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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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出立

村へ戻ってから二晩村に泊まり地図や道具、情報を揃えてから出発した。
村を挙げても祝宴が開かれ、随分と住人とは仲良くなった。
スズも子供達には人気で、ずっと遊んであげていた。
村を救った事での報酬も受け取った。
お金は牧場に残されたていた盗品等の盗賊の財産を、村人がちゃっかり探し出て来た物を後日売却するらしい。
それらのほぼ全てを僕らが前払いで受取る事になった。
冒険者とか傭兵とかをしながら旅をする身としてはこれを断っていたら、もう定職に就くしかなくなるのかもしれない。
それでは何をしにこの世界にやって来たのか判らなくなるので、ありがたく受け取る事にした。
これで当面お金には困らないのはありがたい。
神様とも相談をして、僕らは戦争の最前線へ向かってみる事にした。
僕のリターンを生かすには治療や蘇生を沢山出来る現場にいる事だろう。
モンスターも生息しないこの世界で、僕達がポイントを稼ぐのに最も効率の良いのは戦争なのではないかとの考えからだ。
そもそもこのゲーム世界にPK(プレイヤーキル行為)は禁止されてはいないらしい。
辻斬り等の犯罪をしても特にペナルティも無いのは危険極まりない。
このゲームの評価ポイントにモンスター討伐みたいな事が含まれないとすると・・・
「どうしたの?」
スズは街道を後ろ向きに歩きながら僕の顔を覗き込む。
デコボコの路面を後ろ向きに歩いても転ばないのか、随分器用な事が出来るんだなと思いながらも
「スズはこのゲーム世界の順位ってどうやって決まると思いますか?」
一瞬考えてからスズは答えた。
「何かを一番に成し遂げるとか、一番の大金持ちとか王様になるとか?」
「神様曰くですね、ゲームの評価ポイントは発表されていないらしいんです。今の所プレイヤー側が「これだ!」って思う目標を立ててプレイしていく、イチかバチかの当たり探しの要素も強いみたいです」
あっ、前方に馬のフンが居座っている・・・このまま進むとすずの足元に直撃コースかも
「分かり易く魔王でもいてくれれば楽なのに」
僕は視線でバレない様にそっぽを向いて、話を続けながら慎重に歩く。
「一人で成し遂げられないとポイントにしにくいかもしれませんよ?この世界の果てを超えると魔界があって、そこに乗り込んで魔王軍やら魔物を倒すのにたった4~5人じゃどうしようも無いでしょう。それこそ軍隊でもぶつけないと」
あと3歩・2歩・1歩・・ヒョイ
「あーーっ」
後ろ向きに歩いてるクセに何で判ったんだ!馬のフンだけを足元も見ずに飛び越えた。ズルい!
しまった。つい、声を上げてしまった。
「あんた、あたしにこれ踏ませようとしてたのね・・・」
大変お怒りのご様子なので、すかさず逃げようとしたけれどもスズの動きが速すぎる!
後ろからチョークスリーパーを決められる。
フニュ
あっちょっと・・背中に無い胸が当たってるよ!と言ったつもりの言葉は
「グェーー」
としか僕の口からは出て来なかったなかった。
先日の盗賊の事件で距離が一歩ぐらい縮まった気がするので、彼女の呼び方も「スズさん」ではなく「スズ」と呼ぶようになった。
まぁ、彼女も僕に一切敬語を使わなくなってしまったからって事もあるのだが。

「で?」
「何ですか?」
「いやさっきの評価ポイントの話」
再び街道を、今度は横並びで歩きながら、すずが思い出したのか続きを聞いてきた。
「えーっと、仮に魔王が存在して、それを倒したら1000万ポイントだとします。魔王を100人で倒したら一人10万ポイント。でも他に個人で稼げるポイントが無ければその100人の同点優勝になってしまいます。だってモンスターなんて殆どいない世界ですからね」
「まぁ、普通はゲームの中では経験値稼ぐのもお金を稼ぐのもモンスターの存在があってこそよね」
「この世の果てを超える手段が無い以上、このモンスターの居ない世界のポイント評価のターゲットは人間だと思うんです」
「人間ってこの世界の住人?」
「この世界の住人だけではなく、PCとして参加している人間も含めてです」
よく分からないといった顔で首を傾げるすずに
「僕と神様で予測を立ててみたのですが。①社会的に影響を与える行動②人に直接的に何かをする行為、に評価ポイントが設定されているんじゃないかと思います」
「より多く人助けをするって事?」
「いえ、悪い事をしても同じくポイントが貰えるのかもしれません」
「ええっ!何よそれ。それこそマイナスポイントになるんじゃないの?」
理解出来ないといった風のすずに
「村での出来事は僕らから見たら盗賊の非道な殺戮行為ですけれど。もしかしたら彼らは敵対国の潜入作戦の先遣部隊で、目撃者は全て排除せよとの命令を受けていた場合。彼らは国へ戻ったら英雄だったかもしれません」
「そんな訳がないでしょう!あれは・・・ただの盗賊で」
「もちろん、今回の件がそうだとは言いません、しかし逃げたPCがそうだった可能性も0ではありません。どちらにしても立場が違えば簡単にマイナス評価がプラス評価に反転してしまう事柄は、最初から全部プラス評価になっているのではないかと言う仮説を立ててみました」
「もっと解り易いたとえでお願い」
僕は少し考えてから、人差し指を立てて説明する。
