモニターに送られてくる映像を見て、さらに騒然となった。
「な・・・なんだ、あれは!?」
「竜!? 幻獣!?」
「な、蝙蝠竜だと!? しかもあんな数・・・龍界にしか生息していないはずだろ・・・!」
モニターには、必死に銃や魔術で応戦する隊員たちと、それに対する竜や幻獣の姿が映されていた。しかもその竜や幻獣はこの世界に生息していない物ばかり。人間界に存在する妖魔や吸血鬼と言った類よりも強力な種ばかり。
ゴアァアアアアアアアアアアア!
そして、人間と同じ大きさぐらいの蝙蝠の羽根を付けた蛇のような竜―――蝙蝠竜の群れの中に一匹、身体の大きい竜―――飛竜が混ざり、空を飛びながら咆哮した。
そして、その咆哮を受けてに怯んだ一人の隊員が、蝙蝠竜にたかられ、あっという間に捕食される。そう、無力な人間は少し油断しただけで、彼らの前で立つことを許されなくなる。そして飛竜は上空より火弾を放ち・・・と、そこでカメラの映像が途切れた。おそらくケーブルか何かが切れたのだろう。・・・しかし、これまでの情報でも中の状況が十分把握できた。
はっきり言って、中の状況は異常だ。かつて人間界に氾濫したことも無い量の魔物たちが、障壁内にあふれかえっている。
しかし、そんな魔物たちが一体どこから現れたと言うのか。・・・そんな疑問が会議室の要人たち全ての頭に浮かぶ中、
「くくく・・・・はっははっは!」
・・・こらえきれなくなったように、総帥が笑い始めた。それは壊れた笑いなんかではなく、極めて自分の思い通りになった喜びや嬉しさによる笑い。
そして、それを見た要人たちは一斉に顔から血の気を引かせ・・・恐る恐る総帥に問う。
「ま、まさか・・・総帥、貴様・・・」
「あーはっはは! あぁ、そうだよ。俺の企んだ通りだ。新兵器を五発、狭い空間で放てば、その強力な冷たい光によって、空間が裂け異世界にへと通じるゲートが出来る! 実に思い通りだ!!」
総帥はバンッ、と立ち上がり、高々と笑う。本当に嬉しそうに、念願がかなったように。
そしてその答えに唖然としていた要人たちも、次第に我を取り戻し。総帥を問い詰める。
「分かっててやったって言うのか・・・。貴様、信者だったのか!」
「まさかバスター総帥が裏切り者だったとは・・・守衛! 守衛よ!!」
と、一人が叫ぶが。そもそもここの本部を守衛しているのは、バスターの隊員だけ。一大国家並みの軍事力を持つバスターの国家元首たる総帥に逆らうはずがない。
そして総帥は、何とも言えない奇妙な笑みを浮かべて・・・侮蔑するように要人たちに向けて行った。
「ハッ、信者? 裏切り者? ・・・馬鹿ばっかだな。やはりこの世は馬鹿ばかりだ・・・」
「なんだと! 貴様・・・」
「おしゃべりはここまでだ。頭の固い老人どもには・・・そうそうに退場してもらうとしよう」
「なっ・・・!」
総帥はその席から跳躍するとともに、懐からアーミーナイフを取り出す。そして、立ち上がって逃げようとする要人の鈍い動きに容易に追いつき、その喉笛に向かってナイフを突き出し、払う。
さらに横で呆然としている要人の首元で払い、さらにその横の要人に首を突き、興奮して要人が殴りかかってくれば瞬時に背後にへと周り、首元で払った。
・・・そうして数秒後、会議室に存在しているのは総帥と、御老体と呼ばれた要人だけだった。御老体はこんな事態をあらかじめ知らされていたかのように、初めからそのままの姿勢で座っている。・・・そして、一言呟いた。
「お前の言った通りになったな・・・総帥よ。これがお前の見たヴィジョンか・・・」
「あぁ、そうだ。これから楽しくなりそうだろう? 人間界だって、いつまでもなめられているわけには、いかねぇからなぁ!! 人間界ってぬるま湯につかった人間たちを刺激するには、丁度いい場所が出来ただろ!!」
はーっはっはっは! と笑う総帥はその返り血もあって、まるで悪の組織の総帥のようであった。
だがこの男は、間違いなく対魔の組織、バスターの総帥なのだ。例え、今回の騒動にAランクやSランクをあまり用いず、強力な魔物との戦闘経験があまりない一般隊員ばかりを用いた結果、被害を甚大にさせた張本人であっても。
破壊神、全世界を震撼させるほどの強力な生命体でさえ、総帥にとっては目的を遂行するための踏み台でしかなかった。
C
同時刻、七本の刀を刺した少年が、ビルの上に立って真下で魔物と戦う見下ろしながら呟いた。
