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Cの27話「DESTROYER」
 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
 今日、何度聞いたかわからない破壊音。その中でも、今の音は強烈の部類に入る音だった。少なくとも、ハザードの攻撃よりもすごい音がした。
 そして、それが地上に落下してきたことから来る衝撃波に、俺はノフィーネ共々倒れそうになり、結局倒れた。
「うっくっ、」
「大丈夫? 久郎君」
 ・・・衝撃波が収まり、俺はノフィーネに起こしてもらう。・・・本当に情けないな、俺。しかし今はそんなことを嘆いている場合ではない。
 苦笑している古王と、笑みを浮かべるベロ・ランザ。そして、その間にはひときわ大きなクレーターが。
「ついに・・・来てしまったか」
 隣にいる創造神が嘆く。あの落下物は・・・もしかして・・・。
『・・・久郎様。認めたくないかもしれませんが・・・』
 メイナが心配そうに話しかけてくる。あぁ・・・分かってるとも。そして、いつか来るという話を聞いていて、ベロ・ランザとかいうやつが求めているもので、創造神が嘆いている・・・この三つを総合した堪えは一つだ。
「破壊神・・・か」
 シュウシュウと煙を立てている、落下物が何者なのかはけ煙のせいでまだよくわからないが、ここにいる各人の反応を見る限り、間違いなさそうだ。まだ動きはないが・・・。
 ・・・破壊神、いつか『命断』を用いて戦わなくてはいけないと言われていた存在だ。しかし、今この場に、現れることも無いだろうに・・・。急なことにいまいち反応しきれない。いくらなんでも唐突すぎないか? ここは驚くべきなのか、悲観すべきところなのか・・・。
『・・・両方すべきですよ、久郎様。・・・こんな状況なのに、何でそんな悠長なんですか?』
 そんなつもりはないんだがな・・・。大体、破壊神について俺が知っていることと言えば、いろんな世界を滅亡させていった、ぐらいしか知らないんだよ。だから、危機感がいまいち持てないというか・・・そもそも、割と小さくないか破壊神。 
『それも・・・そうですね』
 モクモクと煙が上がっていて、よく見えないが、煙に隠れてるってことは煙より小さいサイズってことだ。・・・そんなんに危機感を持てと言われても。
 そんな時、クレーターを熱心に眺めているベロ・ランザが口を開いた。
「フッフフフ・・・『破壊神』様の一部が、ここに来るということは、こちらでも把握していたのでね。私じきじきにお迎えに来させてもらったというわけだよ」
 愉快そうに、ベロ・ランザが笑う。しかしそれにしても・・・一部?
 一部って何だ? メイナ、
『・・・分かりません。一部って、何なんでしょうか、一体・・・』
 そうか・・・なら。
「一部、ってなんのことだ? 創造神」
「・・・」
 しかし、創造神は黙して語らない。・・・どうしたっていうんだ創造神。急に黙りこくって・・・。
 そうして結局、俺の問いには創造神の代わりに、いつの間にか側に来ていた古王が答えた。
「一部ってのは、破壊神の体の一部・・・ってことらしい。破壊神が自らの体を使って生み出した分身・・・って言えば大体理解できるか?」
「・・・まぁ、分かった。だが、破壊神ってもっともっと巨大なものなんだろ? それが生み出した一部っていっても小さすぎないか? あれ」
「なに、超巨大生物が、自らの分身をミニマムサイズに作るなんてことはよくあることだ。それに、小さいってことは、大量に作れるってことでもあるしな」
 ・・・なら。
「・・・そもそも、あれが破壊神の一部であるって証拠は?」
「亜宙上に居る破壊神の体から来たのが確認されている。なら、それ以外考えられない」
 古王の言う事だ、その事実に間違いはないんだろう。なら・・・、
「・・・倒すのか?」
「いや、それはあちらさんの出方を見てだな・・・」
 そう言って、古王はクレーターの中央を見やる。見れば、煙は徐々に晴れつつあった。
 さらに古王は言う。
「大抵、こういった『一部』が生み出される場合の多くは、他人とコンタクトをとるためだ・・・、だから破壊神の場合も、こうやって一つだけよこしたってことは、何かしらの意思表示があるはずだ・・・」
 古王は握った大剣の柄を、より一層握り絞る。
 そして・・・煙は晴れた。・・・クレーターの中から声が響く。
「・・・はイ、はるばるやってきましタ、人間界・・・から少しずれた所の小世界。フフ・・・ヒヒ・・・アッハハハハハハハハ!」
 姿を見せた、破壊神の一部は、まるで人間のような姿をしていた。それは外見が人間の様なだけで中身はまるっきり違うものなのだろうとは思うが、着ているものがどこかの民族衣装っぽいってだけで、他は全く人間の若い男性と同じように見える。
 そして、そんな破壊神の一部は、クレーターの中心で爆笑していた。・・・壊れたやつなのか?
