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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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爆心地

エディに手伝わせる約束を取り付け、一旦ジュリアの所へ行ってみる。
ジュリアは木に挟まれたまま、まだもがいていた。
「ジュリア、抜け出せそうもないですか?」
「おお、タロウ殿。申し訳ない、自力では無理みたいです」
「判りました、ジュリアは武器のハンドアックスは取り出せそうですか?」
「腰から外せばそちらの足元に転がせると思います」
「ではちょっとやってみて下さい」
「了解です」
ジュリアは隙間に手を突っ込みベルトからハンドアックスの留め金を外した、すると
ゴトッ
という音と共に足元に斧が転がって来たのでそれを拾う。
それを見ていたエディは
「おいおい、そいつでこの木を切るのか?日が暮れちまうぞ」
とあきれている。
「勿論そんな事には使いませんよ」
僕は周りの倒木の中から折れない太さの木を選んで斧を叩きつけて行く。
切り出して来た木をジュリアの挟まった木の下の隙間に差し込んで大き目の石を置く。
エディもそこまでやって理解出来たのか
「ああテコの原理か、判ったこの棒の先を下に引けばいいんだな?」
「そうです、いきますよ!」
ゴッ・・・ギギギギ
僕らがテコの原理で持ち上げた木の隙間からジュリアの出られそうな隙間ができた。
「ジュリア、今です抜けて下さい!」
ジュリアも這いつくばりながらズルッズルッと地面を擦りながら何とか脱出できた。
ジュリアは自分の体を確かめてから。
「おお、ありがとうございます。タロウ殿、おかげで助かりました。・・・それで、こちらはどなたですか?」
「ああそうですね、こちらエディです。ドガの町のPCで同じ連中に襲われて逃げて来た所です」
エディがズイッと前に出て
「よう。俺はエディって言うんだ、よろしくな」
右手を出して握手を求めて来るのでジュリアも仕方なく応じる。
「ジュリアだ、騎士をやっている」
と簡単に名乗って握手をしてから僕の方を「何だこいつは」という顔で見る。
エディもかなりのイケメンなんだけれど、軽薄そうな感じがジュリアは気に入らないみたいだ。
「エディ、未だに爆発で死んだままの人がそのままなんです。今はその遺体を集めて欲しい」
「判った、こちらのお嬢さんも仲間が死体のままじゃ不安だろうしな。手分けして探すか」
「ええ、お願いします。ジュリアもお願いします」
「了解です」
ホッとした顔のジュリアに斧を返して
「見つけたら大声で呼んで下さい」
僕らは散開して死体になっているであろうエルザとスズを探す。
そう言えばケイトとマインはどうしたんだろう。
戻って来ていない。
右手の森で何かあったのか・・・
僕がそんな事を考えながら探していると
「おーい、ここらに死体が沢山あるぞ」
とエディが呼ぶのでそちらに行ってみる。
僕らが集まってみると、僕達が倒した敵の死体の山だった。
殆どに矢が刺さっていて、止めに急所を刺されている。
スズの長弓の矢と薙刀の止めの傷だと判る。
ならこちらの方向にすずの死体もあるかもしれない・・・
ボロボロになっている死体の中にはスズもエルザもいなかった。
やはり倒木の辺りまで飛ばされたのだろうか?
こちらの方面に当たりをつけて、倒木の隙間なども調べていると
「タロウ殿、エルザ殿が!」
ジュリアの声の元に僕らは急いで集まってみる。
するとそこには、右足が無くなってうつ伏せに倒れているエルザだった。
首元に手を当ててみるが息は無く、体も冷たくなり始めていた。
体は傷だらけだ、あちこちに大きな裂傷が見受けられる。
出血多量で死んだのだろうか、仰向けにした顔は青ざめていた。
僕はマナが回復して来ているのを確認して、両手をエルザに当ててリターンの魔法を開始する。
すると程なくして欠損していた足が綺麗に元に戻り、体のあちこちにあった裂傷も消えてゆき。顔の血色も戻った所でエルザが飛び起きた。
「ひゃぁぁぁ・・・・あれ~?」
首をかしげるエルザに
「おはようエルザ」
と声をかける、僕の顔と周りを見て状況を理解したのか
「あれからどうなったの~」
と聞いて来るので、これまでの経緯を話しエディの事も紹介した。
「これはこれは、美しいお嬢さん!俺はタロウの友人でエディって言うんだ。よろしく」
いつの間にか友人に格上げされてしまっていた事に突っ込みたくなる。
ウィンクしながら右手を差し出してくるエディに対し。握手のつもりでエルザも右手を差し出したのだろうけれど、エディはその手を取って手の甲にキスをする。
ピシッとエルザの表情が固まるが、そんな事はお構い無しに
「ああ、これはきっと運命の出会いだよエルザ」
などと言って手を離さない。
エルザは微妙な顔をしながらこちらを見て「何とかして~」と表情で訴える。
あれ?ジュリアの時と反応違わない?
エルザが右手を引っ張って離れようとしているのを、エディはガッチリと両手て握りながら彼女の手を撫でまわしている。
エディはガチ勢なのかな?
