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童貞で三十歳を迎えたら魔法使いになってたよ! 作者:下北沢
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山賊

荷馬車の歩みは緩く、現代人の僕でも付いて行けるスピードなのは助かる。
二頭引きなのにこの速度なのだから、荷台には商品が満載なのだろう。
日も高くなった頃、リードさんが僕らにもお昼ご飯を渡してくれた。
歩きながら食べられる、ローストチキンと香草をパンで挟んだサンドイッチだ。
齧ってみると胡椒も効いていて中々においしい。
僕らは同行者だけれど、いざという時に見捨てられない為にはこれぐらいのサービスはしておかないと安心出来ないのかな。
僕らは馬車の最後尾を歩きながら武器を振り回し、スキル上げを移動のついでにやっている。
マインとエルザは真面目に仕事をしているので、まだ挨拶以外の会話は無い。
スズと彼女達PCの職は何だろうと言う話になって。
マインは前世が競技のアーチェリー選手で現在狩人との予想、エルザは小柄なので(胸も小柄)前世は新体操の選手で現在は忍者だとか。
僕らは勝手にイメージを膨らませてながら、二人についてあれこれ想像を言い合い歩く。
午後になって街道沿いの小川で馬に休憩をさせて水を与えたりする。
その間もマインとエルザは高台から周囲を警戒している、よっぽど治安が悪いのだろうか?
そういえば中世のヨーロッパもかなり治安が悪かったらしい、この世界も戦争が絶えないのならどこの国も疲弊しているのだろう。
馬を十分に休ませたので、再び出発する。
それから一時間程移動した頃に馬車が止まった。
何事かと前方を見ると、街道を塞いで人が何人も立っているのが見える。
馬車の前方まで行くとマインが前方を見ながら
「あれは盗賊だね、通行料よこせとか荷物置いてけって言うんだろう」
と面倒そうに僕らに説明する。
落ち着いた様子のリードさんはマインとエルザに指示を出す。
「追い散らしただけでは他の人を襲ったりするでしょう。この地域の人達の為にも、きちんした対処をお願いします」
さすがこの世界の人間だ、あの手の者に容赦はしない。暗に殺しておいてくれと言っている。
何度もこんなやりとりをしているのだろう、マインとエルザの腕をを信頼しているみたいだ。
「わかりました、一応話だけ聞いてみるか」
「それじゃー私が行くよ」
ハイハイっと手を上げてエルザが名乗り出る、驚いた事に一人で交渉に行くと言う。
返事も待たずにエルザは、通せんぼしている集団の所へ歩いて行く。
ちょっと心配になった僕は
「一人で大丈夫なんですか?」
とマイン聞いてみるが、マインは
「むしろ一人の方がいいのよ、あの子は」
きっと何かあるんだろう、僕もすずも不思議に思いながらも行方を見守る事にした。
集団に向かってエルザが近づいて行く。
道を塞いでる者達はやって来たのが小柄な女の子である事が分かり、警戒を緩める。
「あのー、ここ通して欲しいんですけど」
エルザの言葉にヘラヘラと笑いながら、スキンヘッドの男が
「通行料を払ってくれりゃ通してやるぜぇ、へへへ」
と嫌らしい笑みを浮かべながら返答を返す。
「いくらなのー?通行料は」
エルザも一応は聞いてみるが、男達はエルザの周りを囲み逃げ道を塞いでゆく。
「荷物の半分は頂こうか、あと女達には俺達の相手を一晩して貰うがな。うははは」
完全にエルザを囲んだのを確認してからスキンヘッドの男は、周囲の男達と一緒になって笑った。
「やれやれです、まともに働きもせずに汗水流して働いた人の物を奪うだけの害虫ですねぇー」
エルザが呟いた直後に彼女の雰囲気が変わる。
懐に入れていた手を出しランタンみたいな物を掲げて、大きく息を吸い込んでから口を閉じる。
ランタンが鈍く赤い光を放つ。
魔道窯の代わりにランタン?燃焼の光だろうか?
”触媒を使った魔法?この世界の魔法とも少し違うみたいです”
神様曰く魔法ではあるらしい、けれども知識には無いとの事。
男達がエルザの行動を不思議に思い、その手にぶら下げられたランタンとエルザを見る。
するとまもなく、一人また一人とバダバタとその場に男達が倒れていく。
何が起こったのか解らずスキンヘッドは慌てるが、声を上げようとした時には地面に倒れ伏していた。
エルザがこちらへ足早に戻って来る。
ランタンの小窓を閉じてこちらに合流すると。
「はぁぁーーー、苦しかった」
と言って深呼吸をするエルザ。
色々疑問な僕はエルザに確認の為に聞いてみる。
「今のは魔法ですか?」
「うーん、毒の術法?まぁ中毒だけどねー。即発動するから便利なの」
術法?魔法式の一つって意味かな?
