挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

34/79

狙い


気が付くと、僕は草むらの上にうつ伏せに倒れていた。
何が起こったんだっけ・・・
そうだ、僕達は囮にされていたPCの死体を奪い返して蘇生をしたんだ。
けれど、助け出したハズのPCが杖を構えて魔法を唱えた所で僕の記憶は途切れている。
もしかして死に至る程の怪我をして、僕自身を巻き戻したのか・・・
周囲にはクレーターの様にえぐれた直径20メートルぐらいの穴が開いていて、僕はそこから更に10メートル程の位置にいた。

”気が付きましたか?”
「あ、はい。何が起こったのか教えて頂けますか?」
”どうやらリターンをかけて蘇生をしたPCが、その場で規模の大きな爆裂魔法を使った様です”

これはあのPCが仕掛けた自爆攻撃なのか?
木々はクレーターを中心になぎ倒されている、余程威力のある魔法を使って吹っ飛ばしたのだろう。
みんなは・・・スズは何処だ。

「あの、他の皆は何処に飛ばされたか判りますか?」
”光と土煙でよく判りませんでした”

この爆発だ。恐らく助かってはいないだろう、ならば探し出して蘇生しなくては。
囮の縛られていた場所は、ぽっかりと林の中に空いた15半径メートル程の広い草むらで、その真ん中にポツンと木が一本だけ立っていたハズだ。
それが今は、真ん中の辺りに生えていた一本の木は倒れ、その倒木を中心にした大きなクレーターが出来ている。
草むらの周囲を囲っていた林の木々もドミノみたいに倒れ、その爆風の威力を物語っている。
クレーターの中心地で爆発が起こったのなら、僕は今現在立っている位置まで吹き飛ばされた事になる。
爆発前に、僕は爆発の中心である木の近くにいたハズだ。
それなら他のみんなも同様に、クレーターの外に吹き飛ばされているに違いない。
僕の飛ばされた先には木々が倒れているから、そちらに引っかかっているのではないか。
僕が薙ぎ倒された倒木の辺りを調べていると、木々に挟まれてズタズタになっている死体を見つけた。
服装に見覚えがある、これはジュリアではなかろうか。
恐る恐る近寄って確かめてみる。
一目見た所、呼吸はしていない。
お腹の辺りに太い枝が刺さっていて、首も明後日の方を向いている。
根ごと抜けてジュリアに倒れ込んでいる木がやっかいだ。
腰のククリナイフで枝を切り落とし、ジュリアに近づこうとした所で
ザッザッザッ
どこからか足音が聞こえてくるのに気が付いた。
足音は一人分だ、誰か難を逃れた者がいたのかな。
そう思って足音の方を見ると、頭から長い布でグルリと巻いて顔を隠した人間が槍を構えてこちらへ向かってやってくるのが見えた。
槍を持った男と目が合う。
まずい、僕の姿を見られた。
男は槍を構えてこちらへ向かってくる。
この反応は敵だ!
マズい・・・どうする、逃げるか?
僕の手元にはククリナイフが一本だけ、到底槍には敵わない。
僕は慌てて木を飛び越えて、ジュリアにリターンをかける。
爆発が起こってからそう時間は経っていない、ならばあいつが近づく前に蘇生して逃げる!
僕が動き出したからか、覆面の男は駆け足でこちらへ向かってくる。
ジュリアの体に刺さっていた木が抜けて首が前を向き、ジュリアの体の時間が爆発前の健康な状態に戻った。

