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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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凶報

日が落ちてから数時間。
僕らはリードさんが戻って来るのを待っていた。
商館でリードさんと食事をする予定なのだ。
日没から二時間程経った頃にリードさんは戻って来た。
その後僕らは商館の食堂で夕食の為に集まると、リードさんが何やら暗い顔をしている。

「どうかしましたか?顔色が悪いみたいですが」

僕は少し気になったので聞いてみた。

「先に食事をしてしまいましょう、話はその後に致します」

僕は「判りました」と答えて食事を始める。
あまりいい話では無さそうなので、さっさと食べて心の準備をしておく事にしよう。
みんなが食べ終わるのを待ってリードさんが話を切り出す。

「今日。タロウさんとすずさんの正式な護衛の契約に署名して頂き、ありがとうございます」

リードさんはペコリと僕らの方に頭を下げる。
つられて僕らも座ったまま頭を下げた。

「先程、斡旋所へ契約書を受け取りに行った時に聞いた話なのですが。ドガの町の手前にあった小さな村が何者かによって皆殺しにされていたそうです」

あ、あの村なのか。僕とスズは顔を見合わせる。
スズが堪らずリードさんに聞き直す。

「あのっ、子供や老人や女性は?」

そう言えば、あの村に戻った後、スズは子供達と遊んであげてたっけ・・・
その問いにリードさんは首を振って

「例外なく殺されていたそうです」

その答えにスズはズルっと脱力して椅子にもたれ掛かる。
せっかく嫌な記憶も消してもとの村に戻したのに、それを女子供も全員か・・・
滅茶苦茶だ、目撃者は全て殺して行くつもりか。
シンパシーのPC達の仕業である確証は無いが、流石に怒りを覚える。

「それから斡旋所からあなた方への注意喚起をするようにとの事です」

リードさんの言葉に疑問を持ったマインさんが聞き直す。

「あなた方?」
「はい、斡旋所からは斡旋所からの仕事を請け負った事のある方全員に」
「どういう内容の注意喚起なんですか?」

注意喚起も何に対してどんな注意をなのかマインさんがリードさんに再び聞く。

「何でも、ドガの町とこの町の仕事を請け負った人達がみんな戻って来ないそうでして・・・」
「なっ・・・!!」

僕は驚きの余り絶句してしまう。
ドガの町ってエディも戻って来ていないって事か。

「朝に仕事を請け負って、夕方には戻る予定の者が戻って来ないそうなんです。ドガでもこの町でも」

まさか・・・僕らだけを狙っていたんじゃなく、目につくPCを全員狙っているのか!
今日、僕らが行った時の斡旋所は何も言ってこなかった。
だとすると、村の事もドガの事も情報が入って来たのはその後。
この町のPCが仕事を請け負ったのが今朝、それが今日の日没までに全員帰って来ていない・・・
今日やられたんだ、ならまだ間に合うかも。

「スズ!行けますか?これから朝まで歩くかもしれません」

僕は呆けて脱力しているスズの両肩を掴んで揺さぶる。

「私達のいた村・・・私達の所為で」
「違います!彼らに顔を見られたシンパシーのPCは元から彼らを生かす気が無かったんです。恐らくエディもPCだと言うだけの理由で狙われたのでしょう」
「えっ!?」

しまった。余計な一言だったか・・・

「そして今、この町のPCが狙われました。一人も戻って来ていないなら、町の外で殺されたのでしょう。でも、朝までに見つければその人を助けられます。僕が生き返らせる事が出来ます、その人達を助けに行きましょう」
「無理だよ!エディでも殺されて、この町のPCでも敵わなくて。それにどこで襲われたのかもわかんないし、もう外だって真っ暗だよ!昨日だってみんな死んじゃって、無理、無理だよ・・・」

この世界に来ての数少ない知人であるエディまでも狙われて行方不明になってしまった。
スズのメンタルがかなり脆いのは解ってはいたが、こうまで事が重なるとダメみたいだ。
前回、僕以外が全員殺されて少しはメンタルも強くなったかと思ったんだけれどな・・・
手も震えが止まらないのか、両手を組んで俯いてしまっている。
いざと言う時にスズの神様に頼れれば何とかなるかもしれないが、こんなメンタルの状態で連れ歩くのは気が引けた。
「判りました、スズはここにいて下さい」
「だ、だめだよ。タロウは弱いんだから死んじゃうよ!ね、ねぇ一緒にここに居ようよ・・・」
僕はスズに首を振ると
「今行かないと間に合わないかもしれないんです。それに敵に会ったら逃げて来ますよ。逃げ足だけは早いんで」

