第百三十八話 マンドラゴラその四
「まあどっちみち御前に誰かを幸せになんかできるものか」
「私ってそこまで性格悪いかしら」
「悪いな」
ここまで言い切ってみせる。
「だから向いてるんだよ。いいな」
「じゃああんたに真っ先に魔術かけてやるからね」
そんなことを手話で話す。そうこうしている間にラメダスは草のうちの一つに手をかけた。二人はそれを見てヘッドホンの上にさらに手を当てる。そうしてそのうえでラメダスがマンドラゴラのそれを引き抜くその様子を見守るのだった。とにかくその声を聞かないようにして。
ラメダスはその草を引き抜いた。するとすぐに耳をつんざくような凄まじい悲鳴が聞こえてきた。それは二人にも聞こえたのだった。
その叫び声を聞いて倒れそうになる。耳栓にヘッドホンをしてそのうえで手でガードしてもそれであった。三重のガードをしていてもこれであった。
「な、何て叫び声なのよ」
「あれがマンドラゴラかよ」
ラビニアもフックも何とか生きている自分達を確認しながら言った。
「これだけガードしても倒れそうになるなんて」
「洒落にならねえな、本当に」
「けれど」
ラビニアは何とか気を取り直してそのうえでラメダスの方を見た。
「ラメダスさんは?」
「普通は死ぬぞ」
フックもふらふらになりながらも言う。
「それでも生きているのかしら」
「どうなんだ?」
見ればだった。やはり生きていた。平然とした顔でその人の形をした不気味な植物を持っている。しかもにこにことさえしている。
「さて、戻りますか」
こう言い残してそのうえで処刑場を後にするのだった。それだけだった。
「やっぱり生きてるわね」
「というか何でもないみたいだな」
二人はそんなラメダスを見てまた言い合う。
「あの叫び声を聞いても」
「何ともないか」
「人間かしら」
ラビニアは今度は首を傾げて言うのだった。
「あの人、本当に」
「言っただろ?不死身なんだよ」
フックの言葉は変わらなかった。
「何があっても死なないんだよ、あの人は」
「化け物じゃないわよね」
「さてな」
その可能性を否定できなかった。
「マウリア人なのは間違いないけれどな」
「何かそれってマウリア人が人間じゃないみたいね」
「そんなことは言ってないけれどな」
「けれどそう聞こえるわよ」
耳栓を外しながら述べた。
「本当にね」
「とりあえずあの人は不死身なんだよ」
フックは強引に話をそっちに戻した。
「これでよくわかったよな」
「ええ。キングコブラに噛まれても全然平気だし」
「血清打ってないのも見たよな」
「血清打ってもどうにかなる相手じゃないけれどね」
あまりにもそれが強くしかも量が多い為だ。キングコブラはそこまで恐ろしい蛇なのである。
「けれどとにかく生きてるし」
「他にも爆弾の直撃受けても生きてたことがあるぞ」
彼はまた話す。
「それも核爆弾な」
「放射能の影響は?」
「なかった」
はっきりと言い切った。
「天本博士が気紛れで行った核実験を止める時間にな」
「気紛れで核実験ね」
ラビニアはそのことにも呆れた。
「あの博士も何とかしないと本当に人類にとって問題よね」
「そうやって何千年も迷惑かけてる人だしな」
この博士もかなり人間離れしている。
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