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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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戦の後に

「王国軍中尉のワラビです」

交渉に来た男には何となく見覚えがあった。

「あっ、王国の嘘つき少尉」

ワラビと名乗る少尉をスズが指さして睨んでいる。
前回の交渉の時の事を覚えていたらしい。

「おやおや、心外ですね。職務に忠実なだけですよ。フッフッフッ・・・それと今は中尉です」

階級が上がったのは部下を生還させた功績なのかな?
前は味方を囮にしてまでエルザの銃の詳細を確認しに来たし、頭は切れるぽいんだよね。
僕達は白旗を掲げ単身で歩いて来た中尉とズールの大門の前で話し合いを始める事にした。
今回はスズが怒っているので交渉を任せてみる事にした。

「それで?何しに来たのよ」
「それは勿論こちらの降伏を受け入れて貰いにきました」
「何で町の女子供を殺す奴らを許さなきゃいけないのよ」
「それは国王陛下のご命令でしたので、やむにやまれず」
「ならその国王連れて来なさいよ」
「陛下ならあちらのお嬢さんの兵器で既に亡くなっております」

ワラビ中尉は興味深そうにエルザとエルザの銃に目線を送る。

「あら、それは残念ね。どんな言い訳をするのか聞きたかったのに」
「それは私も聞きたかったんですがね。経緯を知っている者は既に全員生きてはおりませんので」
「呆れた、あんた達理由も知らずに町の人を殺してたの?」
「軍とはそういう物でして」
「そんな理不尽な命令断りなさいよ!あんな子供が反乱軍な訳ないでしょう!」

スズが指さした場所には親子だろうか、母親らしき女性が子供を抱きかかえたまま刺殺されたのだろう姿が道の端に転がされていた。
最近は人を殺すって行為に感情が麻痺してしまっているスズも、子供の死体を見てスイッチが入った様だ。

「その命令を下した者の死を以て償ったとお考え頂ければ幸いかと」
「ふざけないでよ!」
「スズ、抑えて下さい。彼は交渉に来たのでこちらの苦情を聞きに来たのではありませんよ」

流石にスズをたしなめる事にした、これ以上感情的になってはは交渉にならないし。

「・・・判ったわよ、あんたに文句を言っても仕方ないわね」
「では交渉を始めてよろしいですか?」
「ええ、どんな話よ?」
「まずは残存部隊の王都への撤退をお許し願いたい」
「都合の良い話ね、その見返りは?」
「ズールの反乱認定の解除と賠償をお約束致します」
「それって誰が保証するの?」
「そ、それは元王都のアルーシャにお住いの第一王女様が・・・」
「返事も聞いていない空約束よね?」
「けれど、必ずや王女様はズールの賠償をして下さいます」
「中尉のあなたの意見を聞いてくれるの?」
「それは・・・」

ワラビ中尉はとうとう言葉に詰まってしまった。
まぁ、そうだろうな。
ワラビ中尉がアルーシャでそんな事言っても上司に簡単に突っぱねられるだろう。
そもそも現場にそんな権限も無かろうし、出まかせかな。

「また交渉決裂かしら」
「待って下さい!我々を一人残らず殺す気ですか!?」
「でしたら、撤退を許可する代わりに王国幹部の死体は全員置いて行って頂けますか?」
「なっ!?」

いつの間にかワラビ中尉の背後に金の鎧を着たジョーイさんが立っていた。

「皆さま、交渉お疲れ様です」

ジョーイさんは僕達にペコリと頭を下げるとワラビ中尉に向き直る。
そもそも僕達はジョーイさんが来るまでの間の時間潰しをしていたに過ぎない。
現在も炎の壁で王国軍を囲っているのはジョーイさんで、包囲を解除出来るのもジョーイさんだけなのだ。
もう僕達にどうこう出来る問題状況では無いのだ。

「それで、どうですか?置いて行って頂けますか?」
「そんなのは無理だ!陛下のご遺体もあるのだぞ!王都で丁重に葬儀をしなくてはならないのだ」
「おや、蘇生はしないという事ですか?」
「いや、うむ。今回の責任をお取り頂くのだからそうなるだろう」
「ウソね」