「・・・すみません、助けたいのは山々なんですが、もう時間なので帰らなくちゃいけません・・・」
少年は目を伏して、悲しそうな表情を浮かべる。
「・・・そもそもこの戦いは、大量の血を流すことが目的なので、ここで下手に手を出せばその目的に反する事になります。・・・そもそも、そうじゃなかったらなぜ、バスターは人類最強レベルの人間達をここで用いなかったのか・・・。政治は難しいらしいですね。・・・まぁ、実際この空間から破壊神のウイルスが出れば、間違いなく人類は滅んでましたが・・・。そもそも破壊神のウイルスに対抗できる人間は精神力が強い人間ではありません。・・・『CESTGDF』の七人だけです。バスターが主戦力を出さなかった理由はそこにもありますね・・・」
少年はまるで誰かと会話しているかのように、長々と話した。しかし少年の周りには誰もいない。少なくとも存在しているようには見えない。
そうして、やがて少年の立つビルの屋上の一角に、少年がこっちに落ちてきた時のような穴が開いた。少年はそれを見つけると、その穴の中にゆっくり足を踏み入れつつ、振り返って言った。
「頑張ってくださいね、久郎さん。次の次である『S』までは、あと六年ですよ」
C
とりあえず、その後の事を離そうと思う。
あの後、シェルターから脱出した俺たちの目の前には魔物の群れがいて、それを古王と俺でなんとか切り倒して外まで脱出した。ゲートに近かったおかげで比較的楽に切り抜けられたが、隊員たちの護衛も兼ねねばならなかったので時間がかかったしまった。ま、隊員たちの中に誰も死人が出なかっただけよかったか。・・・そして、あの群れが何だったのか、それは古王に訊いても分からないらしく、ただ一言「なんかの陰謀のにおいがする・・・」とだけ古王は言っていた。
話によれば障壁内での魔物の氾濫騒動は、魔物を障壁内に閉じ込め続ける、ってことで解決したらしい。・・・解決にはなってないと思うが、それでもそうする以外ないのだろう。
それと、巨人から少し離れたところで気絶していた防王という王は、新兵器が発射される前に古王が背負ってシェルター内に運んだ後、また古王が背負いつつ外に運んで、外にあった野戦病院みたいなところに持っていっておいた。その後の事は知らないが、王はそんな簡単に死なないそうだ。また、気絶していた魔術師や隊員は、手が空いている隊員が次々に運んで行ったから、きっと全員無事だろう。
そして障壁内で起こった出来事は『吸血鬼事件』と呼ばれることになったらしい。主に吸血鬼が破壊神の戦力だったからというのが理由。事件での被害者は想像以上に多く、臨時で作られた死体安置所のような場所には、多くの悲しみの声と感情が溢れていた。その悲しみの中には小さな女の子もいて、女の子が頭を抱えてうずくまっていたことが印象的だった。・・・彼女にとって、トラウマにならなければいいのだが。
そう言えば、ハザードはどうしたのだろうか? これも古王に聞いても分からないと答えていた。無事に逃げ出せていればいいのだが・・・。もしまだ中にいるとしても、今の俺に助けに行く力はない。一応、敵だったけど協力してくれた奴だ・・・生きていてほしいと思う。
爺さんには手紙を残してきた。・・・多分、悲しむだろうけど。分かってくれると信じている。いつか破壊神との本当の決着がついた時に、また会いたい。だからそれまで生きていてほしいと願っている。
それと、創造神と時神とメイナのために、藤草家の墓の横に、慰霊碑・・・みたいなものを作ってきた。ただそれぞれの名前を書いただけだけれど、こう言うのは気持ちだと言うし、別にいいと思う。・・・ま、あの三人に墓ってのも似合わないだろう。あと藤草劾煽の名前もついでに書いておいた。余談だが、劾煽には戦場などでコツコツ集めた宝物などの隠し財産があったらしく、それが今の藤草家の繁栄の糧となっているらしい。
そして時は過ぎ、4月2日。
俺と古王は、古王のつてからとある山奥の田舎にある八音中門商店と言う店に、あの夜からずっと寝泊りさせてもらっていた。その理由は俺たちがバスターに何故か指名手配されているために匿ってもらっているのと、ここの店主が俺たちに協力してくれる、と言うからだ。
その八音中門商店と言う変な名前の店は、店長と呼ばれる年齢不詳の男(ただし外見は相当若い)と業と言う名の中学生ぐらいの店員の二人で営業している店で、どうもファンタジー世界にかなり精通しているらしい。裏で色々やっていて、しかもファンタジー世界の深い部分ではここの店長はかなりの有名人らしい。一見するとただの雑貨屋件駄菓子屋なのだが・・・実は売っている物の一部が魔術関連のアイテムだったりするのだから驚きだ。
