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三十路になったら魔法使いになってた 作者:下北沢
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鍛錬

「今日はマイン達の捜索はするの?」

斡旋所の待合室の椅子に腰かけた僕にスズが聞いて来る。
マインとケイトの事は気になっているのだろう。
僕としても探し出してあげたい所だが、いかんせん情報が無い。

「手掛かりが無い以上、彼女達が自力で戻って来るのを待つぐらいしか出来ませんね。それに僕はマナを回復したいので、お昼ぐらいまでは大人しくしています」

既に巻き戻し可能な時間である25時間のリミットに近い死体を何体も蘇生した所為で、マナが空っぽに近い状態になってしまっている。
何かをするにしても一度フルに回復をしておきたいのだ。

「俺は馬で一度ズールの町に戻る、荷物やら色々置いて来ちまったからな。今後の事はその間にでも考えるわ」

どうやらエディは別行動らしい。
きっとまた生産がしたいのだろうけれど、今後の事を考えるとそうもいかないのだろう。
クロウ達がまた規模を大きくすれば、今度はPC狩りが始まり。どこへ行ってもおちおち生産なんてしていられない状況になる事が予想される。
神様と話し合いの時間が作りたいのかもしれない。

「判りました。気を付けて帰って下さい」
「ああ、またな」

僕に挨拶をした後はエルザの前に立つと胸に手を当ててお辞儀をする。

「またお会いしましょう。マイエンジェル、エルザ」

エディはエルザに手を差し出し握手を求めたが、エルザはスズの後ろに隠れてしまった。
この町に来てからのエディはエルザのむき出しになった脚や腕を、しょっちゅうガン見していた。
昨日のやり取りもあるし、今度は手をペロペロ舐め始めても不思議ではない。
彼の性癖に気が付いていたのは僕だけでは無いのだろう、スズもジュリアもエルザをかばう様にエディの前に立ちはだかり。

「行ってらっしゃい」
「早く行け」

犬でも追い払う様に「シッ、シッ」と言いなから手を払う仕草をしながら、おざなりに見送りの言葉をかける。

「おい、邪魔をすんなババアども!」

これにはエディもカチンときたのか、エルザの壁となった二人に文句を言い始めた。
なるほど、エディは一本筋の通った男であるらしい。
せっかくの金髪イケメンなのに勿体ない話だ。
JK・JDは彼にとっては最早ババアで、見た目JSのエルザだけが彼の許容範囲なのだと公言している様なものだ。
別にそう思っていても黙っていればいい物を、あえて口にしてしまうのは正直者なのかアホなのか。
みんな言わないだけで小っちゃい子は好きなのだ。
父性本能がそうさせるのだから仕方が無い。
それが他人の子だったりして、性欲がごっちゃになるとロリになる。
エディがどこまでのレベルなのか判らないが、ほっとくしかない。
だが、勢いでスズとジュリアを「ババア」と言って敵に回してしまったのはやり過ぎだろう。
スズとジュリアの手が武器にかかった事で、ようやく失言に気が付いたエディは後ずさる。
しばらくすると二人からの圧力(殺気?)に負けたのか、エディはスゴスゴと斡旋所を出て行った。

「あのクズ男、今度姿を見せたらボコボコにしてやるんだから」
「スズ殿、その時は私も混ぜて下さい」

エディに対して妙な所で共感が生まれた様だ。

「そう言えば私、斧を相手に戦った事が無いの。タロウは午前中は動かないみたいだし手合わせして貰えないかな?」
「それは有難い。自分一人での鍛錬では物足りなくなっていた所です」
「場所はどうしようか、あんまりここから離れない場所を探そうか」

スズ達が思案していると、会話を聞いていたのか受付の女性が提案してくれた。

「それなら裏庭があるのでそちらでどうぞ」
「良いんですか?」
「ええ、どうぞ」
「ありがとうございます。ジュリア行ってみよう」
「感謝します」

受付の女性が奥の扉を開けてあげると二人は扉から裏庭に出て行く。

「タロウもこっち来ておいてー!怪我したら治してよー」

スズが中に届く声で呼ぶので仕方なく僕も裏庭に出る事にした。
エルザは待合の机に残って何やら新しい錬金術の術式を作っている様子。

「エルザはここにいますか?」
「うん。私は乱戦になったら何にも出来なくなっちゃうから、乱戦でも使える術式をいくつか作っておこうと思ってるの」
「判りました。僕は外の方がマナの回復には良いので彼女達を見物してきますね」
「うん、わかった」