「ハハハハハッ、アッハハハハハッ、ックヒ、ハハハハ・・・それにしてモ、あー、おかしイ・・・俺が『一部』だっテ? フフフ、アーッハッハ!」
 そして、ひとしきり笑った破壊神の『一部』は、はっきりと言った。
「・・・お前らの話を聞いていたガ、お前らは間違ってるゼ。俺は『一部』なんかじゃなイ。正真正銘、破壊神『本体』だヨ」
 その発言に、その場にた一同は凍りついた。ただ二人、破壊神の『本体』と、創造神をのぞいて。

    C

「は、破壊神様『本体』なのですか?」
 一番信じられない、といった顔をしたベロ・ランザが、その破壊神の『本体』と名乗るものに訊く。
 『本体』は愉快そうに答える。
「あァ、そうだヨ。何を勘違いしたかは知らねぇガ、俺が破壊神の『本体』ダ! 『一部』を生み出すなんテ、俺はしたことも無いネ! ヒャハハハハッ!」
 クレーターの中心で、ベロ・ランザを見やりながら『本体』は笑う。それを聞いたベロ・ランザは終始呆然。続いて、時神が声を発す。
「違うのじゃ・・・あの方とは、何か違うのじゃ・・・」
 多分、呟やいたつもりが、思わず普通に言葉を口にしてしまったんだろう。それを聞いて心外そうに、自称『本体』は言う。
「おいおイ・・・何が違うっていうんダ? 俺以外の『本体』でも、見たことがあるっていうのカ?」
「・・・見たことはないがの、昔、声を聞いたことはある・・・。その声の雰囲気とは・・・違うのじゃ」
 時神は戸惑っているようだった。自分が信じてきたものは、自分が思っていたものと違う・・・そんな感じだ。
「違ウ、・・・ねェ。・・・着物を着てるってことハ、人間界のやつだろお前。・・・千年前に人間界に来たときモ、雰囲気は今と変わってなかったと思うがなァ・・・。そいツ、俺の名を騙る偽物だったんじゃないのか?」
「・・・分からぬ。よく・・・分からないのじゃ・・・」
 時神は混乱し、とても弱っているように見える。まるで、吹けば飛んでしまいそうなほどに。・・・あいつがあんな顔をしているってのに、俺は近づく事も叶わない。
 しかし・・・違う、って一体どういう事なのか。時神は今何を思って・・・、
『久郎様・・・、今は・・・』
 ん、あぁそうだな・・・。今はそれを考えている余裕はない。・・・にしても、本当にあれが『本体』なのか・・・? 時神は何か違うと言っていた。なら、あれは破壊神ではないのか?
 そう内心思う俺の横で、古王もまた首をかしげていた。
「むー・・・あれが本体なんて冗談にもほどが過ぎるぜ。見た感じ、大した魔力も持ってなさそうだし」
「ん、そうなのか?」
 俺が思わず訊き返すと、古王は詳しく語ってくれた。
「あぁ。『一部』ってんなら納得のいく魔力だけれど、『本体』にしては少なすぎる。大体、本体は今も亜宙に浮かびながらこっちへ徐々に向かってきているんだ。あれが『本体』なはずはない。・・・しかしとなると、あれは『一部』の精神が自立して『本体』を偽っているのか? 破壊神表面から放たれたのは間違いないんだしな・・・」
 うむむ、と顎に手を当て考える古王。しかしそれが聞こえていたのか破壊神の『本体』は古王の方を向き、言う。
「ほんト、毎回毎回俺って信じられねぇナ。大体何か勘違いしてるようだしヨ。フフフッ、まッ、それが面白いのだシ、こっちはこっちで勝手に・・・っテ、ン? ありゃァ・・・」
 しゃべっている途中で、笑っていた『本体』がこっちの方を見て表情を変えた。あれは何かを見つけた、って顔だ。
 視線の先は・・・ノフィーネ、かとも思ったが、少し違う。・・・その視線の先に居たのは・・・。
「久しぶりだナ。創造神! こんなところに居たのかヨ。別に探してなかったけド」
「・・・破壊神。もう・・・来てしまったのか」
 創造神は、これ以上ないくらい苦々しい顔をしている。・・・創造神?
