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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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錬金術

ボートハウスに着いたので中に入ってみる。
石積みの壁はそれなりに頑丈そうで、少々の熱では火事にはなりそうもない。
ボートが二艘浮かべられていたが、特に作業の邪魔になる事も無さそうだ。
広さも申し分が無い上に、庭みたいなスペースもある。
「これなら十分じゃないですか?」
「うん、大丈夫ー。設計図と錬成式を書く机もあるし」
僕の感想にエルザも同意を示す。
「じゃあ、ここを使う事にしましょう」
とは言え、ボートハウスには机と椅子のセットと桶が何個かある程度。
錬金術で色々錬成するにしても、何が必要なのかサッパリだ。
「道具は何が必要なんですか?」
「道具は作らないとダメかなぁー?でも、ここじゃ材料が採れないから。まずは材料集めに少し上流に色々と採りに行くー」
「道具の材料をですか?」
「うん、みんなで」
「判りました。皆さんの武器も作ってくれるみたいなので、皆さんも同行お願いします」
「わかったっす」「いいよ」「構わない」「了解だ」
皆が口々に了解した旨の返事を確認できた。
「では、移動しましょう」
僕達は町を出て川沿いに少し歩くとエルザは立ち止まって、懐から紙を取り出し地面に並べていく。
びっしりと文字で埋まったそれは錬成陣の様だ。
「ここで試してみるね」
腰から杖を抜いて川に向かって構えると、錬成窯を作り出し前に押し出す。
魔法で作り出された錬成窯は水上で停止し、水の中から黒い物が次々に吸い込まれていった。
「なんすか、あれ?」
ケイトが僕に聞いて来たが、僕も良くは知らない。
「たぶん・・・砂鉄じゃないですかね」
やがて、少し膨らんだ錬成釜がこちらに来たと思ったら
ドスン!
と大きな音を立てて黒い塊になって窯の中から落ちて来た。
色は黒いが四角くて長い。
形は金の延べ棒に似ているらしい事に気が付いた。
「エルザ、これは鉄の塊ですか?」
「うん、酸化鉄も混じってるけどねー」
「形も作れるんですね」
「うん。これは実験中だけど、錬成陣に大きさや形を指定すればどうなるかを試してみたの。ちゃんと設計図を作って錬成陣に組み込めば行けそうー」
「おお、それは凄い。型がいらなくなりますね」
「複雑なのはまたちゃんと試してみないと判らないけど、これどんどん作るから皆で運んでねー」
「判りました」
僕達は顔を見合わせて頷いておいた。
ケイトが鉄の延べ棒に近寄って行った、どうやら試しに持ち上げてみるみたいだ。
両手で持ち上げて上下に動かし、重さを測っていた。
「これ、大体5キロぐらはありそうっすねぇ」
「結構重そうですね・・・」
エルザはもう次の錬成釜を作り出して次の鉄塊を作る作業に入っていた。量産体制なのだろう。
少しずつ場所を移動しながらエルザは12本の鉄塊の延べ棒を作り上げた。
「これ以上は無理きつそうですね」
「判ったー」
エルザは地面に置いた錬成陣の紙の一部を取り換えると、また錬成を始める。
ズドム!
