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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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スズ④

町に戻ってからみんなでお昼を食べる。
タロウもエルザちゃんを盗み見たりはしなくなった。
私の事をチラチラと見て、目が合うとサッと逸らすぐらいに劇的な変化。
うん、バッチリ。効果は抜群だ。
かなり恥ずかしい思いをしたけれど、タロウにはかなりの効果があったね。
午後には斡旋所にタロウと一緒に行って、リードさんの商隊の護衛を正式契約する書類を作った。
食事もおいしいし、目的地の方向も一緒だから特に問題は無いかな。
それに商隊が狙われているのか、私達が狙われているのかわかんないけど。
PCが四人いた方が守り易い事は確かだもんね。
護衛の契約を終えてからタロウが防具屋に行くと言うので付いて行った。
弓矢対策にバックラーを少し大き目の盾に買い替えるみたい、今後も狙われるなら必要だよね。
そう言えば、タロウがいつも首にマフラーを巻いているのはファッションじゃなく「弱点の首を守っていると見せかける為です」とか言ってたっけ。
私も何か特徴的な物を身に着けようかな・・・
帽子とかスカーフとか。
その後は市場や服屋を見て、夕方には商館にもどった。
ちょっぴりデートみたいで楽しかった。

夜はリードさんを待ってからの食事、リードさんの様子が変。何かあったみたい。
食事を終えてからリードさんから聞かされたのは
私達がこの世界に来て最初に訪れた村の人達が、老人・子供・女性を含め全員殺されていたという事。
ドガの町のエディが行方不明な事。
この町のPC四人が日が落ちても戻らない事。
この三つだった・・・。
それを聞かされた時、私は酷く動揺した。
私達が助け出し、沢山遊んだあの子供達が殺された!
親切にしてくれた村の人達が全部!!
私達が巻き込んだ?リーダーのPCの顔を見ていたから?
エディもきっと襲われたんだ。
この町のPCの四人も同じようにきっと・・・
私の所為?
私がここに来たから?
どうして?
どうして?

「うぁぁぁぁぁ・・・・」

私は子供たちが容赦なく殺される姿を想像したら涙が止まらなくなってしまった。
子供たちの感じたであろう恐怖や悲惨さを想像して、また手が震えてしまっている。
泣き崩れる私とは違ってタロウは四人のPCを助けに行こうとしている。

「行っちゃダメーーーー」

私は思わず叫んでしまい、涙ながらにタロウを引き留めた。

「そんな会った事も無い人ほっとこうよ、タロウが助けに行く理由なんて無いんだよ!」

タロウは私の頭をひと撫でして行ってしまった。
何で?
タロウは弱いんだよ?
少し走っただけで息は上がるし、ナイフの腕も上がらないし
ダメダメ!行かせちゃダメ!
私も立ち上がって追いかけようとした。
でも、足が震えて椅子から立ち上がる事も出来ない。
怖い・・・もしもタロウが死んだら、そう考えたら震えが止まらない。
私の頭の中で殺された村の女性や子供達と、昨日の襲撃でみんな死んでしまっていた光景がフラッシュバックして重なってしまう。
私だけが生き残り、死体だらけの村の中を後悔しながらフラフラとさ迷う。
そんな光景が頭の中で何度も繰り広げられる。
エルザちゃんが「これを飲んでね」と言って何かの薬と水をくれた。
言われた通りに薬と水を飲むと段々と眠くなり、私の意識はそこで途絶えた。
その後エルザちゃんが私を自室まで連れてってくれたらしい。
どうやらアレはエルザちゃん自家製の睡眠薬だそうだ。
私は「タロウが死んじゃう」とか「行かせちゃダメぇ」とうわ言みたいに言っていたと、後でエルザから聞かされた。
色々と恥ずかしい。

