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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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ズール斡旋所

僕らが川沿いを歩いて町に到着した頃、辺りはすっかり暗くなっていた。
昼間の記憶を頼りに斡旋所へと辿り着く。
「あ、お帰りなさい。どうでしたか?」
僕らが斡旋所の扉を潜ると受付の女性が出迎えてくれた。
「只今戻りました、依頼については口頭での報告でかまいませんか?」
「ええ、大丈夫です。報告はタロウさんがなさいますか?」
「はい、そのつもりです」
「判りました。それではカウンターで報告をお伺いしますのでこちらへどうぞ」
僕は対面式のカウンターに案内され、僕の口頭での報告を受付の女性が報告書に記入していった。
報告は、ここを出発した所から始まり。
グラン教の寺院へと到着したが、寺院の者は全て殺されていた為に寺院内部には死体しか無かった事。
僕達は寺院を襲った者達を探したけれども既に逃走した後であった事。
死体を全て蘇生してきた事。
最近僧侶となった者が一人だけ賊に連れ去られた事。
賊が大量の死体を持ち込み、その蘇生をさせていたとの事。
サンガの街から賊の死体が全て持ち去られていた事。
恐らくそれらが持ち込まれて蘇生を強要させられたとの推察も交えて、受付の女性に報告をした。
「非常に分かり易い報告、有り難うございました」
「明日にでも寺院に人をやって、連れ去られた人の話は聞いて下さい。・・・それと、寺院にはこちらの依頼を受けて寺院にいたPCはいましたか?」
「ええ・・・一人行っていましたが、もしかして?」
「はい、恐らく連れ去られたのはPCではないかと思います」
「ハァ、そうでしたか・・・。寺院で薬を作る生産系の依頼を受けていた者がいたと思います」
「その人は治療魔法や蘇生魔法が使えますか?」
受付の女性は心当たりがあるのか、手を頭に当てて暫く考えていたが。
「はい、どちらも出来るハズです。失敗の頻度が高いのでスキルレベルはまだまだですが・・・」
と言って、僕の質問にキチンとした答えを返してきた。
おや?サンガの町の斡旋所では魔法やスキルに関しては教えてくれなかったのに、ここではちゃんと教えてくれるのか。
僕も「それは守秘義務違反では?」などと野暮な事は言わない、話の分かる受付嬢だと思っておく事にする。
「ちなみにその方のお名前は?」
受付嬢は引き出しから書類を取り出すと上から2~3枚めくって書類を確認すると
「ノルン、修道士です」
うわ、ハッキリ職業まで言っちゃった。
この人もしかしてコンプライアンスとか気にしないだけの人かも、仲良くしておいて損は無さそうだ。
「ノルンですか。・・・ちなみにノルンの捜索依頼とかは出ますかね?」
「難しいでしょうね。この世界の人達の役に立つ依頼を作り出すのが斡旋所の仕事ではありますが、PCとなると話が変わります。ノルンさんの意思で付いて行った可能性もありますし、特定のPCにだけ便宜を図る訳にも行きませんので」
「では、寺院からの依頼であれば斡旋所では受理はできますか?」
「それも無理でしょう。依頼内容がノルンさんの捜索になりますから」
そうか・・・ノルンて人を対象にせずに何とか今のPTでポイント恩恵を得られる状態を維持したい、何か良い手は無いかな。
「ちなみに今回の依頼は達成した事になってるんですか?」
「ええ、勿論。”寺院の異変の調査”だったので、解決した分を上乗せしてお支払いになります」
「なるほど。PCが攫われた事は事件としては認められないから、ここに報告した時点で全て解決・依頼は終了になるのですか」
「そうなりますね」
仕方が無い、何か別の依頼を受けるしかないのかな。
「ですが、寺院を襲撃した賊の調査と討伐の依頼を斡旋する事は可能ですよ。ほうっておけば、再び寺院が襲われるかもしれませんし」
受付嬢が”どうだ”と言わんばかりの顔をしている。
僕が斡旋所の依頼を受けて、ポイント恩恵の高い状態を維持しておきたいのを見透かされてしまっていた様だ。昨日までは護衛依頼を受けていたから戦闘でのポイントに恩恵があったが、これからは何かの依頼を常に受けて戦闘にも備えておきたいのだ。期間はなるべく長く。
「依頼はいつ頃出ますかね?」
「明日、自警団に寺院の聞き取りに向かわせます。その結果、町からの予算がが付いて依頼が降りて来る事になると思いますので・・・午後辺りには」
自警団も動かせるのか。まぁ、生産系の依頼で持ち込まれた物品の卸と販売もやっているのだし、町に顔が効くのは当たり前なのか。
それに思ったよりも早いな、急ぎでもないし構わないかな。
「判りました、それでは明日の午後にまたその件は見に来ます」
「報酬の受け取りはどうしますか?手続きを済ませておきますか?」
うーん、今晩町で襲われたら恩恵無しか・・・
「すみません、明日来た時にお願いします」
「判りました」
ひょっとしたら報酬を受け取るまでは恩恵が持続なのかもしれない、一応先延ばしにしておこう。
「それから。今晩この人数の泊まれる宿はありますかね?ズールには昨日着いたばかりで何も知らないんですよ、出来れば周辺の出来事などの情報を教えて下さい」
「少し長くなりますよ?」
「ええ、お願いします。・・・・あっと!その前にお名前聞いてもいいですか?」
僕はこの頭の良い受付嬢が気に入ったらしい、ただの受付では無く個人名が知りたくなってしまった。
「ジョーイと呼んでくれればいいですよ、ジャパンの人なら分かるでしょう?」
僕の素性も判るのか、契約書とかにサインしてるしね。
しかし”ジョーイさん”か、本当にクローンでもあるまいし。ネタの偽名だよね?

僕はその後一時間、地図を貰いながら周辺の説明を受けた。
どうやら斡旋所と言うのはこの世界の情報をPCに伝えるのも仕事なのだと理解した。依頼の作成をするのにも地形や生態系周辺地域の状況を事細かに調べ尽くしている。
なるほど、そんな事を判らずに依頼を受けているPCにその苦労を言いたかったのかもしれない。
このまま聞き続けていると皆がメシにありつけなくなる。
とうとうと喋り続けるジョーイさん。
「あのーそろそろ宿に行かないと食事が出来なくなるので、続きは明日でもいいですか?」
「ああっ!すみません、ついクセで。場所は判りそうですか?」
「はい、多分大丈夫だと思います」
僕は待ちくたびれた皆に声を掛けて宿屋へ向かう事を告げる。
皆を外に追い立てる後ろからジョーイさんがやって来る。
「私はここに常駐して住んでますので、夜中にも用件などがあれば扉を叩いて下さい」
「判りました、お言葉に甘えるかもしれません」
ペコリとお辞儀をしてから皆を追って斡旋所を出る。
そういえば、サンガの斡旋所は夜中もやってた気がするな。
ここは夜になったら閉めちゃうのかな?
「ちょっと!タロウしか宿の場所知らないんだから先頭歩きなさいよ」
「お腹減ったっすよー」
「喉かわいたー」
考え事をしていたら、みんなから文句と愚痴が飛んできた。
サッサと宿でメシにしよう、お腹が膨れればきっと大人しくなるハズだ。
僕はジョーイさんがくれた町の地図を片手に足早に宿を目指した。

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