グレーのやたらと重そうなのが窯から落ちて来た。
「エルザ、これは?」
「鉛だよー、後で誰か回収してきてね。じゃあ戻ろー」
一人10キロの鉄塊をボートハウスにまで持って行くのはなかなかきつかった。
そう思ったのは僕だけなのかもしれないけれど・・・何とか落とさずに辿り着いた。
「ジュリアの斧、ちょっと貸してー。型を取るから」
10キロの鉄塊を並べた所でエルザは早速始めるらしい。
「どうぞ」
ジュリアの手斧を受け取ると、作業台の上で紙の上に斧の型を取っていった。
「ありがと」
礼を言ってジュリアに斧を返すと先程も使った錬成陣の紙を並べ出し、今取ったばかりの型紙もそこに並べていく。
「多分これでいけるかなー」
ぶつぶつと言いながら、運河からの引き込みで作ったボートを係留してある水面の上に錬成釜を作り出した。
そこに鉄塊が一つ吸い込まれてゆき、錬成釜が強い光を放ちだした。
「はわわわ、大丈夫なんすか?」
「一応、距離を取りましょう!」
皆が慌てて物陰に隠れると、錬成釜から真っ赤に焼けた物が落ちて来て水の中に落ちた。
バシュッ、ボコボコボコボコ・・・
「五分ぐらいすれば冷えると思うから、それから引き上げてみてー」
「今のは何をしたんだ?」
マインがエルザに行動の説明を求めた。
「んーとね。さっきの砂鉄から不純物を取り除いて、限りなく純粋な鉄に近づけて斧の形に成型したの。でも、溶けた純鉄を成型しても地面に置いたら形が崩れちゃうでしょー?だから水で冷やして固めたの」
「水の中に純鉄の斧が沈んでるのか?」
「そうだよー」
きっとマインも純鉄なんて理論上の物って程度の認識だろう。
魔法があるからこの世界では作れたが、地球上では作れなかったシロモノだ。
冷えるのを十分に待ってから、ジュリアが下着姿になって取りに潜った。
紐パンに布をブラ代わりにした格好がゴムとワイヤーの無いこの世界の女性の下着姿なのだが、妙にいやらしく見えてしまう。
ただでさえムチムチの体なのだ、気になって仕方が無い。
ドスン
水中から鉄とは思えないガンメタリックカラーの斧が地面に放り出された後、ジュリアが水から上がって来て僕に聞いた。
「これは、でかくないですか?」
「かなりの大きさになってますね」
ジュリアの荷物の斧よりも倍以上にでかい、形は全くおんなじなのだけれど。
「そうかー、形は指定出来たけど大きさかぁ。不純物が抜ければそこそこ縮むと思ったのに・・・材料を半分にすれば大きさも半分になるかなー?」
エルザは独り言の様にブツブツと言いながら、錬成式を書きこんだ紙に何やら書き込んでいく。
「それじゃ、もっかいいくよー」
斧の上に錬成窯を出現させてでかくなった斧を吸い込むと、また水面に窯を移動させて暫く錬成をすると。
バシュッ、バシュッ、ボコボコボコボコ・・・
窯が消えて、二つの真っ赤に焼けた物体が水中に落ちて行った。
暫く待ってから、またジュリアが潜って取って来た。
今度は二本、実物より若干大きい程度の様だ。
そしてその二本はガンメタリックカラー、少々派手になってしまった気はする。
「ほほう、これが純鉄の輝きですか。オリハルコンの武器にでも進化した感じです」
ゲーム脳のジュリアにとっては純鉄の特性はオリハルコンと=イコールなのかもしれない。
「その重さで構わないなら、斧は完成ねー」
「私はこれで構いません」
「じゃあ次、スズの槍かなー?」
エルザはスズの荷物の薙刀もどきをチラリと見る。
「違うわよ、あれは槍じゃなくて薙刀。まぁ型はあれで取ってくれればいいけど・・・中は空洞に出来ない?」
ジュリアの斧の重さが気になったのだろう、スズが注文をつける。
「ううーーん、イメージするの大変そう。まぁ、重すぎるよねぇ・・・判ったー、ちょっとやってみるからそれ貸して」
柄が木で出来ているのが普通だろう、そこが密度の高い鉄に変われば振り回すのはキツそうだ。
紙に縮尺した型を取って、空洞の柄の図も書き込んでいく。
暫くして、術式が出来上がったのだろう。
「それじゃやってみるねー」
錬成窯が鉄塊から一つを吸い込むと、水面で止まる。
じっくりと時間をかけて窯が消えた。
バシュッ、バシュッ、ボコボコボコボコ・・・
ん?
