第百三十四話 豪快な和食その四
「元々中国の料理だったね」
「そうよ。古代ローマにもあったらしいけれど」
ローマのところでは顔を顰めさせる蝉玉であった。
「中国にもあったのよ」
「それで日本のお刺身はそこから来たんだよね」
「そうなのよ。けれどもう完全に和食じゃない」
「うん」
また蝉玉の言葉に頷くスターリングだった。
「日本のお刺身でね。中国のお刺身とは別になってるわよ」
「だからこれは和食なんだな」
「ええ」
またカムイの問いに対して答える。
「あんたの国のラーメンと同じでね」
「納得したぜ。じゃあ俺も祖国の料理に胸を張れるな」
「自分の国の料理に胸を張れない人はそれだけで不幸になってるのよ」
こんなことも言う蝉玉であった。
「もうそれだけでね」
「そうだね。やっぱり自分の国の料理には胸を張りたいよね」
スターリングもそれには同意だった。
「僕だってハンバーガーやフライドチキンには胸を張れるし」
「そういうこと。それにしてもこのお刺身って」
相変わらず刺身を食べ続けている蝉玉であった。
「美味しいわね。お醤油もいいわね」
「大豆のお醤油だよ」
横から家持が言ってきた。
「日本の大豆のお醤油だよ」
「成程、それなの」
「日本のお醤油なんだ」
「うん、しょっつるも考えたけれど」
家持は今度は変わった名前を出してきた。
「けれどこれにしたんだ」
「しょっつる?」
「しょっつるって何?」
ところが皆はしょっつると聞いても首を傾げるばかりだった。どうやら皆よく知らないらしい。
「聞いたことないけれど」
「何かの調味料?」
話の流れからそれはわかるのだった。しかしわかるのはそれだけだった。皆しょっつると聞いても何が何なのかさっぱりわからないのであった。
「しょっつるはね」
しかしここで家持と同じ日本人である彰子が皆に対して説明をはじめた。もう一人の日本人である七海は今はお刺身を食べるのに必死であった。
「あれなのよ。お魚から作ったお醤油なのよ」
「じゃああれか」
それを聞いたタイ人のフックがすぐに応えてきた。
「ナムプラーと一緒か」
「そう。一緒よ」
フックのその問いに答える形になっていた。
「それと同じなのよ。要するに」
「ああ、それなら」
「わかるよな」
「ええ」
皆ナムプラーと聞けばわかったのだった。それは連合においてはかなり知られた調味料である。醤油の一種としてだ。もっともこの時代では醤油といえば日本風に大豆から作るものと考えられている。そちらの方がメジャーにはなっているのもまた事実なのである。
「それならね」
「成程、ナムプラーか」
「あれはあれで独特の味があるから」
また皆に答える家持だった。
「考えたんだけれどオーソドックスにって考えて」
「それでお醤油なのね」
「じっくりと寝かせた特別のお醤油だよ」
こうも皆に話すのだった。
「だからさ。美味しい筈だよ」
「確かにね」
「鮪だけじゃなくてこのお醤油もいいわね」
「山葵もね」
やはり刺身に山葵は欠かせなかった。これはまさに和食の為にあると言ってもいい香辛料だ。ここでも当然のように使われているのである。
「これも日本の山葵?」
「うん」
また皆の問いにこくりと頷く家持だった。
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