「なァ、創造神。お前からも言ってやってくれヨ、俺が本体だってサ」 
 自称『本体』から、創造神にへと声が飛ぶ。そして、創造神にはさらに問いが投げかけられる。
「創造神・・・どうなんだ?」
 古王。
「神様・・・どうしたんです?」
 ノフィーネ。
「創造神・・・、破壊神様の『本体』がおっしゃっていることは、事実なのかね?」
 そして、ベロ・ランザまでもが訊く。・・・にしても自分で『本体』って言いながらも訊いてるってことは、結局信じてないんだな、あいつも。
「ほラ、どうしたんダ、創造神。何を考えているか知らないガ、早く事実を教えてやれヨ」
 『本体』がせかす。その場にいる誰もが創造神の口が開くのを待っていたその時。
 創造神は、口を開いた。
「・・・今から言う事に、一切の嘘も偽りも無い。・・・そいつの言っていることは、事実だ」
 ・・・それを皆が訊いた瞬間、沈黙がこの空間を漂った。だが、その沈黙を破ったやつがいた、 
「アッハッハッハ! ほラ、創造主のお墨付きが出たゾ。俺は破壊神、その事実に何ら偽りはなイ!  ヒャハハハ!」
 自称『本体』・・・いや、創造神が事実だと認めたから正真正銘『本体』か、未だ信じられないが

 とりあえず、そいつは笑いながらクレーターを飛び出し、ベロ・ランザの前にへと降り立った。
「デ? 俺のことを様付きで呼んでたってことハ、お前、俺の『信者』ってやつなのカ? 直々迎えに来たって言うシ、力も強そうダ」
 破壊神はまんざらでもなさそうに笑って言う。しかし、一方のベロ・ランザの顔は・・・笑っていないように見えた。
「そうか・・・これが『本体』・・・か。期待外れではないかね」
「ア?」
 ベロ・ランザのとげのある言い方に、破壊神はそのにニヤケた顔を真顔に戻す。
「お前、今なんて言ったんダ?」
「・・・せっかく、気を引くための供物たる『不老不死』を用意し、この日のために念に念を入れて準備してきたというのに、これが『本体』とは・・・期待外れだと言ったのだよ」
 ベロ・ランザの声には、怒りと失望が混じっていた。それはもう崇拝する者や尊敬する者に対しての口のきき方じゃない。
「・・・『信者』ってやつじゃねぇのカ。何ダ、少しがっかりしたゼ・・・ッ!?」
「私に近寄るな、下衆が」
 ベロ・ランザが呼んだんであろう黒騎士の槍が、破壊神を貫こうとし、破壊神は大きく後ろに飛び上がってかわした。
「ッ! あぶねぇナ・・・。危うく死ぬところだったゼ」
「・・・その程度の力で破壊神とは・・・冗談もたいがいにしてほしいものだね。だが、創造神が嘘偽りを言っている様子はなさそうだ。・・・これが世界を滅ぼしてきたなんて到底信じられないが、どうせ魔力も持たないような生物の住まう世界だったのだろう。現に、魔力を持つ私たちとと私たちの世界はこうして存在している・・・これは何よりの証拠ともいえる」
 くどくどとベロ・ランザは苛立ちを押さえるように喋り続ける。あれは多分・・・ムカついてるんだろう、破壊神に。信じていたものが自分より弱いやつだったなんて、と。
「・・・それハ、ここら辺の世界にたまたま俺がきてなかっただけデ、本気を出せばここら辺の世界ぐらい・・・」
「まだ言うか下衆が!」
 チュドゥン!
 中に描かれた魔法陣からメテオが放たれ、破壊神はその衝撃でクレーターの真ん中まで吹っ飛ばされた。
「ガハッ・・・ククク。強イ・・・強いねぇ、ククク」
 破壊神は苦しそうに笑う。なぁ、メイナ。あれが、あんなものが破壊神だってのか? 俺には、創造神が嘘を付いているようにしか思えないんだが・・・。
『そうですね・・・でも、創造神様は遠まわしにですけど、確かに、あれが破壊神『本体』だと認めました。その言葉に、嘘偽りはなかったように思います』
 だが、その嘘偽りがないってのはどうやって判断したんだ、お前。
『・・・雰囲気、でしょうか』
 曖昧だな。もしかしたら創造神、適当に返事したんじゃないのか?
『そうでしょうか・・・』
 ま、何にせよ本人に訊くのが一番手っ取り早い。
「おい、創造神」
 俺が呼びかけると、創造神はゆっくりとこっちを向いた。
「・・・なんだ?」
「あれって、本当に破壊神なんだよね、俺たちが打倒しなければならないはずの」
「・・・あぁ、そうだ」
「・・・お前、何でそんなに元気がないんだ?」
「・・・・・・」
 黙して語らず。ここに来て、創造神は多くを語ろうとはしてくれない。
「神様・・・何か心配ごとや、隠し事でもあるんですか? 一人貯め込んでいないで、話してください」
 ノフィーネもこう言っている。と、この言葉に何か胸の内に来るものがあったのか、創造神は曇っていた表情をハッとさせ、苦笑した。
「貯め込むな・・・か。それは誰が時神に言った言葉だったか・・・。いや、すまない。少し悲観的になっていたようだ」
 悲観的? それはいったいどういう・・・。
「ま、それもこれも全部、もう少し待っていてくれ。・・・それと古王。何かあったらすぐに動けるようにしていてくれ」
「・・・? 分かった」
 急に力を取り戻したような様子の創造神はそう指示し、視線をクレーターの中の破壊神へと移した。
 ・・・俺も、それにならって破壊神を見る。
 クレーターの中の破壊神は立ち上がって、ベロ・ランザに何か言っているようだ。
「ククク・・・しょうがねェ、そっちがやる気なラ、こっちも・・・」
「近づくなと言っているだろうが」
 チュドゥン!
「グハッ・・・」
 破壊神にまたメテオが浴びせられ、破壊神は、ぼろきれのようにクレーターの中を転げる。
 さらに、魔法陣よりメテオが連射される。・・・あれをくらって、破壊神は死ぬんじゃないか?
 チュドゥン、チュドゥン、チュドゥン、チュドゥン!