そして今日、俺はついに決意し、商店の地下に何故かある手術室で左腕を肩から切ってもらった。
「おい久郎。よかったのか、左腕を切っちまって」
と古王には聞かれたが、
「あぁ、どうせ使い物にならないしな。だから別にいい」
と言って、手術に踏み切った。
どうやら左腕は本当に壊死していたらしく。細胞がことごとく破壊されていたらしい。ただ、破壊神も急のことだったからだろうが、血管や外側はほぼ無傷な状態で残っており、そのおかげであの時、内出血多量になることもなく、動けていたと言うわけだ。
左腕を今の今まで残していたのは、そう言う理由もあってまた動かせるようになるかもしれない、と思ったからだが。まぁ下手に残しておくよりは切った方がいい、と前々からここの店長にも勧められていたからな。
で、今の俺は、手術後の病院服を着ながら俺にあてがわれた部屋で座って休んでいる。そもそも、ただつながっているだけの腕だったのだから特に術後にどうこうと言う事はないらしく。少し疲れただけで済んでいた。ま、魔術を使った手術により恩恵なのかもしれないけれど。
ちなみに切った黒ずんだ左腕は、一応、試したい事があるので取っておいてある。・・・ま、どうでもいい情報だったかもしれない。
ガラガラガラ。
ふと部屋の扉が開かれる。そこに居たのは古王。何の用事なのか、そのまま部屋に入ってくる。
「どうしたんだ? 古王」
俺が訊くと、
「いや、ただこれからどうするのかな~、と思ってな」
と、古王は少し興味がある、と言った様子で答えた。
「どうする・・・か。何でそれを今訊くんだ?」
「いやだって、左腕切ったじゃん。だからそろそろ行動すんのかな・・・と思って」
古王の予想はあながち外れてはいなかった。この後、試したい事を試したら行動に出ようかと思っていたからだ。
「・・・まぁな。とりあえずすることは決まっている」
「ほー、何をする気でいるんだ?」
「・・・贖罪だ。・・・あの時、俺が殺めてしまったヤツの、忘れ形見を引き取りに行く。・・・それと、もっと過酷な環境に自分の身を置いてみようとも思う」
「過酷って、戦場とかにか? まぁ死なないようにせいぜいがんばれよ」
・・・と言う、古王の口調がなんだかムカついた。
「そっちこそ、過去に戻るタイムマシン、さっさと完成させろよ」
俺がそう言うと、古王は、頭の痛そうな顔をして部屋を出て行った。きっとまた、王界にいる時王ってやつと連絡を取るつもりなんだろう。
・・・さてと、ここで俺のこれからの所信表明をしておくとこんな感じだ。
(いつか俺は、ノフィーネとまた会って、あいつの悲しき運命を断つ・・・そのために俺は強くなろう)
そう心に改めて深く刻み、俺は立ち上がって、早速、試したい事を試すことにした。
強くなるために。世界を救うために。そして何より、ノフィーネに対して答えを出すために。
C
そして、時はそれから六年が経過する。
世界に数々の変化が訪れ、破壊神に対抗するために王界も人間界も奔走することになるその時、人知れずある計画が立てられた。
その計画の名前は『CESTGDF』。Cに始まりFに終わるための計画・・・英雄達の英雄譚であった。
と言う事で、これで『命断のクロウ』はおしまいです。こんな駄作をここまで読んで下さった方々、どうもありがとうございました。本当に恩の字です。
さて、展開が早すぎる、超展開過ぎる、と言う事に関しては本当に言い訳のしようがありません。気がついた時には超展開の物語は超展開でしか終わらせられなくなっていました・・・。友達からの指摘ももらっているので、次作ではこう言う事にはしないよう努力します。というかせねばなりません。
※2011年10月29日改文。
直すの忘れてて遅れましたが、続編的なものはおそらく書かないと思われます。構想はあったのですが、やはり黒歴史化してしまっているというのと、他にも書きたいものがあると言う事で、すみません。
今後とも、違った毛色や似たような雰囲気の作品を投稿したりするかもしれませんので、そちらもよろしくしていただけたら幸いです。
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