何か短かった様な。
冷えるのを待ってから、今度はスズが下着姿になって飛び込む。
どうやら自分の得物は自分で、みたいな感じなのかな。
スズが鉄の塊と半分の大きさの薙刀を持って、濡れて張り付いた下着姿で上がって来た。
僕の目がチラチラと濡れた下着姿のスズを盗み見てしまう。
「随分ちっさいっすね」
ケイトが元の薙刀もどきよりも小さかった事に、ついツッこんでいた。
薙刀を受け取ったエルザは薙刀の柄やらなにやらを眺めまわし、鉄塊の重さを確かめると
「柄の厚みをもう少し削って材料を倍に・・・・」
何やらブツブツ言いながら、術式に何やら書き加えていく。
暫くして、錬成をやり直すと大きさも元の薙刀と同じ大きさのガンメタリックな薙刀が完成した。
形状の固定や質量の調整に慣れたのか、マインの剣と僕のナイフの作成はもう失敗しなかった。
ケイトの武器は投擲しない二本分だけ作って貰っていた。
投げ用ナイフは消耗品だから使い捨てするには勿体ない武器だしね。
武器が完成して色々と錬成にも慣れたのだろう、ようやく本題にとりかかる事になった。
エルザが目的の砲の設計に入ったので僕も手伝う。
その間にスズをこの場に残して川沿いに置いてきた、鉛の延べ棒の回収をお願いする。
たぶん、鉛は砲の弾に使うつもりなのだろう。
純鉄ならば強度には問題は無い、暴発して手が吹き飛ぶ事故も無さそうだ。
エルザのイメージは対戦車ライフルらしいが、そこまでは無理だろう。
あれからずっと考えていたのだろう、ライフリングのある銃身の設計図は出来ていた。
しかし、肝心の砲の弾込めとそこを塞ぐ機構がまだだった。
「これは、火薬の爆発とかは術法を小さくした魔法爆発にするんですよね?」
「うん。込めた弾の後ろに小さな錬成釜を作り出して爆発を起こす仕組みー」
「なら銃身の横がスライドして開いて、弾を込めたら閉じるぐらいが一番良さそうですが・・・仕組みが複雑になりますよね」
銃身も爆発の仕組みも別々に作ればいいのだがそれをジョイントして爆発が漏れない仕組みが難しいな・・・精密な部品が作れないだけに。
何度も設計をやり直し、ようやく銃身に弾を込めて銃床に差し込んで回せば隙間が無くなり抜けない仕組みを考え出した。
そこからは、銃身と薬室を別々に錬成してピッタリ嵌る物が出来るまで、素材の量を調整して大きさを変えての錬成だ。
銃身を削ったり銃床を削ったりは出来ない、そもそも純鉄を削れる道具なんてあるのか?
スズ達が買ってきてくれたお昼を食べてからも黙々と作業を続けた。
錬成して潜って取って来て合わなければまた数値を変えて錬成し、また潜って取って来る。
そんな作業を繰り返して、日が暮れかかる頃にようやく完成した。
弾はドングリ型の下に薬きょうの底みたいな部分を付けて後込めをした時に中にすっぽ抜けない様にしてみた。
薬莢は無いが、薬莢付きの弾丸みたいに見える弾だ。
銃身を捻って外し弾を込め、再び銃身を薬室に填めて90度捻る。
これで密閉は完了したハズだ、暴発は無い。
銃床の握りの部分に小爆発の術式を書き込んである、後はエルザが小爆発の術式を起動すればいける。
エルザは銃を川に向かって構え、マナを込める。
パァァァン
弾が真っ直ぐに飛んで行ったのが判った。思っていたより精度は良さそうだ。
「どうですかエルザ?撃ってみた感じは」
エルザは銃を抱えて「うーん」と唸り。
「トリガーが無いのは別にいいんだけどー、銃座と銃床が欲しいかなぁ。構えにくいから狙いが付けられないよー」
「反動が少なかったので銃床を付けても肩が抜けたりもしないでしょう、バランスは良いので銃眼を付けてしまっても良さそうですね」
「小爆発の術式ももっとゆっくり燃焼する化学反応に変えれば、飛距離ももっと伸びるかもー」
「まぁ、奇跡的なバランスで真っ直ぐに飛んでる気もしますから、別の銃を作る時にでも試して下さい。銃座はすぐに作れるとして、銃床とグリップは欲しいですね。設計して作りますか」
「弾も沢山つくろー」
それからは錬成したパーツを取りつけて試射をしたり、錬成する物は普通の鉄製の製品を設計しては錬成して作り出して行った。
エルザの試射をそばで見ていたマインも流石に呆れている様だ。
「おいおい。銃なんて作れちまうとは、アルケミストってのは反則じゃないのか?」
「まぁ、これ以上の物は作らない方が良いでしょうね。運営から抹消されちゃいますよ?」
「えーー、バズーカみたいなのも作りたかったのにー」
「この銃ですらきっとルールギリギリだと思いますし、やめた方がいいですよ?」
「ううーー」
エルザは不満そうにしていたが、これ以上は世界のバランスが壊れるのは確実だ。
何事もやりすぎはよくない。
その後は残りの資材でみんなの防具を作り、弾を大量に作っていたら外はすっかり真っ暗になっていた。
お腹も減ったので、借りたボートハウスの料金を支払いに斡旋所に戻る事にした。

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