僕はエルザに話しかけてから彼女達に遅れて庭に出る。適当な場所に腰を下ろした所で準備が出来たのか、打ち合いが始まる。
ジュリアは大きな盾を左手で軽々と持ち、右手に手斧を持っている。
スズは薙刀もどきではなく片手剣と小盾を構えていた。

「では参ります」

ジュリアは掛け声と共に盾を前面に押し出してスズに向かって走り出す。
盾で接近して斧の間合いに強引に入ってしまえば斧は強い、防具を破壊して肉体にダメージを与える事が出来る強力な武器だからだ。
バンッ
盾がスズの体に当たりジュリアの前進が止まる。
盾の下側からスズの足の位置を確かめると、盾を左にズラし右手の斧を横なぎに振る。
スズは後退しながらも斧の威力を確かめる為に盾を出してみるが
バゴン
という音と共に弾かれる。
軌道を逸らす事は出来たが、大した角度をズラせていない事に驚く。
もしも真上から切り下された場合、盾で受けても弾いただけで肩に刺さってしまう。
これが確認出来ただけでも、スズにとっては収穫だったのだろう。
バゴン、バゴン、バゴン
斧の軌道を見切りながら盾を合わせては弾いていく。
弾く事の出来る角度を見極めているのか、斧の届く範囲ギリギリに避けて盾を出しては斧の軌道を弾いて変えていた。
暫くそんな攻防をしているのかと思ったら、突如今までとは違う大きな音がした。
バゴッ!
大きな音と共に斧の軌道が大きく逸らされた。
ジュリアもこれには驚いたのか、慌てて距離を取ってから再び盾を掲げて突進する。
またもやスズが盾を体で受けて斧の攻撃を待ち受ける。
今度はジュリアも警戒して、盾をブラインドにして右下から斧を振り上げる。
バゴッ!
しかしスズは斧が速度に乗る前に小盾を上から叩きつけてその攻撃を潰す。
これには面食らったジュリアだったが、すぐさま斧を盾の影に隠すと今度は上から振りかぶる。
バゴッ!
これもスズは斧の軌道に対して横殴りに小盾を振るって、斧を完全に弾き飛ばして見せた。
これには体勢を崩したジュリアだったが、弾かれた所から返しの斧を振るう。
バコッ!
それをスズがまた小盾で弾き、ジュリアはその弾かれた勢いをクルリと手首を返してまた斧を振るう。
バコッ!バコッ!バコッ!・・・・
お互いその攻防が気に入ったのか、30分程そんな攻防を続けていたが
バギッ!
今までと違う音と共に、その攻防が止まった。
スズが後退してジュリアが盾を下ろす。
スズが盾を確認すると、どうやら盾が割れてしまったらしい。

「スズ殿ここまでにしよう」
「そうね、手合わせありがとう」
「いや、こちらこそ良い勉強になった」

互いに礼をしてから二人共こちらにやってくる。

「タロウ盾が壊れちゃった。直して」
スズが壊れた盾を僕に差し出してくる。盾は1/3程が欠けていて、破片もちゃんと添えられていた。
僕はそれを受取ると、リターンの魔法を起動する。
すぐに盾の欠損は直ったが、僕はそのまま魔法を続ける。
すると斧で付けられた傷がみるみる消えて、手合わせをする前の状態に戻った。

「これで盾のダメージも無くなったと思います」

スズに盾を返してあげる。

「ありがと」
「ジュリアの斧もダメージや刃こぼれがあれば直しますよ?」
「いえ、刃には問題ありません。お気遣いありがとうございます」
「そろそろお昼ですし、中に戻りましょうか」

僕達は斡旋所に戻ると、スズとジュリアの二人共が一度に戻って汗を流してくるらしい。

「ついでに屋台で私達が、みんなのお昼ご飯を買って来るから待ってて」
「では後程」

僕とエルザを斡旋所に残し、二人は行ってしまった。
僕とエルザは受付の女性にお茶を注文して彼女達を待つ事にした。
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