「すみません!自力で抜け出して下さい」

僕はそうジュリアに告げると同時に走り出す!
ジュリアは木々に挟まれていてすぐには脱出出来ないだろう。
今はその状態を狙われては困る。
僕は覆面の男がジュリアと僕のどちらを優先するのかを試す。
ここで僕を追わずにジュリアを優先して殺しに行く相手なら、逃げきる事が出来るだろう。
敵の戦力はもう殆どいない、町に逃げ込んで自警団を連れて来ればどうにでもなるはずだ。
僕は町の方向へ木々を飛び越え走る。
敵は・・・と思い振り返ると、僕を追って走って来た。
爆発の罠はきっとスズか僕を殺す為の罠なのだろう。
僕を殺すには、僕を守る者が死んでいる状況を作り出さなくてはならない。
けれど僕を護衛するスズをまともに相手にして倒せない、となればこの作戦を考えるのは頷ける。
僕が爆発で頭を吹き飛ばす即死にでもなれば儲けもの。
その結果、僕だけが生きていたのが今の状況に違いない。
しかし、爆発の威力が強すぎた事が僕に時間を与えた。
敵もある程度の安全な距離を保ち、爆煙が治まるのを待ってからこちらに向かってきたのだろう。
他の仲間を蘇生されてしまう前に、僕を殺そうと焦っているハズだ。
僕は既にジュリアの蘇生を終えている。
木に挟まれて暫くは身動きが取れないかもしれないが、あの場所から死体を持ち出したりは出来なくなる。
ならば、僕が逃げきれれば勝ちだ。
などと思っていたら、覆面の脚がかなり速い。
僕は悲鳴を上げる脚にリターンを、肺にリターンをかけながら兎に角走る。
ザッザッザッ
まずい!足音が真後ろまで来ている。
僕は振り返ると同時に横に飛んだ。
覆面が槍を僕の走っていた辺りに突き出している。
危なかった。
けれど転げまわって避けた事で、町の方向を塞ぐ位置に立たれてしまった。
フーッフーッ
敵も覆面をしているからなのだろう酸素を十分に取り込めなくて、息が荒い。
僕は腰からククリナイフを引き抜いて構えると、疑問だった事を問いかけてみる

「もしかして、あなたがクロウですか?」
「・・・・」

返事は無い、けれど僕の問いかけに目を細める。

”この男PCです”

神様にはこの覆面がPCだって判断出来る何らかの基準があるらしい。

「ウチの神様は貴方がPKを扇動しているPCだと言っていますが」

僕はハッタリをかます為に内容をかなり盛ってみた。
しかし、覆面は僕の言葉を無視して槍で突いて来た。
シュッ・・・シュッ、ザクッ

「ぐっ」

槍の二連撃の二撃目を避けきれずに脇腹を刺される。
慌ててリターンをかけると、槍がスポッと抜けて傷も痕を残さずに消える。
それを見た覆面は目を見開いてついに言葉を発した。

「これが時空魔法ですか」
「あなた、ちゃんと喋れるんですね」

僕が嫌味を返すと、槍を構えながら喋り始める。

「いいでしょう名前ぐらい教えて差し上げます。私の名はクロウ」

ある程度予想はしていたけれど、この男がクロウか。
だとしたら何でわざわざ一人でやって来たんだ?
手下が爆発に巻き込まれたとかで、動かせる手駒が無いのか?

「何故私達を狙うんですか」
「たまたまです」
「そんな訳が・・っ」

僕の反応に目を細めると再び突きかかって来た。
大きく飛びのいて足元への突きを躱す事が出来た。

「私は私の仕事をしているだけですよ」

時間稼ぎにもならないか、ジュリアの姿はまだ見えない。
クロウの槍の扱いは上手くは無いが、素人のナイフで躱し続けられる程甘くはない。
二撃三撃と槍が突き出され、再び僕の腹部に槍が刺さる。

「いつっ」

覆面は槍を突き入れたまま僕を押し倒してのしかかり、マウントポジションを取る。
僕は槍を掴みながら腹部にリターンをかけた。
クロウは僕の体から槍が抜けて、傷が消えて行くのを見て槍を止めた。

「こちらに付く気はありませんか?」
「ない」
「そうですか」

僕がクロウの誘いに即答して見せると、両手で掴んだ槍を振りかぶって縦に突き刺して来た。
振りかぶっては刺し、振りかぶっては刺し、何度も何度も振りかぶっては刺しにしてくる。
ザクッ、ザクッ、ザクッ

「がっ、ぐっ、げふっ」

僕は痛みを懸命に堪えながらリターンをかけ続ける。
遡る時間が短い分マナの消費は少ないが、刺される回数が多さにどんどんマナが減って行く。
まずい、このままでは・・・
向こうも刺し疲れてきたのか速度が鈍る。
けれどこちらもマウントを取られたままなので、反撃の手段が無い。
フーッ、フーッ
クロウの呼吸も相当乱れているらしい。
けれどそろそろマズイ、マナが保たない。
何か出来る事を探すんだ、そうだククリナイフで足を狙って。
と思ったが、なぎ倒された時に手放していたのでクロウの足元だ。
ザクッ、ザクッ