そう言ってランタンを掲げてウフフと笑うエルザ。
ランタンの中から黒い石ころみたいな物を僕に渡す。
受取ってみると軽くて固い、炭か石炭ではなかろうかこの黒い物は。
ランタンにはびっしりと魔法陣や起動式が刻み込まれている、これ自体が魔道炉なのかもしれない。
「この炭素の元をランタンの中で酸素と不完全に魔法で燃焼合成し、大量の一酸化炭素の空間を作り出したという所ですか?」
と、僕は思いついた事を言ってみる。
「へぇーー」
僕の問いには答えず、僕の顔を覗き込んで。今更ながら聞いて来る。
「名前何だっけー?」
「タロウです」
「タロウは魔法使いよね?」
「はぁ、回復だけですが」
僕に興味を持ったのか、僕に質問を重ねるエルザ。
「何でー?」
「いや、神様の方針で」
「ふーん」
何だか好奇心旺盛に聞いて来るなぁ、チラリとマインを見ると助け船を出してくれた。
「もう近づいても大丈夫か?エルザ」
「うん、もう平気なはずー」
僕の方からマインに向き直って返事を返すエルザ、どうやら気が逸れたみたいだ。
マインが倒れている男達に近寄って行くので、僕もそれに付いて行ってみる。
すると外套の下から刺突武器のレイピアだかフルーレだかを抜いて、躊躇無く盗賊を刺して行く。
肩の窪みの部分からズブズブと斜めにかなり深くまで刺してから抜く。
一人二人と刺して、全ての倒れた男達を作業の様に刺して回った。
刺した時にビクンッと動く者もいれば、何の反応も示さず刺されるがままの者もいる。
マインが刺している場所は確か缺盆とか言うんだっけ、何かの時代小説で読んだ事がある。
鎖骨の凹みから刃を突き入れて肺を貫いて心臓を刺し、心臓からの出血は肺が受ける。
肺に心臓から溢れた血が貯まるから外への出血が少なくて綺麗な死体になるそうだ。
実際に見たのは初めてだが、確かに外側は血で汚れた様子もない。
一通り殺しきってから自分の行為にバツが悪くなったのか。
「これでも最初は殺す事に抵抗はあったんだ、でも一人でも見逃すと弱い奴がまた狙われて殺される。そんな現場を見てたらいつの間にか出来る様になっちまっただけさ」
言い訳の様な事を僕に語る。
「僕らもそうでしたよ、最初に着いた村は皆殺しになっていました」
僕もフォローの言葉を入れてみる。
マインは僕の顔をジッと見てから、ため息をつき
「この世界、こんなのばっかりだ。簡単に他人を殺して奪う奴らが沢山いるんだよな」
喋りながらも死体を一か所に纏め始める。
何となく僕も運ぶのを手伝った。
「この辺りなら焼いても問題ないでしょう」
リードさん達もやってきた。そこらで集めて来たのだろう、枯れ枝や枯草を死体に乗せてて火を点けた。
野晒しにするのはこの世界でもあまり良い事では無いのかもしれない。
街道を塞いでいたバリケードみたいな物をどけて、僕らは先を急ぐ。
日が落ちる前に街道沿いにある今日の目的地である村に着きたいらしい。
邪魔が入らなければ時間的な余裕はかなりあったらしいのだけれど・・・。
日が暮れ掛かった頃、ようやく目的地の村が見えて来た。
今日はあの村の横で一泊するとの事だ。
リードさんも本当はもっと早くに着いて、商売をしたかったらしい。
今日何も出来なかったから、この村にし二泊していく事になるだろうとマインは言っていた。
馬小屋を借りてエサと水をやって休ませると、僕らは荷物の見張りも兼ねて荷馬車の傍でキャンプをする事になった。
食事と水はリードさんが村にお金を支払い提供して貰える。
テントは商隊用の大きなテントに入れて貰えるらしいので僕もスズも設営を手伝った。
食事を終えると辺りは真っ暗になっていた。
御者三人とマインとエルザで火の番と見張りを、正式に雇われている5人が交代でやるらしい。
食事の後すずが着替えてきて、服のクリーニングを頼んできたのでやっておく。
寝る前に自分の服にもリターンをかけていると、女子テントから話声がする。
女子トークで盛り上がっているらしい、僕はリードさんと話しても仕方が無いのでとっとと寝る事にする。
とは言え、今日は10人近くの人間の死を見てしまったので直ぐに眠れる自信はない・・・
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