「男が拳銃で人を殺しました。目撃者は口々に言います「あいつがやった、悪い奴だ」と。しかしその後警察が来て男に事情を聞くと、男は実は刑事で凶悪犯を追っていた。男が撃ち殺したのは凶悪犯でした。事情を知った目撃者は口々に「凶悪犯を倒してくれて刑事さんありがとう」と言っていました」
「同じ殺人行為でもマイナス評価かプラス評価か、周囲の状況次第で裏表が変わるって事ね」
「そうです、ならば最初から善悪の評価はせずに殺人という行為にのみ評価ポイントを与えている可能性が高いんです。」
「その論理で言えば、誰彼構わず殺しまくる殺人鬼が一番稼ぎが良い事になるじゃない!」
ありえないわそんなの・・・とかブツブツと呟くスズに
「そんなPCを倒せばかなりの評価ポイントになると思われますから、絶えずPCに狙われるでしょう。軍や自警組織からも追われますからかなりリスクの高いプレイでしょうね」
「そんなプレイ誰がしたがるのよ?」
僕は大げさに手を振ってスズの言葉を否定する。
「いやいや、昔からある有名なプレイスタイルでローグプレイとか言うんですよ。海外のMMOには当たり前にローグプレイ用のシステムも整備されているんです。PCを殺して装備を奪う、PCの家に忍び込み全財産盗み出す。一見メチャクチャに見えますけど、海外だとリアルに周囲の現実で日常起こっている事だから無い方がおかしいらしいです」
「頭おかしいんじゃないの!そんなプレイのどこが楽しいのよ!」
憤るすずに、僕は努めて冷静にローグプレイを開設する。
「ゲームはプレイヤーの憂さ晴らしの場でもありますからね。この世界が神様のゲーム世界であるならローグプレイをするPCは一人や二人じゃ無い程にいると思います、中には徒党を組んでローグプレイの組織を作って山賊をしたりとかしますし」
「ゲームにならないんじゃないの?そんな事ばかりする人たちがいたら」
「彼らは村や町へは入れなかったり、賞金首としてPCに狙われます。ゲーム上のモンスターの扱いと何ら変わりがありません。しかし、この世界ではシステムがありませんのでPCは村や町で正体もバレずに行動出来てしまいます」
あっ・・・会話をしていて気が付いた。
「スズは盗賊を扇動していたPCの顔を見ているんですよね?」
「うん、見れば判ると思う」
僕は慌てて立ち止まり、今更ながら周囲を探る。
僕の空気が変わったのに気が付いたスズは
「ど・・どうしたの?急に」
と心配して聞いて来る。
「僕では判りませんが、周囲に怪しい気配とかこちらを探る様な視線は感じませんか?神様にお願いしてでも探ってみて下さい。お願いします」
僕の慌てた様子に、何か思う所があるのかすずは素直に周囲を探り始めた。
時折ブツブツと呟いているのは神様と対話しているのだろうか?
僕が見守る中、暫くして
「私たちが警戒してから急に遠くに離れて行く気配はあったみたい」
「そうですか・・・見張られてるみたいですね。たまに今みたいに神様にお願いして気配を探っておいて下さい」
「わ、わかった」
気配が離れて行った事に少し安堵しつつ、スズに説明をする。
「通常のMMOゲームだとシステムにローグプレイは管理されます、指名手配・出入り禁止区域など。でもこの世界では目撃者さえ居なければローグプレイがし放題なんです」
「う、うん」
「村を襲った事件でスズはPCの顔を見ました。PCが即処刑の判断を下したのは、連行の途中でスズが盗賊から逃亡してPCの顔や特徴を伝える事を恐れたからだと思います。本来これでPCのローグプレイの安全は保障されたハズでした」
「私が生き返った事が誤算?」
「そうです、たまたま通りすがりの僕が蘇生手段を持っていて村人とスズが生き返った。」
どんな偶然だよ。と思いつつも、その偶然こそがひょっとしたらこのゲームの管理システムなのかもしれないと思えた。
「私が生きているとPCの特徴が広まる可能性があるのね」
僕はゆっくり頷く。
「僕らを消せばローグプレイするPCの秘密は保てるでしょう。ですから僕らを監視し強さを確かめて、陰から機会を伺っているのではないかという考えに至ったのです」
「じゃあさっきの気配は・・・」
気配の去った方向を見据えるスズに対して注意を促す。
「これからは狙われている事を念頭に置きながら行動しないといけません、そもそも憑依100%で来られれば正面からでも勝てるのかどうか判りません・・・」
「そうなったら俺が出るまでだ」
凶悪な微笑みを浮かべながら、突然僕の胸倉を掴んでグイッと引き寄せられた。
前振りも無くいきなり憑依してくるとは・・・
今の中身は戦神様だろうけど、外側は女子高生であるすずの顔がヤンキーぽく目の前で睨んで来る。
どうやら「勝てるかどうか」が、スズの戦神様の琴線に触れたらしい。
「その時は。よ、よろしくお願いします」
カツアゲの現場みたいな構図から解放されるとウチの神様から
”精々役に立って貰いましょう、それしか取り柄が無いのですから”
と辛辣なお言葉を頂いた。
スズの神様については色々思う所がある。
僕のMMOの経験から来る経験だ。
1.男神プレイヤーなのにキャラの性別は女(しかも女子高生)
2.先行予約して予約特典の装備をちゃんと装備
3.ぶっきらぼうな口調、乱暴者キャラを演じてる?
この情報を総合すると廃人クラスの厨二ゲーマーなのではないか?という疑問が湧いてくる。
可愛らしい女の子キャラを操作してちやほやされたい姫プレイもどきなのか。
乱暴者キャラを演じてるのにマメに先行予約をして、その特典装備をちゃんと初日から装備させるというちぐはぐさ。
スズの神様の言動には今後注意して聞いておこう。
そのうちボロを出すかもしれない。
+注意+
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