「ぐぁっ、ごふっ」

内臓を心臓を肺をと試す様に次々と槍の一撃が襲ってくる。
治しても治しても、新たな刺し傷を作られる。

「そろそろマナも尽きるんだろう?いい加減に死ね!」

覆面の口調が荒くなる、こちらが地なのか。
ザクッ、ザクッ、ザクッ

「ぐっ、げふっ、ごはっ」

痛みに気が狂いそうだ、こればっかりは我慢して耐えるしかない。
僕の魔法は巻き戻す時間が長い程マナを消費する量が多くなるタイプだ、出来たばかりの傷を治すのには少量のマナで済む。
でもこの回数はまずい、そろそろ何とかしないとマナが尽きるぞ!
僕の焦りを感じたのか覆面の目が笑ったのが判る。
くっ、これはもう駄目か・・・と思い始めた時に黒い影が飛び込んで来た。
ゴスッ!
派手な音と共にクロウが横に吹っ飛んだ。
一体何が!
僕が慌てて見上げると

「生きてるか?タロウ」

そこに立っていた人物は、驚いた事にエディだった。

「あなた、エディ!生きてたんですか!?」

僕はエディに助け起こされて立ち上がる。
エディは油断無くクロウの方を見たままクロウに話しかける

「おい、覆面のあんた」

エディにやられた後頭部の辺りを抑えながらフラリと立ち上がったクロウは、返答はせずに無言でファイティングポーズを取る。
どうやらさっきの一撃で槍は落としてしまったらしい、今はエディが踏みつけている。
武器も抑えたし、クロウがアタッカー職では無い事もさっきまでの戦闘で判っている。
武器の優位性で僕を圧倒していたが、槍も無しでは本職のアタッカーであるエディには敵わないだろう。
勝った・・・と思った所でエディの言葉に驚いた。

「あんた、この場は見逃してやるから。とっとと失せろ」
「はぁっ!?何を言ってるんですか、あなたは。あの男の所為で何人死んだと思っているんですか!ここで仕留めないと」
”今は諦めなさい。それにあの者が生きていた方が、私達にとっては都合が良いのかもしれません”

僕はエディに慌てて反論したけれど、神様からダメ出しされた。
むむう、だとしてもこんなチャンスをみすみす・・・
僕がエディに食って掛かっている隙に、クロウは背を向けて走り去って行ってしまった。
決断は早いらしい。
エディの登場で僕を殺せなくなったからには、とっとと逃げるのが正解だろう。
僕が追っても返り討ちに遭う可能性が高い、エディが動かないのならもう諦めるしかない。
クロウの走り去る後ろ姿が見えなくなってからエディは上着のボタンを外す

「悪いな、俺も万全じゃなくてな」

上着の下からは血で真っ赤に染まったシャツが現れる。
そうか、エディも行方不明者だった。
奇襲を受けて命からがら逃げて来たのか。
神様はエディの怪我も見抜いてたのかな。
僕はエディの怪我を指さして

「その怪我、やられたのは何時間前ですか?」
「多分24時間近い」
「そこに横になって下さい、巻き戻せるか微妙なラインですが」
「そうか、やるだけやってみてくれ」

エディは僕の魔法の効果を理解している分話が早い。
少しずつマナも回復しているのでマナは足りるだろう、問題は時間が僕の魔法のリミットである25時間を超えているかどうか・・・
エディにリターンをかけ始めて5分ぐらい経った頃に変化が訪れた。
シャツに染みていた血が消え、エディの体に出来ていた傷が消えて無くなった。
どうやら制限時間内だったらしい、運のいい男だ。

「おお、助かったぜ。ありがとよ」

これで僕のマナがまたカラッポになってしまった。

「エディ。僕たちは今、罠で爆裂の魔法を食らってしまい味方がかなりやられてしまっています。これから救助を手伝って貰えませんか?」

僕はエディに爆発で吹き飛んだ仲間探しを依頼した。




+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