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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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僕の魔法

「ところで、リターンて魔法は神聖魔法か何かなの?」
街道を警戒しながら地図上の目的地ドガと言う町を目指して歩いているとすずが聞いてきた。
本当は黙っておきたい所だ。
もう何度も魔法を見せている上に今後も連携をしながら戦う場面が来るだろう。
「いえ、違います。僕は聖職者ではありませんので神聖魔法のスキルは使えません」
「怪我の治療なら黒魔法にも出来る系統があるのは知ってるよ。けれど死者を蘇生する魔法は神聖魔法だけじゃないの?」
僕もこのゲームに入る前に神様から受けたレクチャーでもその事には触れていたな。
「このゲームは僕らの生きていた世界で培った知識や技がスキルとして反映されています。僕は工学系の道に進んだ宇宙工学のエンジニアなのでこの世界において必要な魔法の補助スキルが軒並み揃っていたと聞きます。そこで開放されたのが僕の持つ時空魔法と言う複合スキルなのだそうです」
聞いているすずは想像がつかないのかキョトンとしているので話を続ける。
「僕たちの世界の知識とこの世界の魔法体系の理論を複合した結果、この世界のシステムが理論上にもありえると判断して開放したスキルなんだと思います」
「こっちの世界の知識だけじゃ成立しない魔法?」
「そうだと思います。キャラクターメイキングで向こうの世界で宇宙工学のエンジニアの仕事をしていた僕が神様に選ばれたのは、僕の知識スキルとこちらの魔法理論で変わったスキルが取得出来ると判っての事だったからだと思います」
決して童貞だからじゃないハズだよ!
「じゃあ時空魔法ってオンリーワンの魔法なの?」
「どうでしょう?これを選択するには時空魔導士という職に自動的になるみたいですが、なれる人はそれなりにいると思いますよ」
僕の同僚なんかがコピーされて連れて来られれば、知識量としては変わらないからきっと使える事にはなるんだけれど。プレイヤーの神様は派手な攻撃魔法を取得したがるのではなかろうか、時空魔法なんて選択するかどうかは微妙なのではないかな。
「何で時空魔法で蘇生や回復が出来るの?」
「時空魔法は文字通り時間と空間を操る魔法です。魔法対象をこの世界の一日、つまり25時間前までの元の状態に戻せるんです」
「部分的なタイムスリップって事?」
「そう捕えてくれて構いません。片手での発動なら手のひらから直径50センチ程度の円内を、両手なら触れた物の全体の時間を戻します。ですがこの惑星の自転周期の一日分25時間以上経った怪我は元に戻せません」
「使い道は回復限定?」
「今の所はそうですね。酷い目にあった人を酷い目に合う前の状態に戻すとその時間分の記憶は消えます。これを利用した25時間以内の記憶の消去と・・・後は武器の修復ぐらいですかね?」
他にも考えれば使い道は無くはないが。
「マナの消費量はどうなの?」
スズもこのゲームに当てはめて言っているのだろう。
マナ=MP、魔力=魔法威力との理解だろうか
「10分程度前の蘇生なら10%ぐらいですかね、25時間は試してませんが半分ぐらい?ステータスのマナ回復が◎でした。この間の村では空っぽまで使いましたけれど、30分ぐらい座っていれば地面からマナを吸い上げて満タンまで回復しするみたいでした」
僕のマナの総量が判らないので数値化した物を一度拝見したいものだ。
「一つの魔法で色々出来るのね」
やや感心してくれたらしい
「ちなみに、神様に聞いた話では神聖魔法や黒魔法だと回復しても自己修復能力の加速が殆どなんで傷跡が残るそうです。錬金術は完璧に治すけれども、欠損部分を代替えする為の動物が必要らしいです」
「何で錬金術なのかしら・・・」
「現代医学の応用なんでしょうね。ブタの体にに人間の欠損部分の情報持った細胞植えると、人間の欠損部分が生えてきますし。親和性高いらしいですよ」
ブタの背中に人間の腕が生えて来る想像でもしたのだろうか、スズが気持ちの悪そうな顔をしている。
錬金術や時空魔法の他にも、現代の職人クラスの腕や知識を魔法と融合させると色々な応用魔法が出来るのだろう。
ただし、このゲームのルールとしてこの世界に持ち込んだ知識で科学の進歩に繋がる事は禁止になっている。
今のこの世界は剣・槍・弓・魔法が主な武器らしい。ここに銃の製造知識を持ち込んでしまうと簡単に人が死に、戦争でとんでもない量の死人が出る世界に一変するだろう。
いきなり異世界に転移されるお話みたいに現代知識と道具で「俺つぇー」みたいな事をすると、アカウント停止処分かアカウント剥奪処分(通称、アカBAN・垢バン)になるみたいだ。
まぁ、そりゃそうだよね。僕が運営か神様だったならそんな面倒なヤツ速攻垢バンしちゃうし。
それでも製造方法を見せたり教えたりせず、自分で作って自分で使う分には平気らしい。
どうしても銃使いたかったらこの世界の道具で作るしかない、この世界の技術で出来るのは精々火縄銃程度だろう。
しかも他人に製造過程を見せられないから手伝って貰えないとなると、銃弾や火薬まで自力での作成は何十年かかるのやら。
そんな事を考えていたらドガだろうか、町が見えて来た。
僕の想像していた町とは違って、ちゃんと石壁に囲まれた城塞都市みたいだ。
町が近づくにつれて街道にはチラホラと通行する人が増えてきている。
このドガの町は街道の宿場町として発展したのだろう。町の北と南に門があり、町のど真ん中を街道が突っ切っている。
いざとなったら門を閉じてしまえば侵入者を寄せ付けない強固な町になるのだろう。
僕らにはサバイバル技術も野営道具も無い、暫くはこういう宿場町を利用しながら移動するのが良いかもしれない。
門を潜り町へ足を踏み入れる。
まだ日は高いがこの町では、やる事が沢山ある。
最初の村には旅装も武器も売っていなかったので、装備の調達。
村で謝礼として貰った貨幣の価値と物価を調べて、何回宿に泊まる事が出来るのか。
最悪この町で装備を調達したら使い切ってしまうかもしれない。
そうなった場合にはこの町で仕事を探さなくてはいけなくなるので、仕事の斡旋所みたいな物があるのかどうかも調べておきたい。
「すず、このドガの町では・・・あれっ?」
その事をスズに伝えておこうと振り返ると既にいない。
考えを纏めている間に飛び出して行ったらしい。
村でも人質を取られているにも関わらず、何も考えずに飛び出して行ったんだっけ?
既に姿の見えなくなった旅の相方に呆れながら、待ち合わせ場所すら決めていない事に思い至り慌てて追いかける。
スーツを着て毎日運動不足を気にしていた自分が、ラフな服装でこんな所を息を切らせて走っている。
町で何かトラブルを起こしているすずの姿を何となく想像して、呆れながらも少し顔が綻ぶ。
そういえば、この世界に来てからずっとしかめっ面をしていたな。
何だか少しだけこの世界が楽しくなって来たかもしれない。
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