メタボ気味のお腹で見栄を張る。
さて、急がないと。
一応この商隊のリーダーであるリードさんにはちゃんと断って行く事にする。

「すみません、ちょっと出てきます」

リードさんも呆れ顔で僕に聞いて来る。

「救助に行くんですか?」
「はい、朝までには戻るつもりです。後はよろしくお願いします」

準備が必要なので、急いで部屋を出ようと席を立つ。

「あたしも行くよ、あんたよりは丈夫だし」

驚いた事にマインが同行を申し出てきた。
僕は勿論ありがたいのだけど。

「いいんですか?」
「変に後悔したく無いだけさ、それにこっちの打算もある。気にしないで」
「判りました、お願いします。では、準備が出来たら館の入口へ」
「判った」

マインはさっさと扉を出て自室へと向かって行った。
話について行けないのか人助けに興味が無いのか、突っ立っているエルザに

「エルザ、スズを頼みます」

強引にスズの世話を頼んで部屋を後にする。
僕が出て行った部屋の方からは

「行っちゃだめぇーー」

スズの半泣きの声が聞こえたが、説得する時間も惜しいので僕も荷物を取りに行く。
ランタンと地図とククリナイフを持って外套を着る、外套はブラウンなので夜間に少しでも目立たなくなればとの思いからだ。
荷物を纏めていると神様から

”ここで四人のPCを蘇生する事は大きなポイントになる上に。シンパシーのPC計画を阻害する意味でも重要です、タロウの判断を支持します”
「ありがとうございます」

短くはあるが、神様と行動の指針を確認し、入口へと急ぐ。
館の入口に行くと、マインはもう来ていた。

「じゃあ行きましょうか」

マインを促して僕が先を歩く。

「何処に向かうんだい?」
「斡旋所です。PCが何の仕事を請け負ったのか判れば場所も特定できるかもしれません」
「なるほど、判った。まずは斡旋所に向かおう」

僕らはランタンに火を灯して斡旋所に向かった。
斡旋所に入ると受付には女性がいた、ここは何時までやっているんだろう。

「こんばんは、リードさんに話を聞いて来ました」
「こんばんは、昼間はご苦労様でした。ええ注意して下さいとお願いしたのですが」
「いえ。仕事を受けて戻って来ていない人の受けた仕事と、仕事の作業エリアの特定をお願いしたいんです」
「えっとそれは個人情報になるので、私の判断では・・・」
「この件には心当たりがあります、戻って来ないPCは既に殺されているでしょう。僕はこの殺されたPC達を蘇生させるスキルを持っていますので、彼らを探しに行くつもりです。お願いします、彼らの情報を」
「少々お待ちください、上司と相談しますので」

受付の女性は少し考えると奥の部屋へ入り扉を閉めてしまった。
何だろう・・・中に運営の上司との通信手段とかがあるのかな?
僕とマインは周辺の地図を見てどの辺りから回るかを話し合って待っていた。
暫くして、受付の女性が部屋から出て来ると僕らに告げた。

「上司から許可が出ました。今朝方各人が受けて行った仕事と予想される移動ルートをレクチャーします」

しかし、斡旋の仕事を護衛しかして来なかったのかマインが聞いてきた。

「どうして移動ルートが判るのさ?」
「斡旋の仕事は皆さん3つ4つ受けて行かれます。その全部をこなす為には朝から夕方までルートを決めて回らなくてはいけません。そのルートが判れば倒れている場所も予測が付きます」
「毎日同じルートを回るのか?」
「そうです、新しく仕事を受けたりしなければルートを変える事はまず無いでしょう。効率が落ちますのし縄張りもありますからね。では、地図に予想ルートを書き込んできます」

受付の女性は各PCの決めた縄張りまで把握しているのだろうか、だとしたらとんでもない情報収集能力だ。
作業は10分程で終わり、僕らはその地図を受け取り。

「ルートは4つなので4名なのですね。名前は教えて貰ってもかまいませんか?」
PCについて僕は質問してみたが、彼女は少し悩んでから

「今回は緊急措置として、こちらのデータをお渡ししておきます」

僕達は追加で一枚の紙を渡された。
これは今回行方不明のままの4人の簡単な資料だ。

「判りました、ありがとうございます。では行ってきます」
「はい、お気をつけて」

斡旋所を後にして、僕とマインは夜の森へと足を踏み入れた。
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