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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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♰赤い閃光♰の2

向かった場所が変更に
斡旋所の中から光が漏れているのを確認して施錠された入口のドアをノックする。
コンコン
「夜分すみません、ジョーイさんいらっしゃいますか?」
暫くすると中から「はーい」と返事があった。
ガチャ・・・キィー
「はい、どちら様でしょう・・・っとタロウさんでしたか早速のお越しとは」
「今、大丈夫ですか?」
「ええ、どうぞお話なら中でお伺い致します」
「すみません、では失礼致します」
私が中に入るとジョーイは外をゆっくりと見回してから扉を閉め、再び施錠をした。
「お一人でいらしたんですよね?」
「ええ、そうですが?」
「判りました、奥のカウンターへどうぞ」
私達は奥のカウンターへと移動する。
「コーヒーでもお飲みになりますか?」
「えっ!よろしいんですか?」
「はい、勤務外ですから」
いえいえ、向こうの世界の物を持ち込んでいるのはマズいのではないかと言う事で・・・
「少々お待ち下さい」
と言ってジョーイが扉の奥へ消えていきました。もしかしたらあの扉の奥にはPCやらこの世界には本来あってはいけない物が並んでいるのかもしれません。
数分後、コーヒーの入ったマグカップを二つ持ってジョーイは戻って来た。
「どうぞ」
自分に一つ、私に一つとマグカップを置いてコーヒーを勧める。
「ありがとうございます。まさか、こちらの世界でコーヒーが飲めるとは思いませんでしたよ」
「私は勤務外は自由にさせて貰っていますので」
サンガの町の斡旋所の職員は交代制かもしれませんが、24時間斡旋所を開けていました。
それがこの町の斡旋所は夜には閉まるみたいですし、大きな町の勤務の方が偉いんですかね?
完全なワンマンオペレーションなのでしょうか。
お湯も薪から沸かしたのでは無いのでしょう、何か機器を使ったみたいに早かったですし・・・
熱いコーヒーを啜りながらも、数々の疑問が頭の中を渦巻いていきます。
「タロウさんは今、PCの方が操作しているのですか?」
ジョーイの言葉に一瞬ギクリとしましたが、別に隠す必要も無い事に思い至り。
「はい、タロウの中の人こと”✝赤い閃光✝”です」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・タロウさんのお姿なので便宜上タロウさんと呼ばせて戴きますね」
「ええ、結構です」
私は開き直って口調を戻してみますが、タロウの声なのであまり変化がありません。
「お一人でわざわざいらしたのであれば、色々と聞きたい事があるのでしょう。勤務外の私で良ければお伺いしますよ」
「宜しいんですか?」
「ええ、何せ時間外ですから。勤務中の規則には縛られません」
ジョーイは私を見てニヤリと笑って見せた。
「ではジョーイ、あなたも神の一人なのですか?」
「運営はみんな神の降臨体か憑依体ですね。タロウさんの言う中の人は全スタッフが神ですよ、こちらの人に憑依するのが降臨体、地球からコピーして連れて来た人間に憑依するのが憑依体です。ちなみに私は憑依体を使っています」
ああ、なるほど。運営は全員中身は神なのですね。
「斡旋所はお一人で運営しているのですか?」
「勤務の時は交代で出ていますね、キャラクターと私と中身だけ入れ替わって」
「今日閉めているのはたまたまですか?」
「いえ、通達で回って来たんですよ。夜間は戸締りをして営業するようにと」
「何か問題でもあったのですか?」
「判りません。その様な通知が出ているとしか聞いてませんし、理由までは書いてありませんから」
「そうですか・・・まぁ、今はいいです。それよりも、運営としてはPK集団に対しては何か対策をするつもりはあるのでしょうか?」
「タロウさんの言うPK集団を私達の間では”ローグ”と呼んでいます。本来ならば黙認する予定でしたけれども、彼らはこちらの世界の住人を殺し過ぎでいます。私達運営も、こちらの世界の住人をPCが殺す事を良しとはしていません。彼らが住人を殺せば自警団や軍が動くハズなのですが、こちらの世界の人間の手には余る様です。そこで我々はローグに関する依頼を集団で受けた時の相互補完ポイント高めました。これはじきにアナウンスが各プレイヤーにあると思いますが、個人での活動よりも集団での活動をPCに促す事効果があると思われます。それによってローグに襲われても死ににくい集団も現れるでしょう、タロウさん達の様に」
「ランキングの発表である程度は理解していましたが、それでもかなり消極的ですね。ローグに襲われないとソロ活動が危険だとPCは気付かないのではありませんか?」
「私達にそこまで干渉するつもりはありません、ローグもまたプレイヤーです。PCを襲うのもプレイヤーの権利ですから。ですのでPTポイントや斡旋でお助けする方針になったのです」
タロウの稼いだポイントを周りの者も大量に取得していた理由はそれですか・・・
ガチャガチャガチャ・・・・
不意に斡旋所の入口のドアの金具が音を立てました。
何事かと思って振り返ると
ドンドンドンッ!
