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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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それぞれの神様

宿に戻ると宿屋の主人がにこやかに出迎えて来た。
町の住民の反応を見た限り、僕達は宿屋を追い出されてもおかしくは無いのではないかと思っていただけに驚きの反応だった。
しかも宿屋の主人は「頑張って下さい」などと言って豪勢な食事を出してくれている。
僕達は宿屋の前では自警団員を殺し、町の大門では王国軍の兵士を大量に殺した反逆者である。
他の住民達の様に恐れて近寄らないぐらいの反応が当然で、宿屋の主人が珍しいのではなかろうか。
不思議に思った僕は宿屋の主人に聞いてみる事にした。
すると、宿屋の主人の話では町の領主が斡旋所に目を付けていたのを住民は以前から知っていたらしい。
斡旋所は普段から上質の商品を仕入れて卸す優良な仲買業者で、そこに出入りする従業員と思われる者達は皆一様に若く美しかった。
そんな事が住人の間で噂して広まり、斡旋所は町でも有名になった。
町の住人の注目を集める事となった結果、斡旋所の噂はとうとう町の領主の耳に入ってしまった。
税金の臨時徴収や賄賂の要求。領主は斡旋所に無理難題を押し付けて斡旋所を取り上げようとしたけれど、斡旋所はそれらをキチンと払ってみせた。
金銭的な無理難題では埒が明かない、町の領主も段々と焦れて来たのだろう。
今度は実力行使に出る事にしたらしい、町の領主の手駒である自警団が差し向けられた。
力ずくで斡旋所を接収をして領主の物とし、若く美しいと噂の従業員達は適当な罪を被せて捕える事に決めたのだ。
この町で領主に目を付けられれば生きて行けない。
住人にしてみれば過去に幾度となく目にした光景だったのだろう。
この世界では町に裁判制度は無く、町の領主が裁くのが一般的。それこそ証拠など無くとも領主の一言で簡単に死刑に出来てしまう。
領主が死刑をチラつかせれば斡旋所は折れ、若く美しい従業員達は領主の奴隷にでもさせられる。町の誰もがそう思っていたらしい。
町の住民達も宿屋の主人も斡旋所を取り囲む自警団を見て、斡旋所の従業員達の行く末を憐れんでいた。
ところが、結果は違っていた。
領主はいつもの手順で自警団を送り込み、後は報告を待つだけだった。
ところが報告は・・・団長以外全員死亡してしまったとの事。
驚いた事に、斡旋所の従業員が町の領主の手先である自警団を壊滅させてしまったのだ。
これに腹を立てたのは町の領主。
罪人の体を使って直ちに自警団を生き返らせ、更なる数をけしかけた。
だが、それも撃退されてしまった・・・
自警団では敵わないとなると、もっと強い力をぶつけるしか無い。
今度は国の力を呼び寄せた。
普段せっせと賄賂でも送っているのだろうか、500名もの兵士を送って貰い斡旋所の接収と僕達の捕縛に軍が動き出した。
早々に町の唯一の出入り口である門を塞がれてしまった。逃げ道はもう無い。
門の外に軍の兵士500人が整列し、町に雪崩れ込む準備をしている。
今度こそ斡旋所も従業員もおしまいだ。
町の住人も宿屋の主人もそう思ったらしい。
しかし、それを堂々と迎え撃ち遁走させてしまった。
ここまで来ると住民はもう拍手喝采、斡旋所の従業員達の行動を口々に褒めたたえたとの事だ。
実際には巻き添えが怖くて近寄らないが、皆が僕達を応援しているとの事らしい。
にわかには信じがたいが、町が圧政に苦しんでいたのなら理解も出来る。
食後も熱く僕達の行動を語っていた宿屋の主人には、お礼を言い下がって貰った。
僕達は今日の反省と今後の事を話し合う事にした。
「今日の戦闘について何か意見ありますか?」
「私は特に無いわね」
「私も無いな」
「ないよー」
スズ・マイン・エルザは特に意見は無いらしい、戦闘中に困った事態も無かったのだろう。
「タロウ殿、防衛戦では槍が必須だと痛感しました。次も防衛戦になるのなら自分も槍を用意しますが?」
「あ、それ私もっす。防衛戦でナイフじゃ間合いが近すぎるから、槍の方がいいんすよね。ミッションに参加するなら買うんすけど」
ジュリアとケイトは借り物の薙刀で戦闘していたから、間合いに近寄らせない武器が必要と感じるのは当然だろう。
二人が気にしているのは僕達がミッションに参加せずに町を脱出した場合だろう。
移動に槍を持っていたら邪魔になる、防衛戦をしないのなら本来の自分の武器を持って行けばいい。
買ってみてもミッションに参加しないのであれば無駄になるからだ。
「二人共ミッションをどうするかの方を、先に決めないと答えが出ませんね」
僕は一度皆を見回してから皆に問いかけた。
「皆さんには次のミッションへ参加するかどうかの意見を聞きたいのですが、一人ずつお願いします」
僕の隣に座っていたスズの顔を見る。
「えっ!?私から?」
「はい、お願いします」
「うーん。私としてはあんまりやりたくは無いんだけど、神様がやる気になってるから参加に一票かな」