「・・・容赦なしだな・・・」
「だけど、まだ生きてるみたいだぜ、ほら・・・」
 古王が指をさした先は、クレーターの淵・・・多分、そこまで吹っ飛ばされたんだろうが、煙の中に確かに人影は残っていた。ただ・・・
「ハァ・・・ハァ・・・くっソ・・・」
 息も絶え絶え、今にもくたばってしまいそうだ。
 破壊神は息を整えつつ立とうとする。だが、
 ゲシっ!
「うッ・・・」
 立とうと力を入れた右手を、いつの間にか移動してきたベロ・ランザに踏みにじられる。
 破壊神は、憎々しげにその姿を見上げる。そのベロ・ランザの顔には怒りはなく、嘲りといたぶっての優越…みたいな笑みが浮かんでいた。
 破壊神の手を踏みにじりつつ、ベロ・ランザは言う。
「フッフフ、私としたことが少し取り乱してしまったようだね。だが、これが破壊神ではな可能性も残っている、あるいは『本体』というのは『第一形態としての本体』という意である可能性もある以上・・・一応、やっておく価値はあるだろうね」
「・・・なにヲ、する気ダ? うッ!」
 それを訊いた破壊神の顔に、口をきくな、とでも言わんばかりのベロ・ランザの蹴りがヒット、破壊神はまたクレーターの中へと転がっていく・・・。
 そして、俺たちがじっと見守る中・・・、ベロ・ランザは呪文を唱え始めた。・・・なぁ、あれ止めなくていいのか?
「・・・問題はない。むしろ、その何かで破壊神が倒されてくれれば万々歳だろ?」
 創造神がそう言うので、止めなくても大丈夫らしい。一応、古王に訊いておこうかとも思ったが、手間なのでやめる。
 そしてじっとして待っていると。数秒後、破壊神を中心として、何やら巨大な魔法陣が出現した。
「これハ・・・封印カ?」
 破壊神は自分の下に描かれている魔法陣を見て言う。
 確かに、残知回想の時に見た封印陣に似ているような気がしないでもないが、俺から見れば正直、魔法陣なんてどれもこれも同じようにしか見えないしな・・・。
 とまぁ、それはさておいて。その答えはベロ・ランザがすぐに答えた。
「否、これは使役陣。これはその改良型だよ。これによって、バイムによる契約の印を焼き付けられたものは、死ぬまで私の僕となる。そして、その印を焼き付けられたものが、たとえ『一部』であっても『第一形態』であっても『分身』であっても、実態を持った『幻影』であっても、もともと一つの存在であった『本体』を服従させることが出来る優れものだよ」
 そう言ったそばから、その使役陣とやらから何かが出てきた。あれは・・・ハンコ? 巨大な四角い形をしたハンコのようなものが、ジュウジュウと音を立てて破壊神の体にへと近づいて行く。
「つまり、これは・・・破壊神の体に焼印を入れるってことか」
「それだけじゃないぜ。バイムの中にある『契約の掟』を利用して、破壊神を完全服従させようとしているようだ」
 これは古王からの補足。どうやらあのハンコで焼印を入れられると、絶対服従を誓わされるらしい。
「まぁ、これ自体は何度でも出現させられる陣だから、出し惜しみする必要も無かったのだがね。・・・本当は最強の存在である『破壊神』に使う予定だったのだが、はたして・・・」
「てめェ、始めっからそのつもりデ・・・ちッ・・・!」
 それを聞いてハンコ及び、使役陣より逃れようとする破壊神。しかし、使役陣より伸びてきた十本ほどの人の腕のようなもので、四肢をがっちりと拘束される。
「うオ・・・! くそッ、離セ・・・離セ!」
 もがく破壊神。しかしその弱った体には、もうその腕を振りほどく力は残っていないようだ。
 破壊神が必死にもがく中、その首元に、焼印が押しつけられる・・・。
 ジュッ!
「ガッ! アァァァァァアアッ!」
 うめく破壊神。しかし、それを見るベロ・ランザの目は冷ややかだ。
「・・・印の反応から見ても、これ以上形態がある様子はないか・・・」
 よくわからないが、どうやら改めて失望したらしい。
「もういい・・・我が僕となれ、期待外れの『破壊神』もどきよ」
 不愉快な声で、そう告げるベロ・ランザ。その背後には、自らの道連れの来訪を歓迎するかのようにうごめく、ベロ・ランザに服従をしいられているのだろう悪魔たちが、色濃く見えた。
 そしかしその時、ウゴオオォォとうめき続けていた破壊神の声が、ピタリと止んだ。
「ん?」
 何があったのかと、ベロ・ランザおよび、俺たち全員、クレーターの真ん中に居る破壊神の姿を見る。
 すると・・・破壊神は、笑っていた。
「ククククク・・・そろそロ、猿芝居はいいころかナ?」
「・・・なに?」
 ベロ・ランザはいぶかしみ、目を細める。一方、破壊神は、焼印を押された体制のまま、猛々しく笑った。
「アーハッハッハ・・・期待外レ? こっちは期待通りだゼ!」
 一体、あいつは何を言ってるんだ? 多分、他の奴らもみんなそう思ったに違いない。すべてを知っている創造神以外は。
 そして、破壊神は叫びだした。
「ハァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
 ・・・何をする気だ? そう思ったその時、
「っ! 古王! 久郎とノフィーネと自分の周りに最高密度のバリアをはれ! 今すぐに!」
 創造神は突然叫んだ。突然のことに、俺、そしてノフィーネもわけもわからないといった様子で立っていたが、古王は即座に反応し、周囲にあの大剣を積み上げバリケードを作り、その内側に光る窮状おバリアのようなものを張った。
 そして、破壊神の内側から、何やら光が漏れだして・・・
 キュイィィィィィィィィィィィィン・・・・・・、チュドォォォォォオオオオオオオオオン!!
