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三十路になったら魔法使いになってた 作者:下北沢
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葬儀会場

翌朝に商館の前での待ち合わせに来たのは僕・スズ・エルザ・ジュリア・リードさんだった。
ジュリアは昨日の時点では声をかけていなかったのだが、どうやら参加するらしい。

「おはようございます。それでは、僕達はこれから自警団の詰め所に寄ってから死体置き場に向かいます」

リードさんが先頭に立って町中を移ゾロゾロと動して行く。僕達は詰め所の場所なんて知らないので、リードさんについていくしかない。
商館から城塞の内側にある自警団詰め所へとたどり着くと、リードさんは一旦詰め所の中へ入って行ってしまった。
暫くすると紺色の防具に身を包んだ4人がリードさんと共に出て来た。
その中の一人、少々強面の顔をした男が前に進み出て。

「自警団副団長のジェイです。死亡した山賊達を生き返らせるとの事なので、私達が捕縛と尋問の手伝いをさせて貰います。では付いてきて下さい」

僕達に簡単に挨拶をしてから先頭に立って歩き出す。
副団長の部下三人もそれに続いて歩いていくので、僕達もそれに付いて行く。
町の北門の内側に到着すると、死亡した男達の死体が二列に並べられていた。

「こちらに並べてあるのが街道にいた者たち、そちらが皆さんの戦った者達です。おのおのから一名でお願いします」

僕はその中から年かさに見える死体を一名ずつ選び副団長に伝えると、部下の三人が持参していたロープできっちりと縛り上げる。

「準備が出来たのでどうぞ」

部下の三人が武器に手をかけて構えた所で副団長の許可が出る。
僕はリターンの魔法を街道にいた男に起動する、五分程かかったが男の体から傷が消えていく。
男が声を上げようと口を開けた所で、すかさず自警団の部下が猿ぐつわを噛ます。
僕がもう一人の男にもリターンをかけて蘇生をすると、自警団の部下の人達がまた猿ぐつわを噛ます。

「見事な魔法です、お聞きしたい事があればどうぞ」

副団長が僕の事をずっと凝視しているのが気になるな。
僕は副団長に頭を下げて前に出る。
縄で縛られた二人に対して尋問を始める。

「僕の聞く事に”はい”なら頷く”いいえ”なら首を振って下さい。それでは、あなた方に指示を出していたのはクロウという男ですか?」

僕の言葉を聞いても目を逸らして頷く事も首を振る事もしない。

「あなた方の目的は何だったのか聞いてますか?」

これもまた同じく目を逸らすだけで答えようとはしない。
僕が両手を上げて副団長に首を振ると副団長が

「今の質問だけでよろしいのですか?」

と聞いて来るので僕は聞いておきたい事の残りを伝える。

「クロウと言う男といつ知り合ったのか。仲間に魔法を使う者はいるのか。全部で何人の仲間がいたのか。アジトはどこにあるのか。囮の男が誰だったのか誰なのかを聞いておきたいですね。」
「判りました。おい、今のをこいつらから聞いておけ。教えたくなる様にすればいい、無茶をしてもかまわん」

部下の三人は口々に「判りました!」と言って敬礼をする。

「では、結果が出るまで少々お願いしたい事がありますのでこちらへ」

僕達は副団長に促されてその場を後にする。部下の三人は直立したまま動かない、僕らには尋問の様子を見せたくないのだろう。
副団長は僕らの先頭を歩いて、僕らはまたそれに付いて行く。
暫く歩くと大きな建物に辿り着いた。
副団長が中に入るので僕達もそれに続く。
建物の中は薄暗く、人々が整然と並んでいた。
整列の先頭を見ると台の上には寝かされた人間が12人並べられている。
副団長は僕達に振り返ると目の前の後継を説明し始める。

「これは、昨日賊に殺された町の者達です。現在この町には死亡した者を生き返らせる事の出来る聖職者がいません、おかげでこの者達は理不尽な死を受け入れなくてはならなくなります。町を守る者の一人としてその様な者を出したくはありません、どうかこの者達にタロウ殿の魔法をかけて頂けませんか?」

副団長は僕に向かって頭を下げてたまま動かなくなった。
この人最初からそのつもりで賊の蘇生と尋問に付いて来たのだろう。
この世界にも頭を下げる文化があるのだなと妙な所に感心してしまったが、ちゃんと確認しておかなくては

「この方達の殺された時間は昨日の何時ぐらいでしたか?」
「殺されたのは昨日の警鐘を鳴らす前になりますので午前の9時頃だと思います」
「なら大丈夫そうですね、やってみましょう」

副団長に付いて列の先頭へ向かって人々の合間を縫って進んで行くと、並ぶ人達がそれぞれ手に花を一輪持っている事に気が付いた。
先頭に並べられた死体に、各々が持ってきた一輪の花を添えて飾り付けてあげているのだ。
なるほど、これはこの世界の葬式なのか。
悲しみに暮れる参列者の先頭に並べられた死体の一つに近づくと、どの死体も綺麗に花が飾られている。
どの死体にも親しい人がいてこれだけの参列者を集めているのだと判る。
副団長が皆から見える位置に立つと、大声で皆に語り掛けた。