「神様は何と?」
「”絶対参加しろ”って」
スズの神様なら数に劣る側の立場のミッションは理想的な戦闘のかもしれない、参加しない理由が見当たらないって感じなのかな。
「なるほど・・・次、マインはどうですか?」
スズの隣に座っているマインにも意見を求める。
「私も当然参加だ。ここで稼げば私も上位は確定しそうだしな」
「マインの神様の意見は?」
「うちも”絶対参加しろ”だってさ、参加に一票だ」
マインの神様はポイントの為には多少の無茶はさせるタイプっぽいんだよなぁ、前に抜け駆けして敵を追ったりしてたし。
「わかりました。次、エルザはどうですか?」
「私は参加がいいなぁー、バンバン撃てる機会なんてそう無いもん」
「神様は何て言ってます?」
「エルザちゃんの意見に賛成よ!」
いきなり活舌の良くなったエルザに皆が驚いた。
「も、もしかして。エルザの神様ですか?」
「やぁねぇ、そうに決まってるじゃないの。お礼もあれからかなり貯まってるから前より凄いお礼してあ・げ・る。うふふ、期待してて頂戴ね」
そう言えば、エルザに憑依して僕にベロチューをお礼にしてきたんだっけこの人・・・人じゃない、神様だ。
「いや、エルザが怒る様な事は止めてあげて下さいね」
また暫くの間、避けられても困るのだけど・・・。
「別にエルザは怒ってないわよ。前のも照れてただけよ?エルザちゃんの嫌がる事を私がする訳ないでしょ」
「わかりました。エルザも参加に一票ですね」
「よろしくぅ」
中身神様のエルザが僕にヒラヒラと手を振って答えた。
「それじゃ、今度はジュリアの意見はどうですか?」
僕の向かいに座るジュリアに意見を聞いてみる。
「タロウ殿の決定に賛成します」
「えっと、ジュリアの神様は何て言ってます?」
「勿論、賛成です」
そう言えば、ジュリアの神様がどんな神様か知らないな。
即座にジュリアが返事をしたって事は神様もモニターしている証拠なのだろう。
神様がモニターしている目の前で嘘は付けないだろうし、参加の意思は神様の意見かな。
「ちなみにジュリアの本音はどちらが良いのですか?」
「そ、それは。タロウ殿に私の活躍を披露出来る絶好の機会なので、参加してみたいとは思いますが・・・」
「わかりました。ケイトはどうですか?」
ジュリアの隣に座るケイトに聞いてみた。
「私はどっちでもいいっす。ミッションの内容次第っすかね」
「内容ですか・・・」
そう言えばミッションの内容は聞いて無かった。
まさか「敵を全部ブチ殺せ」なんて訳も無さそうだし、敵の大将を討ち取るとかかな?
ウチには銃を持ったエルザがいるし、その内容ならかなり簡単に出来そうだ。
「達成出来そうな内容なら参加、出来なそうなら不参加って感じっすかね」
「ケイトの神様は何て言ってます?」
「私のプレイヤーは”参加したら?”って程度っすね」
そうだったケイトは神様ではなくプレイヤーって呼んでるんだっけ。
ケイトの神様も良く知らないな、ついでだから聞いてみようか。
「ケイトのプレイヤーはどんな方なんですか?」
「合理的って感じっすかね?私と軽い憑依で頭の中をいつも繋げてるんで、いっつも頭の中で話し合ってる感じっすね」
ああ、ケイトの場合は別に神様を敬って無いのかな、無信心ぽいし。対等に会話して意見ぶつけ合って方針を決めてるんだろうな。
普段おしゃべりなケイトが黙ってたらプレイヤーと話をしているのかも。
「ケイトは一応中立にしておきましょうか。それじゃあサクラの意見を聞かせて下さい」
ケイトの隣に座るサクラに意見を聞いた。
「私自身は自ら参加をしたいとは思っていないのですが・・・」
「では不参加に一票?」
「いっ、いえ!天使様が”積極的に参加する様に”って仰ってます。私のこの性格を変える為にも”頑張りなさい”って」
サクラの神様の言い分はサクラの消極的な性格は戦闘に参加すれば治る、と言って言いくるめているみたいにしか聞こえないな・・・
引っ込み思案で戦闘が好きでは無い、よくそんな娘をキャラクターに選んだもんだ。
神様には妄信的みたいだし、扱いやすいのかな?
僧侶スキルの回復を持ってるみたいだから、職は巫女なのだろう。巫女コスプレもしてる事だし。
まぁ、アーチェリーの腕はかなりの物だったし、一度サクラの神様ともじっくり話してみたいものだ。
一同を見回して確認したが、全員に意見を聞き終わった様だ。
これで意見は出揃った。
後にしこりを残さない為にも、手間をかけて全員の意見は聞いておかなくてはいけない。
「一応、賛成多数って事でしたので参加をする事にしましょう」
特に強固な反対意見も無かったので皆が頷く。
「明日、斡旋所に行ってミッションの内容や目的を聞きましょう。その際に戦闘場所や必要装備、フォーメーションの確認。その後は銃弾・矢弾・槍の補充や買い物に行きます」
「わかったわ」
「了解した」
「わかった」
「はーい」
「わかったっす」
「わかりました」
「では明日の朝、ここに集合でお願いします」
こうして強制ミッションの長い1日は終わった。
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