翌朝、日の出と共に起き出したけれど寝起きの頭がスッキリしない。
呂律も回っていないのはクスリの所為だとエルザに聞かされた。
少々効き目が強かったとの事。
商館の前でタロウとマインさんの帰りを待つ事にした。
入口の石段に座っていると、エルザちゃんが隣に座ってくれた。
彼女も一緒に待ってくれる事みたい。
一時間、二時間と時間が過ぎる中。私は何で付いて行かなかったのか後悔をし始める。
私が守るって決めたのに、今頃敵に襲われていたらどうしよう。
このまま戻って来なかったらどうしよう。

不安ばかりが頭をよぎるから、つい立ち上がってウロウロとしちゃってた。
そこへようやくタロウとマインさんが戻って来た。
よかった、本当に・・・これでまだ私はこの世界にい立っていられる。
二人の話で、これから戦闘になるんだって教えられた。
村人の殺害などの罪状からも、敵に情けをかけてはいけないんだって。
ヘタにこの敵を生かせば、どこかで村の子供達みたいな悲劇が起こっちゃう。それを許しちゃいけないんだよね。
私が武装を部屋に取りに行くと、タロウが私の部屋に心配して来てくれたみたい。
タロウは一晩中寝ないで歩き回っていたからか、目の下に薄っすらとクマが見える。
何だか頑張ってるタロウが妙に愛しく思えた。
最初の頃はぽっちゃり系の体型だったのに、今ではムダな肉も少なくなってきている。
毎日歩いてムダに食べないからなんだろうね。
タロウは二言三言話してすぐに行ってしまったけれども、私を心配して来てくれた事が嬉しくてテンションが上がってきた。
今度こそ・・・
タロウ達と合流して斡旋所に行くと、女の人が三人いた。
どうやら生還した三人のPCみたい。
特徴はあるけれど、どの人も神様が自分のキャラに選ぶだけあって綺麗な人ばっかりだ。
紹介された名前はケイト・アンナ・ジュリア。
挨拶を交わしてみると、どの人もクセが強そう。
上手くやっていけるかな?
そんな中、町の緊急時に鳴らされる鐘が響いた。
血相を変えて斡旋所に飛び込んで来たのは、リードさん。
何でも街道が謎の集団に封鎖されてしまったとか。
しかも、この集団は街道を通る一般の人を殺してしまっているみたい。
もう被害が十数人にもなるんで、町から自警団と斡旋所にも彼らの殲滅を依頼しに来たとの事。
さっそく中で依頼書が作られて、斡旋所のお姉さんから発表された。
依頼は街道の敵集団の殲滅で、PCである以上不参加にはペナルティがあるんだって。
そんな事をほっとける訳がない、参加するに決まってる。
私は斡旋所のお姉さんからの、依頼の内容の書類を確認して署名をした。
リードさんが自警団との話し合いから戻るのを待ってから、私達はさっそく出発した。
向かうのは行方不明のPCの死体が木に縛られている場所だって。
タロウの指示で私は最後尾、と言ってもタロウの後ろ。
何かあっても直ぐに助けられる位置で良かった。
死体の縛られた木の見える辺りで、ケイトって人とマインさんがタロウの指示で別行動に移った。
どちらも身軽に森の中へ消えて行っちゃった。
私達は堂々と進むらしい。
暫く進んだら、弓矢が左右から飛んできた。
私達は挟まれたみたい、でも暫く盾で防いでいたら右側の弓矢は止まった。
ケイトとマインさんの奇襲が成功したみたい、残るは左ね。
タロウから私に弓で迎え撃って欲しいってお願いされた。
神様がやりたがってるけど、今はダメ、私がやる。
神様には悪いけど、ここはキッパリと断った。
情けない姿ばかり見せて来た私の見せ場だけに、ここは譲れないのだ。
一射目は外したけど、それ以外はちゃんと当たったかな。
致命傷は殆ど無いけど、弓矢を射込んで来る敵はいなくなった。
へへん、どうだ!
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