 ブオオオオオオオン!
 衝撃と暴風が襲ってくる。しかし古王のバリアのおかげか、その衝撃はバリケードとバリアの分で防がれているようだ。俺たちには全く届いてはいない。
 ・・・しかし、一体何が起こったんだ? 今度の爆発は煙がはっせいしていないおうだけれど・・・ん?
 そこで俺は気づいた。クレーターの中を見下ろせば、さっきまで使役陣の真ん中に居たはずの破壊神がいない。使役陣も消えている。
 一体何が起こったんだ・・・? そう思った俺の疑問は、またしてもベロ・ランザが独り言で勝手に答えていた。
「体内の魔力を自ら活性化させ、自爆したか・・・。そこそこは魔力を隠し持っていたようか。・・・しかし、防御をしたとはいえかすり傷程度しかおってはおらぬ。・・・やはり、弱いな・・・」
 ベロ・ランザは服をはたきつつそう呟く。その後ろでは、時神が、こほんっ、と咳をしつつ着物についた汚れをはたいていた。その横のハザードは、特に何もしないまま突っ立っている。・・・あいつだけバリアを張ったのだろうか?
「てか、なんであいつら俺たちみたいにバリア張らなかったんだ?」
「正確には張ったの俺だけどな・・・。あんな程度の爆発に、こんな高密度なバリアを使うやつは普通いない。魔量を無駄に消費するからな・・・。強者なら普通は、着衣で防ぐか簡易シールドを張るかぐらいしかしない。・・・まぁ今回は予想以上に爆発の威力が高くて、あっちも完全には防げてなかったみたいだが・・・それでもかすり傷しか負ってはいないようだぜ」
 バリアをとき、バリケードの大剣を宙に上げて消した古王はそう説明した。
 なるほどな・・・、しっかし、ならなんだって創造神はこんなバリアを張るように言ったんだ?
 と、本人に訊いてみた。
「・・・すぐに分かる。せめてそれまでは・・・考えをまとめる時間をくれ」
 そう創造神は言った。・・・考えをまとめるっていったい何の? しかし、そこまで訊く気は俺にはない。
 そんな中、ベロ・ランザは呟く。・・・ってか、独り言の多いやつだな。まぁ、実際口に出して言った方が考えをまとめ安いってのもあるとは思うが。
 と、それはともかく・・・。ベロ・ランザは呟いた。
「・・・さて、世界征服の野望もこれでまた振り出しに戻ったということかね・・・まぁ、いい次はどうしたものか・・・」
 ・・・なんか、独り言にしては他人に聞かれちゃいけないことほざいてるぞ、あいつ。
「むっ、と。そう言えば、古王との勝負の途中だったな・・・まぁ、いい。こうなれば古王。貴様を我が僕にするまでよ」
「えっ、俺かよ!」
 急に話をとんでもない展開で振られ、動揺する古王。
「貴様程の奴を我が配下に加えれば、我が野望に一歩近づけるだろう。今までは、強い力を持ちすぎて周りに集中して討伐されるのを恐れ、最強クラスを配下にするのは控えていたが・・・もう手段は選ばん! 貴様を我が僕にする!」
「やなこったい! 誰がお前なんぞの僕に・・・」
 そう答えようとした古王の目の前に、黒い腕が十数本集まってできたウニのような悪魔がいきなり召喚され、古王を拘束した。
「なっ・・・ちょっ・・・いきなりすぎねぇか!?」
「手段は選ばんと言った! 『使役陣』!」
 古王の真下に、再びあの陣が描かれる。・・・って、古王!
「古王さん!」
 ノフィーネが叫ぶ。・・・どうやら古王は、あの悪魔を振りほどけないでいるらしい。・・・なんでだ?
「古王! そんな悪魔、早く振りほどいて・・・」
「・・・いや、腕が抑えられてるから、剣が振れなくて・・・こいつは・・・まずいな・・・」
 額に冷や汗を浮かばせながら、口元だけを笑わせる古王。って、笑ってる場合じゃねぇっての!
