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第百五十二話 納豆の魔術その二
「俺の国アイヌだろ」
「ああ」
「そうだけれど」
「昔からずっと日本と仲よくて交流も多いんだよ」
 その付き合いの深さがまさに兄弟国家である。彼等と日本の絆はかなりのものなのである。これは琉球とアイヌもまた同じである。
「それで和食とかもよく食うんだけれどな」
「納豆は駄目?」
「アイヌ連邦じゃ人気ないの?」
「熊に羊にジャガイモに海の幸な」
 どれもアイヌの特産品である。
「それは大好きだぜ。日本の刺身なんてもうな」
「けれど納豆はなんだ」
「それだけは」
「アイヌでも食わない奴は多いぜ」
「琉球もだ」
 また言ってきたダンだった。
「俺も正直なところな」
「兄弟国家の人達にも敬遠されるなんて」
「納豆って一体」
 何だということだった。
「どんなの食べ物なんだよ」
「日本人だけが食べる魔性の食べ物」
 最早魔物扱いであった。
「それが納豆なんだ」
「何て恐ろしい」
「いや、本当に美味しいから」
 皆がこう言っても家持の態度は変わらなかった。それも全く。
「一度食べてみたらわかるよ」
「その納豆を」
「納豆スパを」
「最初は納豆スパでなくてもいいから」
 譲歩もする家持だった。
「オーソドックスに御飯にかけたりしてね」
「御飯にねえ」
「そうやって食べるんだ、納豆って」
 実はそうしたことも一切知らなかったクラスの皆だった。
「どうやって食べるのかって」
「ずっと謎だったけれど」
「あれっ、知らなかったの?」
 七海はその皆の言葉を聞いて意外といった顔になった。
「知ってると思っていたけれど」
「いや、知らないよ」
「ねえ」
 しかしその皆はこう返すのだった。
「御飯にかけて食べるって」
「あんなのを」
「あんた達も知らなかったの?」
 七海は今度は怪訝な顔でカムイとダンに問うた。
「兄弟国家なのに」
「だからよ。こっちじゃ納豆は食わねえんだろ」
「同じくだ」
 カムイは少し怒ったように、ダンは憮然となって彼女に返した。
「あんなのよ。何で食うんだよ」
「琉球でも和食は普通に食べるがな」
 それでもそれだけはというのである。
「タラコとかは食うけれどな」
「お茶漬けもな」
「何でそういうの食べて納豆は駄目なの?」
 彰子にとってはそれが不思議でならなかった。怪我な顔で首を傾げるのだった。
「それがわからないけれど」
「いや、全然わからねえのはこっちだよ」
「糸を引いたものを口の中に入れるのはな」
 どうしても抵抗があるというのだった。
「食ったら腹壊すだろ」
「如何にも身体に悪そうだ」
「最高にいいよ」
 しかしここで家持はまた言うのである。
「もうね。糖尿病にも痛風にもいいし」
「血も奇麗になるのよ」
「何せ大豆だし」
 彰子と七海も言う。しかし誰も信じてはいなかった。
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