「皆の者。すまないが暫くの間、その場を動かないで貰いたい。よろしいかな?」

皆頭を上下に動かして頷くのがわかる。
副団長なんて肩書の割には結構顔が効く人物であるらしい。
皆がその場に留まったのを確認すると僕に向かって頭を下げる。

「ではタロウ殿、お願いします」

この衆人環視の中でやれって事か。
目立つ行動をとった場合、どの様な結果になるのか予想がつかない。
しかし、個々の死体のリミット時間がハッキリとしない以上、あまり時間をかけてもいられない。
一番右の台に寝かされている死体に近づき、お腹の上に両手を添えリターンの魔法を起動する。
親族か何かだろうか。僕が死体に触れている事に何か言おうとしたみたいだけれど、副団長が手を上げて静止させてみせる。
起動から五分程して皆が焦れ始めた頃、ようやく死体にあった傷が消えていく。
全ての傷の消えた死体だったハズの者が「ガバッ」と起き上がった。
ウォォォォォォーーーーー!
静寂に包まれていた建物の中が歓声ではじける。
そこへ副団長が前に進み出てくると皆を黙らせる。

「静かに!静かにせんか!」

その上で死体から生き返ってキョトンとしている女性に向かって怒鳴りつける。

「それと君、その台の上で暫く黙って動かない様に!」

生き返ったばかりで状況の判らない女性も「は、はい!」と返事をしてその場から動かなくなった。

「ではタロウ殿次へまいりましょう」

なるほど、僕の魔法を見せて理解させるのが説明よりも早いのか。

「判りました」

僕は返事を返してから隣の台の上の男性の死体に両手を当ててリターンの魔法を起動する。
彼の親族だろうか、先程までとは違って彼らは僕に期待の目を向ける。
そして5分程して、傷が消えて死体だった男性が起き上がる。
ウォォォォォォーーーーー!
またもや大きな歓声が上がる。

「静かにせんか!この馬鹿どもが!!」

副団長の怒声で一気に鎮まった。

「次に騒いだ者は追い出すぞ!それから台の上の男、暫くはそこから動かないで貰おう。声を上げるのも禁止だ、いいな!」

台の上の男性がコクコクと大きく頷くのを確認すると、副団長は次の蘇生を僕に促してくる。

「タロウ殿、次をお願いします」
「はい」

そこからは副団長が睨みを利かせている為か、僕が蘇生をしてもみんな口を押えて声を出すのを我慢していた。
僕達がこの建物に入ってから一時間程、ようやく最後の死体の蘇生を終えると。
ウォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーー!!!
歓声を我慢していたフラストレーションなのか、この瞬間に会場に詰め掛けていた人々は怒号に近い程の歓声を上げる。
まるでライブコンサート会場だ、副団長の演出にしてやられた。
副団長が勝手に人の腕を取って会場に手を振らせて来る。

”これは好都合ではありませんか、乗ってあげなさい”

人に影響を与える行為がポイントになるって事だっけ、これもその一部と見ているのかな神様は。
まぁ、神様からもGOサインが出てしまっては仕方が無い。
出来るだけ笑顔を作って手を振っておく。
すると副団長は歓声を手で沈めると再び僕を持ち上げる。

「彼の名はタロウ!この町を救った救世主である。私達はここにいるタロウのお陰で死者を出さずに済んだのだ。皆!タロウを称えようではないか」

ウォォォォォーーー、タロウ!タロウ!タロウ!
このおっさんノリノリだな!
こんな事もポイントになるのであればアイドル的な活動もポイントになるって事か?
こうなったらヤケで一曲歌ってやろうか。
すると、僕の耳元で副団長が囁いた。

「そろそろ出ましょう、そちらの扉から裏の路地に出られますのでお願いします」

僕は副団長の指示に従って、扉から慰安所の裏路地に出る。
路地には先に出ていたのかスズ・エルザ・ジュリアが既に待っていた。
やり過ぎた感があったので呆れているかと思っていたら、ジュリアがいきなり僕の手を取り。

「タロウ殿!感激しました。貴方こそ我が主君となるに相応しいお方だ!是非、私をタロウ殿の騎士にして下さい」

僕が返答に困っていると神様までも彼女の申し出に賛成しろと言ってくる。

”良いではありませんか、我が騎士に任命すると言っておやりなさい”
”そもそも前衛の職は回復職無しでは活躍は出来ません、回復職に出会えなければほんの少しの傷が命取りになる事もあるのです。言い回しはアレですがPTに入れてくれと言ってきたのですよ”

「えっと、それは・・・」

僕はチラリとスズの方を見てしまう。今までずっとスズと二人で組んで来たのだから、そのスズに賛成して貰わないと了承は出来ない。
スズは「仕方が無いなぁ」と言った顔で、笑いながら僕の顔を見て頷いた。

「申し出ありがとうございます。今はスズと二人PTですが今後三人になれば賑やかで楽しくなりますね。あははは・・・」

騎士だ家来だなどとノリで言ってしまうと後で僕も痛い人にされかねない、明言を避けPTの一員として迎えると言う意味での返答だったのだが。

「ありがたき幸せ、このジュリア、タロウ殿の騎士として存分にお使い下さい!」

ジュリアはもう騎士の誓いでも終えたかの様な事を言っている。
横合いから副団長も余計な一言を付け加えてきた。

「タロウ殿となら良い主従になれる事でしょう」

勝手な事を言ってウンウンと頷いている。
余計な事言うな!おっさん

「さ、さぁ。尋問の結果を聞きに戻りましょう」

僕は何とかその場の空気を変える為に移動を開始した。
スズとエルザがジト目で見ているが気にしないでおこう・・・

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