 見れば、ハンコが古王の首筋に徐々に近づいていっている。
「くそっ・・・『人体強化』を・・・」
「ダメ! 久郎君・・・神様!」
 そんな俺を止めつつ、ノフィーネは創造神に目を向ける。だが、創造神は動かない・・・。
「フッフフフ? こんな簡単に決まってしまうか? ほら古王、本気を出さねば私に服従せねばならないがね? フッフフフ・・・」
 くそっ、ベロ・ランザは愉快そうに笑う。・・・なんだ? あの最強クラスの戦い方とやらに乗っ取って、あの悪魔を振りほどけるであろう本気の力を古王は出さないようにしている、ってことか?
 なら・・・、
「なにしてる、古王! 本気出さないと無理なら、本気を出せ!」
「そうは言うがな・・・、俺の本気をこんなとこで出したら・・・」
「先に本気を出したら負けるってか? ・・・だが、今負けたら本末転倒だろうが!」
「フッフフ・・・アッハハハ・・・」
 くそっ、余裕綽々に笑うベロ・ランザが鬱陶しいな、ホント!
 古王はまだ、本気を出すかどうか迷っているようだ、しかし古王は決断をしようとはしない。創造神も助けようとしない。なぜだ?
 あぁ、もう、分からん! こうなたら、やはり『身体強化』を使って・・・。
 そう、俺が思った時だった。・・・この場に異変が起きた。・・・ハンコの動きがピタリと止まる。
 そして・・・、
「ッ! うごぉ・・・なんだ!? 頭が、割れるように・・・痛い!?」
 ! ベロ・ランザが頭を押さえて苦しみ始めた。・・・なんだ? 何をした? 古王。
「・・・いや、俺は何もしちゃいないが・・・っと」
 あの悪魔も消え、古王は解放された。と、俺の耳にはまたうめき声が
「うぅ・・・頭が・・・痛い! ・・・なんじゃ、これは・・・?」
 見れば、時神も頭を押さえて苦しんでいる。・・・何が起きてるんだ? いったい・・・。
 たまらず、俺は訊く。
「創造神! これは、何が起きて・・・」
 しかし、その俺の言葉は、あるヤツの声に遮られた。
《クククク・・・アーッハッハッハ、俺が死んダ、とでも思っていたカ? クフフフフフ、分かっちゃいなイ、あァ、誰も分かっちゃいないゾ! 破壊神がいったいどんなものなのカ! この場に居る誰一人として分かっちゃいなイ!》 
 これは・・・破壊神の声か! でもどこから・・・。
 俺は声のした方を向く。その方向には・・・ベロ・ランザの姿が。ベロ・ランザ自身も驚きを隠せないようだ。
「破壊神!? いったいどこに・・・」
《お前の中だヨ。支配者気取りの悪魔ァ!》
 とたん、ベロ・ランザは自らの口を押さえる。・・・なんだ、今のは。俺は確かに見たし聞いたぞ・・・、
 ベロ・ランザの口から破壊神の声が発せられたのを! 
 ベロ・ランザは手で口を押さえるが、口は動くことを止めない。
《いヤ・・・、そういや俺のことを一人だけ分かってるやつがいたカ。なァ、創造神・・・》
「・・・もう、いいころ合いか」
 そう言って、創造神は一歩一歩、ベロ・ランザに近づいていく。
 ベロ・ランザは何かを召喚しようとしたのか、左手を振り上げようとしたが、その腕は不利上がる途中でピタリと動きを止めた。
「これは・・・体が・・・動かんっ! なんだ!?」
 動揺しまくり、目を見張り、顔には恐怖の表情を浮かべるベロ・ランザ。
 そんな、ベロ・ランザに・・・いや、そして俺たちにも、創造神は真実を告げていく。
「・・・破壊神とは、あの異世界の男性のことではない」
「な、何を言って・・・貴様が、あれは破壊神だと・・・」
 ベロ・ランザは苦しそうに、創造神に言うが、創造神はその問いには答えず、話を続ける。
「無論、超巨大な兵器や魔物などではない。むしろ逆だ」
 そして今度は、時神に異変が出る。
「・・・なんじゃ・・・体が・・・勝手に、動く・・・意識・・・が・・・」
 目を朦朧とさせ、その目に光が失われていく。・・・俺は駆け寄ろうとしたが、体に痛みが襲ってきて、おまけに古王の腕にも遮られた。・・・横にあるノフィーネの顔を見れば、悲しそうな顔をしている。
 ・・・何もできないのか、俺は。・・・その気持ちに体から一層、力が抜ける。
 脱力したまま創造神の話を俺は聞き続けた。そして・・・創造神は、驚くべき事実を口にした。
「破壊神とは。普通その身に宿すことのない量の魔力を宿した・・・『ウイルス』の『種族名』だ」
 最早、俺は何を言われても、そんなものなのだろうと驚かないが、創造神に対したベロ・ランザは驚きの表情を浮かべている。
「そんな・・・馬鹿な。・・・ウイルス・・・だと・・・!?」
《正解、正解、大正解~! つってモ、創造神は最初から知ってたけどナ。何せ俺を作ったのも創造神だシ》
「ベロ・ランザ卿。今、破壊神は、あなたの傷口から貴方の体内へと侵入し、あなたの神経および脳を掌握する。そして・・・あなたの体は、破壊神に乗っ取られる」
 創造神はそれだけ言って、またこっちへ歩いて戻ってくる。その後ろでは、ベロ・ランザが最後の叫びをあげていた。
「な・・・あぁ・・・私が・・・私があああああ!」
