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第二十話 転校生は美少女だけれどその三
「私の名はラムダス=アグニ」
 流暢な銀河語で聞かれもしないのに名乗る。
「シヴァ家に代々お仕えするお庭番です」
「代々って」
 マウリアにはまだカーストの名残りが残っている。そのせいでこうした代々仕えている者もいるのである。
「そしてガードマンでもあります」
「そうなんですか」
「はい」
 彼は答えた。
「そして私は」
 今度はメイド服の少女が名乗ってきた。黒い肌にそのメイド服が似合って可愛い。外見だけは。
「ベッキー=スーリア。セーラ様専属のメイドです」
「専属、ねえ」
「それだけはいい話だよな」
「そうだな」
 男達の中にはそれには頷く者もいた。もっとも他の部分に関しては別だが。
「そして妖術使いです」
 これである。耳から消し去りたい言葉であった。
「例えばですね」
「あの、ベッキーさん」
 先生が慌てて彼女に声をかける。
「若しかしてここで妖術を?」
「ええ、そうですけれど」
 ベッキーはしれっとした顔でそれに返す。
「それが何か」
「いえ、それはね」
 先生は引き攣った顔でそれに応える。
「幾ら何でも、その」
「大丈夫です、穏やかな術ですから」
 ベッキーはにこりと笑ってそんな先生に対して言う。
「死者を蘇らせて踊ってもらうだけですから」
「おい、それって」
 クラスの面々はそれを聞いて不吉な顔で囁き合う。
「あれだよなあ」
「ああ、ブードー教」
 この時代にもある宗教だ。ハイチを中心としてありキリスト教とアフリカ古来の宗教が混ざり合った独特の教義と儀式を持っている。その中に死者を使役するゾンビというのがある。これはまりにも有名である。
「それに踊ってもらうだけですから」
「ちょっと待って下さい」
 ここで彰子が突っ込む。
「はい」
「火葬なんですけれど、連合は」
「あら」
「いや、彰子ちゃんそういう問題じゃないぞ」
「そうだよ」
 クラスメイト達はそのぼけた突っ込みに内心突っ込み返した。
「それじゃあ死体さん達は」
「御安心下さい」
 だがベッキーは負けてはいなかった。
「骸骨になってもできますから」
「骸骨って・・・・・・」
「まさか」
「それでは」
 ベッキーの目が不気味な光を放って来た。そして何やらよくわからない言葉で呪文の詠唱をはじめる。
「・・・・・・・・・」
「さあ出でよ冥府の者達と申しております」
 セーラが通訳をする。
「・・・・・・・・・」
「我が元に集え。そして再び動き出さんと」
「いや、それはいいから」
 皆説明を続けるセーラに対して言う。
「その呪文と妖術止めさせて」
「今はいいから」
「あら、そうなのですか」
 セーラはそれを受けて目をぱちくりとさせた。
「それでは。ベッキー」
「はい」
 ベッキーは呪文の詠唱を止めてそれに応える。
「ストップです」
「わかりました。では」
 ベッキーはそれを受けて妖術を完全に止めた。教室を何時の間にか覆っていた暗雲も消え平和が戻った。
「やれやれ」
「一体どうなることかと」
「それではあらためて」
 セーラはそんな皆をよそにまた挨拶をはじめた。
「宜しくお願いしますね」
「ああ、こちらこそ」
「宜しくね」
「はい」
 やっとまともなにこやかな挨拶になった。だが問題はまだ残っていた。
「あの、シヴァさん」
 先生がセーラに尋ねてきたのだ。
「はい」
 セーラは澄んだ緑の目を先生に向けた。本当に森の木々の様に奇麗な目である。
「一つ聞きたいことがあるのだけれど」
「何でしょうか」
「転校生は一人になっているのだけれど」
「はい」
 セーラはやはりここでもにこりと笑った。
「そうです」
「けれど三人いるのだけれど」
「はい、二人は従者ですから」
「あの、だからね」
 話が噛み合わない。
「どうしてその二人がここにいるのか」
「御安心下さい、理事長に許可は取っています」
「ええと理事長っていうと」
「国防長官のあの人?」
「確か」
 皆記憶を辿る。この学園は八条家が理事を務め八条義統が理事長をしているのである。数多い彼の肩書きの中の一つでもある。
「はい、そうです」
 セーラは答えた。
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