流石にエルザが泣きそうな顔をしているので止めてあげなくては。
「エディ。まだスズが見つかっていません、手分けして探すのを手伝って下さい」
「ああ、そうか・・・そうだな。それは探してやらないとな」
エディは名残惜しそうにエルザの小さい手を離すと探索に戻って行った。
残ったエルザにもお願いする。
「すみませんが、スズがまだ見つかっていません。ですので一緒に探して下さい」
「わかった~、まかせて~」
再び僕らは手分けをして探し始める。
僕も今度は別の方向を探そうと思って辺りを見回していた所へてくてくとエルザがやってきた。
「何か気になる事でも?」
と僕が尋ねると
「あのね~、スズはね。魔法の爆発の瞬間に~、タロウの近くにいたんだよ~。」
「本当ですか、ならあちらの方角を探してみなくては」
「爆心地に近いタロウの頭が無事なのは~、スズが爆発の瞬間に~タロウに覆いかぶさって頭を守ったからなんだよ~」
「えっ!?」
そう言えば、爆発の瞬間。何かに包まれたみたいな感じがしたのは気のせいじゃなくスズだったのか・・・
「この規模の爆発が爆心地に埋められた魔道窯からの爆発が起こったのなら~、砂利で体がズタズタになるのよ~。タロウが自分に魔法をかけれる程度の怪我だったのならスズのおかげじゃないかな~」
そうか地中に石ころを詰めておけばとてつもない威力だろう、体中穴だらけになっていてもおかしくない。
エルザの体がズタズタになっていたのはそれでか。
僕の頭に石が直撃すれば、あの規模の爆発だけに簡単に即死していただろう。
魔法の起動なんて事を考える暇も無く・・・
この爆発を企てたクロウと言う男は、スズの無力化と僕の即死を同時に成し遂げる方法を採用したのだ。
手下を使い果たしたからのか、自分の姿を晒す事になってでも僕を殺しておきたかったのだろう。
僕は爆心地からグルリと周りを見回してみる。
木々は爆風になぎ倒され、中心地付近の土は抉られている。
どんな魔法を使えばこんなに威力のある爆発を起こせるのだろうか。
使う本人に逃げる気が無ければかなり大規模な爆発も起こせるのだと教えられた気がする。
これ程の規模の爆発で僕の頭が破壊されずに済んだのは、やはり頭をかばってくれたスズのお陰なのかもしれない。
僕は爆心地と僕が飛ばされていた場所の更に外側を徹底的に探してみる事にした。
エルザもこちら側が怪しいと思っているのか、僕の近くを探していく。
”タロウあれを”
珍しく神様が僕の腕を憑依して動かし指さした。
神様の指さす方向には爆圧で木々が倒れている。
僕がそちらに近寄って行くと
”下です下、弓が見えます”
なるほど、倒れた木の下から僅かに飛び出した弓の先。
よく見ると、これはすずの使っていた長弓の先だ!
「おーい!ちょっと集まって下さい」
僕の声にみんなが集まって来る。
「この木の下にスズの使っていた弓が見えるんです、すずはこれを背中に装備していました。そこで確認する為にこの木を退かしたいのですが、何か良い方法はありませんか?」
「またテコの原理でどかすか?」
エディの意見を考えてみる。
先程の木よりも大きいし、持ち上げただけでは判らない。これは採用できない。
僕は首を横に振る。
「錬金術の術法で吹き飛ばす?」
それは明らかにダメでしょ。
エルザの意見にも首を横に振る。
「ならば、私の斧で斬れるまで叩きましょう」
他の方法が無いか考えてみたけれど、とても無理そうだ。
「それしか無さそうですね」
時間がかかっても仕方が無い、ジュリアの出した安全策で行く事にする。
ガツッ、ガツッ、ガツッ
斧の持ち主であるジュリアが斧を振るって行く。
斧で少しずつ削っていけそうだ、ハンドアックスだけれども三十分もかければ何とかなりそうだ。
途中、良い所を見せたいエディがジュリアに交代したけれど、十分もしたらヘロヘロになっていった。
さすがにエディはクビになり、斧振り役はジュリアに戻った。
僕もククリナイフで枝打ちをしてこの木を丸太の状態にしておく。
こうしておけば転がす事も出来る。
汗だくになったジュリアがとうとう木を分断する事に成功した。
半分になった木はテコの原理でどかしてゆく。
すると大木の下からスズの死体が現れた。
良かった、何とか見つけられて。
とは言え、死体は木の重みで半分潰されている。
体はズタズタに裂けていて、頭も完全に割れて中が見える程だ。
痛々しくて直視が出来ない。
爆心地付近で僕をかばったからか・・・
僕が代表してスズの死体を平らな所まで運んで寝かせ、リターンの魔法をを起動する。
暫くすると、傷が塞がり割れた頭も元に戻って行く。
スズはバッと起き上がり、ガバッと僕の頭に抱き着いてくる。
「タロウは殺させないんだから!」
そう叫んで僕の頭を掻き抱いて目をつぶっている。
きっとスズの最後の瞬間はその時だったのだろう。
僕は押し付けられる胸の感触を堪能していいのか迷いながら。
「スズ・・・ありがとう、僕は平気ですよ」
と背中をポンポンと叩いて教えてあげる。
恐る恐る目を開けたスズは、周りに見物人が立っている事に気が付き
「うひゃーーーー」
と言って森の中に走り込んで行ってしまった。
多分相当恥ずかしかったのだろう。
結局スズは爆心地の外周を一周してから戻って来た。
何事も無かったフリをして右手を上げ
「あらエディ生きてたのね、久しぶり」
などと言ってくる。
「あ、ああ。命からがら逃げてきたよ」
エディは親切にもさっきの出来事は無かった事にしてあげるらしい。
「それでタロウ、これで全員か?」
「いいえ、マインとケイトと言う女性PC二人が戻って来ていません」
「戻る?この爆発に巻き込まれたんじゃないのか?」
僕は右手の森を指さしながら
「あちらの森に敵を奇襲しに行って貰っていたのですが戻って来ていないんです。ですので爆発にも巻き込まれてはいないハズなんですが・・・」
「じゃあ次はそこの森か」
「はい、行きましょう」
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