 ベロ・ランザは、頭を押さえうずくまったかと思うと、その場に倒れた。そして・・・その奥に居る時神もまた、地面に倒れていた。無事なのは・・・ハザードだけ。
「・・・これは笑えん状況だな」
 ハザードが思わずつぶやいた。と、その時。
「それはこっちの台詞だナ。・・・なんでお前ハ、俺に感染していないんダ?」
 ムクっ、と起き上ったベロ・ランザ。・・。ハザードや俺たちは少し身構えるが、何か様子がおかしい。・・・というか、声が、破壊神だ・・・。
「創造神。あれは・・・どういう事だ?」
「簡単に説明するなら、ベロ・ランザの体が破壊神というウイルス体に乗っ取られたってことだ」
「乗っ取る? ウイルスが、人の体を?」
「あぁ、そうだ。・・・、そして、見ろ」
 創造神が指差した先では、時神もまた顔をあげていた。・・・しかし、その顔に生気はなく。ただぼーっと突っ立っていた。
 俺がその時神の姿を見つめ、呆然とする中、破壊神とハザードの会話は進行していた。ベロ・ランザの体の破壊神は、ハザードに訊く
「お前、さっきの爆発で傷を負わなかったのカ?」
「・・・生憎、我が輩は吸血鬼だ。爆発の瞬間、体をコウモリ化させ難を逃れた・・・」
「へェー、マジでカ。そんな裏技テクニックがあるとはナー」
 破壊神は感心している様子で言う。・・・あの外見であの話方だとすごく違和感があるんだが、そんなことを今突っ込むわけにもいかない。・・それよりもだ。
「創造神。いい加減話してもらうぞ。あの『破壊神』について、洗いざらい全部」
「・・・あぁ、いいだろう」
 創造神は、以外にも迷いなくすんなり話す様子を見せた。そして話される、破壊神の真実・・・。

    C

 創造神は、一気に破壊神について語り始めた。
「『破壊神』は、俺が作った生命体破壊用ウイルスだ。・・・創造の前の破壊のためのシステムとも言い換えてもいい」
「・・・破壊神は、俺が作った世界で何らかのミス・・・例えば、自己再生できないレベルの戦争がおこったり、他の世界を侵略したり・・・、そう言ったことが起こってしまった世界をリセットさせるために創ったものだ・・・少し、昔話になる」
「俺は世界を創ることが出来る。だがしかし・・・1から作るよりも、失敗したものを創りなおす方が簡単に早く済む。産まれてからどれだけか経った俺は、そう考えて、失敗した世界のリサイクルに乗り出した」
「しかし、ある時。・・・失敗した世界の住人が思いのほか強い世界があった・・・。その世界はある強大な戦争があった世界で、その結果、今までにも見たことのない程の力を持っていた。・・・世界を創りかえるには、その世界の住人の抵抗があってはできない・・・。だから、俺はあの手この手で試行錯誤した。他の世界ト戦わせてみたりとかな・・・しかし、その世界の住人は強かった。俺は止む無く、超巨大な悪魔を創り上げ、その世界に送りこんだ。結果、その世界の住人は、その悪魔の手によって滅亡した」
「この悪魔さえいれば、他の世界でも創りなおしがうまく進むと思っていた。しかし・・・また強く失敗した世界が出来てしまった。・・・その世界の勇者とか言う者によって、悪魔は倒された。仕方がないので俺は、今度は超巨大な戦闘機械を創った。そしてその世界の住人は滅亡した」
「それからも、そんな感じでいたちごっこだった。機械が破壊されれば合成獣、それが殺されれば今度は天使、狂蟲、偽神・・・キリがなかった。そんな時だった・・・『破壊神』を創ることを思いついたのは」
「コンセプトは『その世界の住人の手によって、その世界の住人を滅亡させる』。・・・悲しくも、これが一番効率のいい手段だった。人間界が世界を焼くほどの威力を持つ核兵器を持っているのと同じで、どの世界も、自らの世界を滅ぼす力を持っていてしまったからな。『破壊神』計画は成功した」
「『破壊神』は傷口から感染する。『破壊神』を宿したヤツの血液や体の一部が傷口に直接接触すれば観戦するようになっている。そして『破壊神』の注目すべき点は、一体のマザー体と超多数のその他で成り立っているってことだ」
「マザー体は意識を持ち、意識を持たぬ他の破壊神への細かな指揮をする役割を持っている。また、マザー体には他の破壊神よりも増殖しやすい・・・つまり相手を感染能させるが高い特徴がある。そして、そのマザー体が今ベロ・ランザの体を乗っ取っているアイツだ」
 そこで、創造神はベロランザの体を持った破壊神を指差した。創造神の話がひと段落ついたのを感じ、俺は訊いた。
「・・・つまり、あいつを倒せばいいのか?」
「そう言うわけにもいかない・・・。破壊神のマザー体が破壊された場合、その意識と役割はその他の破壊神に引き継がれる。破壊神たちはそれぞれがつながっているため、マザー体が存在しなくなったのを感じて、新たなマザー体を生み出すわけだ。つまり、マザー体をどれだけ倒そうとも、すべて破壊神を滅ぼさない限りは、マザー体はどこかで産まれ、同時に破壊神も増殖し続けるというわけだ」
 ・・・俺はそれを聞いて押し黙る。・・・待てよ、それってどうすればいいんだ?