ドアがかなり強い力でノックされたので、何事かとジョーイがカウンターから立ち上がりました。
「おい、ここを開けろ!開けねえとぶち破るぞ!」
外からの大声にジョーイは落ち着いた様子で私に告げます。
「建物に魔法が掛かっているから平気ですよ、けれど何の用でしょうか?」
ジョーイがドアの所まで行き、来訪者と会話を始めました。
「本日の営業は終了しております、何か御用ですか?」
「そこにタロウって男がいるだろう、扉をぶち壊されたくなけりゃそいつを引き渡せ!」
「・・・・こちらにはそんな人来てはおりませんけれども」
「うるせぇ!宿から出てここに入るのを見てるんだ。嘘つくんじゃねぇ!」
困りましたね、宿に見張りが付いてましたか。
「やれやれですね。タロウさんの後に人の気配があったと思いましたが、彼らでしたか。尾行してたんですね」
ジョーイは何故か嬉しそうな顔でカウンターの奥へと引っ込みました。
ドォン!ドォン!
外の連中はどうやらドアに体当たりをしているらしい。
「引き渡さないってんなら火を点けるぞ!オラ開けろ!」
魔法が掛かっているのなら大丈夫なのでしょう、けれども居座られると面倒ですね。朝になれば宿にタロウが居ない事に気が付いて誰かが来るでしょうけれども・・・
私がそう悩んでいると、奥からジョーイが何やらゴテゴテとした装備を身に着けて出てきました。
「どうしたのですか?その恰好は」
「タロウさんに感謝しないといけませんね、これを使う機会を与えてくれるとは。」
大きな手甲みたいなグローブをガシガシと両側から胸の前で打ち付けて見せる。
「これは運営の護身・仲裁・排除・滅殺を行う為の装備です。今回は脚と胴はお留守番してます、オーバーキルになりますからね」
ジョーイはそう言ってニヤリと笑うと、ドアの前に立ちます。
「今から開けますよ、さがって下さい」
そう私に言ってドアから私を遠ざかるのを確認しました。
ジョーイが鍵をはずし引き戸を開けた途端、中に飛び込もうとする人影が見えました。
シュドゴッ!
ジョーイは人影に右フックを一閃、人影は錐揉みをしながら外へと吐き出されます。
「私達もゲームが好きだからこそ運営をやっているのですが、たまに自らも参加をしてみたくなるのですよ」
ドアを潜り外に出たジョーイに槍を二人が突き出してきますが、ジョーイは避けようともしません。
ガガッ・・・バキボキッ
槍はジョーイの体に刺さらずに止まり、ジョーイの打ち下ろしのハンマーナックルで二本の槍は両方共へし折れました。
何かした様にも見えませんでしたね。ジョーイの体が単に固くなって刺さらなかったみたいな・・・
ジョーイは槍を捨てて腰に手を伸ばす男の側頭部に右フック、一瞬茫然とした男の懐に飛び込み顎にアッパーカット。
グボッ・・・バキャッ
どちらも骨が砕けたのは確実でしょう、その場に倒れ込みます。
あっ言う間に三人がやられたのを見て最後の一人が逃げ出しました。
手持ちの武器防具を投げ捨てて斡旋所に背を向けて一目散に逃げて行きます。
これは潔い、こうなっては追いつかない。そう思った瞬間にジョーイが走り出しました、一歩一歩が足元をえぐりながら3メートル程飛ぶ程の途轍もないパワーです。
ドッドッドッドッ・・・ドンッ
手ぶらで逃げる賊の前に回り込んだジョーイはボクサースタイルに構え直し、ジャブを鼻先に当てました。
逃げようとした一歩をそのジャブで防がれてしまったのか、次々に叩き込まれるボディーブロー・左フック・右アッパーなどを全て食らいその場に倒れます。
ジョーイはその倒れた男と最初に吹っ飛ばした男をズルズルと引きずって来ると
「どれも生きていますが、私が止めを刺しても仕方がありません。タロウさんに差し上げますよ」
と言って斡旋所の前にポイッと投げ出すのです。
「逃がしても構いませんが、止めを刺して殺してからにして下さいね」
なるほど、逃がすなら一度殺してからリターンで生き返らせてからにしろと。
「何か違うんですか?」
「ポイントになりますよ、斡旋所を襲った賊を退治する緊急依頼として」
「なるほど、それは有難いですね」
私は腰のククリナイフを鞘から引き抜いて、賊の心臓に素早く突き立てていきます。
タロウの本能としての感覚でしょうか、ナイフを突き立てるごとに心がざわつきます。
全員にナイフを突き立てた所でジョーイに聞いてみました。
「ちなみに蘇生してもう一度殺すとまたポイントは入りますか?」
「流石に一日は開けないとダメですね。蘇生のポイントは入りますけれど」