スズが間髪入れずにツッコんでいた。

「ウ、ウソではない。約束はする」
「ねぇ、ジョーイさん。コイツ約束守る気なんてサラサラ無いわよ!」
「何を言う!私はウソなど言ってないぞ」
「中尉さん、聖職者も含めた王国幹部の死体をここに持って来て下さい。話はそれからです」
「そんな!?」
「陣地に戻って相談して下さい。時間はあまりありませんよ?」
「くっ、兎に角また来ます!」

ワラビ中尉は僕達に背を向けると走って陣地に戻って行った。
中尉が戻ったのを見届けてから、さっきの言葉が気になったので聞いてみる。

「ジョーイさん、時間が無いってどういう事でしょう?」
「私達には関係が無いのですが、王都が隣国のザリアに攻められているんですよ」
「「「「ええっ!?」」」」
「彼らは守備兵もロクに置かずにこちらへ全軍でこちらへ来たのですから、陥落は時間の問題なのですけれど」
「馬鹿な国王ね、死んで良かったのよ」
「その事について幹部から聞き取りの調査をしたいのです」
「ああ、幹部の死体を要求してたのはそれでですか」
「はい。国王は清貧を旨としたかなりの人格者だと聞いてましたので、今回の経緯を調べてみようかと思います。タロウさんのお力をお借りする事になるとは思いますが」
「ええ、それぐらいは構いません」
「お手数をお掛けします」
「それより、どうやって王都が攻められてると知ったんですか?」
「ああ、王都にも斡旋所がありますので。そのネットワークですよ」
「王都の斡旋所の方はザリア軍と戦うんですか?」
「まさか!私達は基本政治や戦争にはこちらからは干渉しません。今回の件は斡旋所と私自身、そしてPCの皆さんが狙われたので仕方なくです。前者とは全く性質が異なる事象になります」
「そ、そうですか」

一騎駆けしたり林に火を点けたり、メチャメチャ楽しんでる気はするんだけどな・・・

「恐らく王城は無血開城をすると思います。抵抗しても町が壊されるだけですから」
「そうなると彼らは・・・」
「王都の軍がどこに行ったかが判ればザリアもすぐ叩きに来るでしょう」

チラリとロクな指揮官も無く、半壊している王国軍の布陣に目をやってみる。
きっと今の話を中尉が持ち込んで議論の最中なのだろう。
王の死体を置いて逃げるか、ここに留まるのか・・・

「王都に戻ってから敵に追いかけられるか、ここに留まって敵に追い詰められるか。前者なら逃げ道も沢山あるでしょうけれど、後者ならどうなる事か」
「バカな選択をして国民に手をかけたんだからその報いよ」

どうやらスズの怒りは収まっていないらしい。

「ジョーイさん、後は任せて平気ですか?」
「ええ、私がここにいれば王国軍も変な気は起こさないでしょうし」
「ですね。お願いします」

ジョーイさんに頭を下げてから皆に向き直り。

「スズとサクラは付いてきて貰っていいですか?これから町の人達を助けに行きます。スズは僕の護衛でサクラは魔法で治療の手伝いをお願いします」
「ん、判った」
「はいっ」
「ケイトとジュリアとマインは斡旋所の近くにある広場で、死体の蘇生と怪我人の治療を無料ですると触れ回って下さい」
「わかったっす」
「むむむ、私も護衛が・・・いえ、判りました」
「ああ、任せとけ」
「私は?」

エルザが僕の服の裾をクイックイッと引っ張っている。

「あー、エルザの銃を人に見られたくないからジョーイさんと居て欲しいかな」
「ぶぅーーー」
「すみませんジョーイさんお願いします」
「判りました、行ってらっしゃい」

僕は門から少し離れた場所でしゃがみ込む。

「あれっ?タロウ、広場に向かわないの?」
「まずは、この親子から蘇生しちゃいましょうか」
「あ、うん!」

まずはスズがずっと気にしていたあの親子の遺体から、リターンをかけてあげる事にした。
スズは生き返った親子にキチンと状況を説明をしてから、笑顔で手を振って別れた。
表情からしてスズの機嫌も少しは良くなったのだろう。

「じゃあ、斡旋所近くの広場に向かいましょうか」
「うん」
「はい」

広場に向かう道すがら、スズがサクラには聞こえない声でささやいた。

「タロウ・・・その、ありがと」

さて、今日は取り敢えずマナが尽きるまで頑張ってみよう。




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