 俺に続いて、古王も訊く。
「ちょっと待てよ。確か、亜宙の向こうには破壊神の『本体』って言われ続けたものがあるだろう? あれはいったい・・・」
「あれは破壊神が滅ぼしてきた世界の残骸の集まりだ。破壊神はそこを、奪い取った体の保管庫にしている」
 納得が言ったように、古王は黙ってうなずく。・・・そして、創造神は悲痛な叫びをあげる。
「・・・破壊神は、失敗した世界をやり直すために作られた存在で、俺もそのように作ったはずだ・・・なのに、なのに! なぜか暴走した! 原因不明で、片っ端から世界を滅ぼすように動くようになった!」
「おいおイ・・・、創造神。お前が俺を創ったのは世界を壊させるためなんだろウ? それで俺は世界を壊しているだけだヨ」
「黙れ! ・・・そもそもおまえに自我は与えたが、そんな邪悪な心を与えたつもりはない! それに、正常だったころのお前たちには『神』なんて称号は付いてなかったはずだ! ・・・やはり、お前をいじったのは、『神の称号を与える者』か!」
 ・・・『神の称号を与える者』? 疑問に思ったが、今の状況では、誰もその疑問に答えはくれなさそうだ。
「ククク・・・さあネ。だが今の俺ハ、ただ気ままに世界を破壊し続ける『破壊神』ダ。お前の道具なんかじゃなイ。・・・さテ、長話が過ぎたナ。どうせお前は俺を止めようとするんだロ? 創造神」
「止める程度じゃない・・・お前を倒す」
「アーハッハッハッハ、寝言は寝て言えヨ、創造神! お前の力じゃもう俺を倒すことなんて不可能なんだヨ! ま、俺も創造主であるお前にウイルスを感染させることは不可能なんだがナ。代わりに・・・お前のお仲間に感染させてやるヨ」
 そう言った破壊神は。跳躍の後、ものすごい勢いで、俺たちの元へとつっこんできた。
「チッ」
 古王の舌うちの後、ふわっ、と俺の体が浮いた。見れば、俺とノフィーネは、古王の別々の腕に抱えられていた。古王は、破壊神の攻撃を避けるために大きくバックステップし創造神に訊く。
「で、どうすんだ創造神! 俺はどうすればいい!」
「そのまま、二人を連れて人間界へ戻れ! 後のことは頼んだ!」
 言われた古王は、いぶかしげにさらに訊く。
「・・・ちょっと待て、その返答だとお前は?」
「俺は・・・ここで破壊神をくいとめる」
「神様!?」
 ノフィーネが叫ぶ。創造神はベロ・ランザの体の破壊神に掴みかかり、動きを封じていた。・・・創造神、お前・・・。
「・・・さっきまで迷ってたんだ・・・だが決めた、俺はお前らに賭ける。・・・だから今は逃げてくれ!」
「・・・分かった。また会おう創造神」
「分かったじゃねぇよ! 古王! 創造神が・・・」
 俺は古王に対して必死に叫ぶが、
「・・・どの道、この場じゃ誰か犠牲にならないと助からない。だが、後のことに対し、お前らに希望を見たからこそ、あいつは自らを犠牲にすることを選んだんだ・・・察しろ」
 そう告げ、走り出す古王。俺は古王にそう言われ、何か言い返そうとしたが、何も言い返せなかった。
 一方、その腕にしっかりつかまれたノフィーネは、必死にもがくが、その腕から抜けることはかなわない。
「神様! 神様っ!」
 ただただ、創造神に呼びかかるノフィーネ。それを聞いた創造神は、ニコリ、と小さく笑った。
「チッ、離セ、創造神・・・。クソッ、だったらそっちの奴!」
 破壊神が呼びかけた先、その先には時神が。
 時神は、急に命を与えられたかのように動き出し、すごい勢いでこちらに迫ってくる。
「・・・すまんな、時神」
 古王はそう呟き、迫ってきた時神をかわし、蹴り飛ばす。そして、古王はまた走る。
「・・・時神」
 俺もまた、そう呟いてしまった。・・・あいつと過ごした時間はそう長くなかったが、それでも・・・な。やっぱ、悲しいんだよな・・・これ。・・・時神。
『久郎様・・・。っ・・・』
 メイナはあえて何も言わず、脳の奥に引っこんでいった。
 古王に抱えられ、だんだん小さくなっていく、創造神や時神の姿。 
「神様ァ! 神様っ!」
 ノフィーネはまた必死に叫び続けている。そして、俺はただ・・・黙って、現実から目をそむけりように・・・目を閉じた。


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