挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

30/71

スズ②

旅が賑やかになったのは嬉しい。
何より同性のPCには色々と相談できるし。
まぁ、二人とも真面目に仕事してるから話しかけて邪魔する訳にもいかないんだけどね。
村を出てからは、また商隊の後ろをタロウと話ながらのんびり歩いてた。
こんな旅も悪くないなって、ゆっくりとした旅路を楽しんでた。
そんな時、突然沢山の矢が襲ってきた。
馬が倒れておじさん達にも矢が刺さった、また盗賊に違いない。
敵は遠くから弓矢で攻撃して来るだけで直接は襲って来ないし、周りの草むらが高くて敵の姿も見えない。
先日の盗賊の時は私何にもしてないし、タロウに少し良い所見せておかないといけないよね。
私はタロウに「ちょっと行ってくるね」と言って颯爽と飛び出した。
私は草むらに飛び込み弓を射る一団に向かって走った、矢の角度からこの辺りだろうと思われる場所には誰もいなかった。
キョロキョロしてたら矢が飛んできた。
こんな矢に当たってやるもんか。
矢をヒョイと避けて「どこから?」と思って探してみると、草むらをかき分けて逃げ出したみたい。
急いで追いかけてみたけれど、もう居ない・・・
そうしたらまた少し離れた場所から私に向けて矢を射かけて来る。
もうっ!頭にくる。
さっきよりも急いで矢を射て来た場所に急いでみても既にいない・・・
ムキー!
4~5人が逃げながら矢を射ているみたい、一人に追いつきそうになると別の場所の人が矢を射かけてくる。
やっきになって追いかけていると、遠くでドガーーンという音が聞こえた。エルザちゃん?
今のは多分エルザちゃんの魔法だ、でも何だか音が遠い。
振り返って見ると荷馬車なんて見えない。
いつの間にか、かなり遠くまで来ちゃってたのかな。
”お前、気づいてないのか?こいつら囮だぞ”
「えっ!?」
”お前を引き離す為に誘導されたんだよ”
「そんな!」
神様の言葉にゾッとする、とにかく急いで戻らないと。
私は追いかける足を止めて、音のした方向へと駆け出した。
狙いも適当に、私の方に矢が飛んでくる。
けれどそんなの相手にしてられない。
来た道を走っても走っても荷馬車が見えて来ない。
こんなに離されてたのね。
ようやく見えて来た商隊の荷馬車に駆け寄ってみると、動く物は何も無かった。
「えっ?」
荷馬車の傍らにマインが倒れていた。
抱き起こしてみたけど目を開けたまま動かない、既に死んでいるのが判った。
荷馬車の御者台にはおじさん達とリードさんが血まみれになって倒れていた。
地面まで滴り落ちた血液の量で、こちらも既に死んでいるのって判断できた。
エルザちゃんとタロウは・・・
荷馬車の周りにはいない。周囲を探って見ると、爆心地みたいに草が円になって薙ぎ倒された場所が見える。
エルザちゃんの魔法の後だ。そこまで近づいてみると、盾に寄りそうみたいにエルザちゃんの死体があった。
矢が沢山刺さって死んでいた。
エルザちゃんの死体と盾を担いでマインの横に寝かせると、後悔が襲ってきた。
みんな死んじゃった・・・私が離れたから。
良い所を見せようって遊び半分に飛び出したから。
タロウはどこ・・・?
近くには居ない、死体も無い。
どこ・・・どこ、どこ!
気が狂いそうだ・・・だって私が、私が
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー」
色々な感情が渦巻いて行く。
みんなを殺された恨み、この場を離れ囮に引っかかった後悔。
出来たばかりの友達、この世界に来てずっと一緒にいた頼りにしていた存在。
みんないなくなっちゃった。
涙が自然と溢れて来て止まらない。
「そんなのイヤだ・・・」
もう、無理だ・・・こんなの私はもう耐えきれないよ。
腰の鞘からナイフを抜き、首にあてがう。
この世界で手にした物の全てを失った。
こんな状態で、この後の世界を生きないといけないのは辛すぎる。
”おい、待て”
神様の慌てた声が聞こえた。
「ごめんなさい、神様。私じゃ無理だったね。みんな、タロウごめんね」
神様に謝って、ナイフに力を込めようとすると
”落ち着け、東の草むらと森の堺の辺りを良く見て見ろ”
ナイフを止めてそちらを見る。涙でぼやける視界の中、林の木に矢が刺さっているのが見えた。
「あんな所に矢が・・・?何で」
”あいつはまだ生きているかもしれねぇぞ”
言われて気が付いた、そうだタロウの死体が無い!
この中で一番弱いタロウは真っ先に死んだのだろうと思っていた。
もしかしたら生きているかも!
あの方向にタロウが逃げて、矢を射かけられたんだとしたら辻褄が合う。
私は慌てて立ち上がり、ナイフを鞘へ戻すと矢の方向へと駆け出した。
私が行くまで生きてて!
「タローーーーー」
私は叫びながら走った。
タロウに聞こえればいい。
たとえ私の声に敵が気づいたとしても、敵が私に向かってくればいいんだ。
それならばタロウの生存の確率もあがるに違いない!
「タローーーーー」
走りながら追跡の痕跡を探していると、また矢があった。
間違いなく何かを追いかけて放った矢だ、回収をしていないからそんな暇も無く急いでいたんだろう。
この方向で間違いが無いと確信した。
「タローーーーー」
叫びながら奥へ進む。
向かう先に崖があった。
「おおーーい、こっちだーー」
ってタロウの声が聞こえて来た。
私はまさかと思いながら崖の下を覗き込む。するとタロウが生きてこちらに手を振っていた。
凄い、生きててくれた!
うれしい、ありがとう。大好き!
もう色んな感情が次々と湧いてきて、この時何を話したか良く覚えていない。
前が見えなくなるぐらいに涙が溢れ、みっともないぐらい大声を上げて泣き叫んだ。
私が落ち着くのを待ってから、タロウを引き上げる為のロープを持ってきてと頼まれた。
荷馬車に戻ってロープを見つけてから戻って来ると、タロウがピンチになっていた。
私はロープを木に巻き付けてロープを伝って敵に向かって行ったけど、またしても逃げられちゃった。
タロウは目を離すとすぐに危ない目に合うみたい、私が離れたらきっとすぐ死んじゃうかもしれない。
それはとっても怖い事だって突きつけられた。
タロウが生きていれば皆助かる、だからこそ敵もタロウを執拗に狙ってくるんだ。
崖を登って商隊に戻って、タロウがみんなを助けた。
全て無くしたと思った物が、またちゃんと私の元に戻って来たのだ。
私はタロウに助けて貰ったんだね。
商隊は予定していた町へと向かって移動を始めた。
大幅に時間が遅れていて、日が沈み始めちゃってたからだ。
商隊と私達を夕日が赤く染め上げる。
夕日のシルエットとなったタロウが、このまま闇に飲まれて消えてしまいそう。
そんな事を考えてしまったら、敵もとっくにいなくなったのに私の体が震えてきた。
私は慌ててタロウの上着の裾を震える手で掴んで、闇の中に消えない様に引き留めた。
タロウは私が裾を掴んでいるのに気付いてたけれど何も言わずにいてくれた。
私はその事に甘えて、町に着くまで裾を離さなかった。




+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