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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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スズ⑤

敵が私達の正面に集結し始めた。
森の中から弓矢を撃ってた敵も続々と木の周りに現れる。
囮にしているPCの死体の前に集結して隊列を組み、私達に向かって矢を射かけ始めた。
左右からの弓矢はもう警戒しなくても平気そう、私がエルザちゃんの盾の影で第一射をやり過ごすと。

”おい、そろそろ代われ。もう俺の番だろ”

もう待ちきれなくなったのか、神様からの催促。

「もう、わかりました。どうぞ」

ちゃんと活躍した所をタロウに見せれたし、仕方ないか。
こんな事で神様にヘソを曲げられても困るから、諦めて交代してあげる。
「どうぞ」と言い終わらないウチに、体が自分の思った通りに動かなくなった。
神様の憑依の割合は80%ぐらいじゃなかろうか、私の自由になるのは口から言葉を発するだけ。
洗練された体の動きが、私の中に蓄積されてゆくのを感じる。
きっと神様が100%の憑依にしないのは、私に神様の動きを教えているからだと思う。
筋肉の動き・目線・体幹・タイミング・足運びを、私も神様の意図に乗ってトレースし自分の物に出来る様にする。
私の体で出来た事だ、持ち主の私が再現出来ない訳が無いんだよね。
神様は矢を片手に二本持って、矢をつがえたと思った瞬間に素早く引き絞って放つ。
ボシュッ・・・ボシュッ
速い!
私の知る弓術は、もっとゆっくりと引き絞って狙いを定めてから放つ。
そう言えば、聞いたことがあるな。
江戸時代に平和が長く続いた為に武術は競技としての色が濃くなってしまい、実戦とは程遠いスポーツに近い形になってしまったって。
そりゃそうだよね、刀だって戦国時代じゃ護身用とか武器だし。
弓も一本ずつあんなにじっくりと射ってたら実戦じゃ話にならないよね。
銃が生まれる前は世界中の戦争で、最も人の命を奪った武器は弓だって聞いた事がある。
その超一流の技術を私は今実戦で体感しているんだ。
ボシュッ・・・ボシュッ
一本射終わると手に握り込んでいたもう一本をつがえて素早く引き絞って放つ。
矢筒からまた二本、矢羽の辺りを掴んで前に持ってきては二連射を繰り返す。
弓を構えている者には容赦なく急所に刺さり、盾を構える者には盾からはみ出した部分に当ててゆく。
これ本当に私の体!?
速さも凄いのに、とんでもない命中精度だよ。
あっと言う間に矢筒をカラにすると、タロウが背負って貰っていた矢を取り出させて矢筒に詰め終わる。
ボシュッ・・・ボシュッ
再び容赦の無い二連射の矢が敵に襲い掛かった。
新たに詰めた矢が無くなる頃には、まともに立っている敵はいなくなっちゃってた。
さすが神様・・・凄いなぁ。
私達は近寄って行き、そこかしこに逃げようと這いまわったりする敵に止めを刺し始める。
今回は情状酌量の余地も無いものね。
弓を背に戻した神様は薙刀もどきで敵に止めを刺して回る。
ジュリアさんもそれに加わってくれた。
タロウはそれらには構わずに、囮にされていた男の死体を縛る縄を切った。
蘇生をする為だろう、死体を横たわらせて両手をかざすのが見える。
呻いて転がる敵にバンバン止めを刺していく神様、けれどその手が止まりタロウの方を見る。
タロウの方では蘇生が終わった様子。
死体だった男がフラフラと立ち上がって、縛られた木の洞から何かを取り出している。
何してるんだろ?
PCはこちらに背中を向けているので顔は見えない。
タロウが懸命に話しかけているみたいだけど、聞いているのかすら怪しい。
やがてこちらを向いた男の顔は敵にやられでもしたのだろうか、ズタズタに切り裂かれていた。
エルザちゃんがジュリアさんに本人かどうかの確認をして欲しいとこちらにやってきていた。
そもそも私達は会ったことが無いから顔を知らないんだった。
でも何か変だなぁ・・・
顔がズタズタのまま・・・タロウの魔法は死体になってる間に傷つけられていても元に戻るハズなのに。
あれは死体になる前についた傷って事だよね、人相を悟られない為にワザと付けた傷って可能性も十分にあるじゃない・・・。
あの男はPCになりすました偽物かもしれないし、一旦拘束して場所を変えよう。

「神様、体のコントロールを私に」

とにかく怪しい動きをしている男を拘束して、タロウの安全を確保しなくちゃ。
神様が私の憑依を解くと同時に、私はタロウの方に向かって走り出す。

「タロ」

私は走りながらタロウに警告をしようとした瞬間、生き返った男が杖を握って何かを唱えた。
途端に男を中心として私達の足元に魔法陣が浮かび上がって来た。
うわっ何これ!
あの男何なの、PCの偽物だってバレる前に何か仕掛けて来たって事?
魔法の起動式って、杖や体に描いて起動させる物なんじゃなかったっけ・・・
おっきい・・・、半径二十メートルはあろうかと言うぐらいの大きさの魔法陣だ。
これってまさか!杖や体に描く量じゃ足りないぐらいの大規模な魔法の起動式なの!?
私の位置からじゃまだ距離がある。
拘束で止められるか判らない、ここは確実に止められなくちゃ。

「神様手伝って!」

私は右手に持った薙刀もどきを偽PCに向かって、投擲の要領で投げつけてやる。
槍の投擲なんてやった事はないけれど、たぶん神様が補正してくれるハズ。
シュン・・ズボッ
私の投げた薙刀もどきが偽PCに突き刺さった。
偽PCは胸を貫かれたままでタロウを見たままだ。
倒れてもいないし魔法陣も消えていない、どうして!?

”だめだ、術者を殺してももう止まらない。逃げろ!”

足元の魔法陣が強く発光してきた。
魔法を止める方法は無いの!?

”無い!”

魔法の発動に必要なハズの魔道炉も見当たらない、きっと地中にあるんだろう。
地中に描かれた魔法の起動式を、今更消すのなんて間に合わない。
止めるのは間に合わないのなら、せめてタロウを守るんだ!
タロウがフードを被って頭をかばって伏せてるのが見えた。
持てる全力でタロウの傍に走り込んだ私は、タロウに覆いかぶさった。
私はタロウに約束したんだ。
今度こそタロウを守ってみせる。
死なせない、絶対に死なせないよ!
タロウの頭を掻き抱きながら。

「タロウ、お願い!生きて」

私が言葉を言い終える前に、全身が光に包まれた。

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