その言葉を聞いた私は、私は一体ずつリターンをかけて瀕死まで蘇生させてから再びナイフを突き立てる作業をしておきます。ポイントが入るのならムダには出来ません。
「死体はどうしますか?中に入れますか?」
私が作業を終えて、死体の処分方法をジョーイ聞いてみますが。
「まさか!止めて下さい、所内が汚れます。掃除、大変なんですよ」
「では、町の外にでも捨てますか?」
「いえ、店の入り口の横に並べておいて下さい。自警団が回収して焼却してくれますので」
何だか燃えるゴミをゴミの日の朝に軒先に出している気分ですね。
私は死体を入口の横に並べ終えてようやく一息つきました。
「コーヒーを入れ直しますよ、中に入って下さい」
私達は入口を再び施錠してカウンターへと戻って行きます。
10分程すると装備を外し、先程とは違う服装でマグカップを二つ持ったジョーイが戻って来た。
服は返り血で血まみれでしたから、私服に着替えたのでしょう。
「さっきの装備は全身あるのですか?」
私はコーヒーをすすりながらそんな事を聞いてみる。
「頭・腕・胴・腰・脚・足のセットでゴールドクロスと呼ばれています。星座の名前が付いていますが、由来をお知りになりたいですか?」
「いいえ結構ですw」
何の気なしに聞いて良い話では無さそうなので、止めておきましょう。
「槍が刺さらなかったのは何か特殊な効果でもあるのですか?」
「あれは防御ブーストの効果を試しておきたくて、ワザと受けてみました」
「防御ブースト?」
「運営が何らかの事故や事件に巻き込まれても切り抜けられる様に、斡旋所の周囲では運営スタッフには身体防御の魔法が掛かるのです。入口のドアと同じ効果だと思って下さい」
「トラブルも多そうですしね」
「ええ、いきなりPCに斬りかかられても平気な硬さにはなっていますよ。試す機会が無かったので実験してみましたが」
ジョーイは引き出しから取り出した用紙に何やら書き込んでから私に渡す。
「先程の依頼の契約書になります。サインだけして頂ければ結構です」
「さっきの賊はこちらの世界の人ですよね?やっぱりポイントは低いんのではありませんか?」
「条件によりますね。依頼があって討伐や殲滅の対象であればPCを殺害したのと同等ぐらいのポイントにはなりますよ・・・・おっと今のは内緒にしておいて下さいね」
わざとらしいジョーイのやりとりに感謝をしつつ、書類にサインを済ませました。
「判りました、ありがとうございます」
「因みに我々運営も、PKをシステムとして認めていますが歓迎はしていません。大会とは言えゲームを楽しんで貰いたいのです、初心者や勝ち負けに拘らない人にも楽しめる世界を作りたいのですよ」
それは本心からの言葉なのでしょう、ジョーイの笑顔からも伝わってきます。
こうして改めて見る笑顔のジョーイも神の憑依体に選ばれるだけあって美しいですね、タロウの感性で見ているとムラムラしてきます。
そういえば、私服に着替えた際に髪型も変えて来たようですね。ロングの髪をツインテールに結わえ、かなり薄手の素材のピンクのワンピースが少女っぽさを演出していてます。
これはワザとなのでしょうか・・・薄手のワンピースから胸の先が透けて見えます。タロウの感性を通して見ているので、目線は胸の先に釘付けです。
ジョーイは私の熱っぽい視線に気が付いたのか、スッと私の手を取り握りしめました。
「私は男神なのですが、憑依体には女性を選びました。女性になって女性というものを存分に体験したかったからです。念願の女体化を果たした私は、化粧やオシャレも上手くなりました。けれど、それでは全然足りませんでした・・・・」
ジョーイは私の手を握ったまま暫く俯いて考え込んでいましたが、意を決したのか顔を上げます。
「今、奥の風呂場にお湯を溜めています。宜しければそちらで、私に女性としての喜びを体験をさせて戴けませんか?」
タロウの体が思わずゴクリと喉を鳴らします。
その気持ちは理解できます、女神でありながら男のタロウに憑依して女性に色々した事はこのゲームで一番の体験でしたから・・・
これは同僚の神などには頼めませんね、一人でモンモンとしていたに違いありません。
「そう言う事でしたら。お任せ下さい」
私は慈愛の籠った笑顔で返事をすると、ジョーイの手を握り返してあげました。
「おお、ありがとうございます」
私は女体化願望の男神と共に風呂場に向かいました。
迷える女体化男神を、私の力で救ってみせましょう!


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