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第十九話 もてない苦しみその一
                  もてない苦しみ
 結構色々なカップルがいたりするこのクラス。だが例外も当然ながらいる。
「あのね」
 彰子が親友の七美と校内の喫茶店でお茶を飲んでいた。ウィンナーティーを飲みながら話をしている。喫茶店の中はライトブルーを基調とした穏やかで奇麗なものであった。何処か海の中を思わせる。赤い装飾が珊瑚のようである。
「最近皆彼氏とかいるのかな」
「また突拍子もない言葉ね」
 それを聞いた七美がそれに応える。彼女は緑茶を飲んでいる。
「だってね」
 彰子はおっとりとした声で述べる。
「最近ネロ君とかアロアちゃんとか」
「あの二人は有名じゃない」
「うん。他にはベッカ君とペリーヌちゃんとか」
「あの二人は上手くいってるわね」
「そうよね。けれど私思うんだけれど」
「ええ」
「ナンシーちゃんも誰かと付き合ってるかも」
 その言葉が発せられた瞬間喫茶店から遠く離れた新聞部の部室にいたナンシーが思わずギクッ、と何か得体の知れぬ悪寒を感じていた。凄い能力である。
「まさか」
 だが七美はそれを一笑に伏す。
「あのナンシーに限ってそんなことないわよ」
「そっか」
「そうよ。幾ら何でもそれはね。あの娘もレズなのかもね」
「それはないと思うけれど」
 彰子は首を傾げながらそう述べた。
「そういう彰子はどうなの?」
「私?」
「そう、あんた自身は。好きな子とかいるの?」
「ううんと」 
 首を傾げさせたまま考えながら述べてきた。
「これといっては」
「ないのね」
「何かなあ。何かね」
「まあこういうのはね。出会いだからね」
 七美は笑いながらお茶を飲む。それからまた述べた。
「何処の誰かとそうなるかってのはかなり運よ」
「そうなの」
「そうそう。まあ焦らない」
 笑って言う。
「そのうちあんたにも誰かできるって」
「だといいかなあ」
「いいかなあって」
 無意識のうちに彼女の動きに合わせて首を傾げてしまっていた。
「何かそういうのってどんなのかわかってないの」
「七美ちゃんはわかるの?」
「そりゃあね」
 と言ったところで止まってしまった。
「うっ・・・・・・」
 実はないのである。だから止まってしまったのだ。
「ええとね」
 何故か額から汗が出てしまう。それを止めることができないでいる。
「あの、その」
「何かあるの?」
「いえ、別にないけれど」
 そうは言いながらも戸惑いは続く。
「けれど」
「それでもさ」
「何?」
「洪童君の妹さんとかうちの明香なんかは可愛くてもあまりもてないような」
「あの二人はまた別よ」
 七美は言う。
「別なの?」
「高嶺の花よ」
「そうなの」
「そうよ。あんまり奇麗だとついついね。皆諦めてしまうから」
「ふうん」
「競争とかになるしさ。それに自分が釣り合うかどうか考えて」
「そんなの考えるの」
「考えるわよ」
 そう教える。
「そんなものだから」
「何かよくわからないなあ」
「春香ちゃんも明香ちゃんも奇麗過ぎるのよ。だからね」
「ううん、奇麗なのはわかるけれど」
「うちのクラスもまあ」
 ここでざっとクラスを見渡す。
「奇麗な娘多いけれどね」
「それはね」
「ただ変人が多いけれど」
「あはは」
 それは事実である。このクラスこそは学園きっての奇人変人の宝庫なのである。それは誰もが認めるものであった。彰子もそれは否定しなかった。
「それはね」
「わかるわよね」
「うん、凄く」
「例えば」 
 ここでたまたま側を通りがかった髪を青く染めた痩せ気味の長身の少年を見る。目はライトグリーンで肌は白い。耳のピアスとダークグリーンのシャツにダークブルーのジャケット、そして黒のジーンズで決めている。一見すると何かもてそうな外見に見えなくはない。
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