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第十八話 犬とアザラシその三
「僕はまだラスカルの考えてることが完全にはわからないからね」
「まあそこんところはね」
 笑って答える。
「何か感性かしら」
「そういえばあんたあれだったわね」
 蝉玉が彼女に対して言う。
「水泳部だし元々」
「うん、海の生まれよ」
 にこりと笑って答える。
「今でもね。海は大好きよ」
「それでなのね」
 それを聞いてまた納得したように頷いた。
「シャチやアシカのことがわかるのは」
「他にもステラーカイギュウの考えてることもわかるわよ」
「あの大きなのね」
 彰子がそれに問う。
「わかるの」
「うん、かなり優しい動物なんだよ」
 七美はステラーカイギュウについてそう語った。
「のどかでね。見てるだけで落ち着くのよ」
「そうだよね、あれはね」
 どうやらジョンもステラーカイギュウが好きなようである。話をしているその顔が明るいものになっていた。
「大人しいしね」
「そうなのよ。一見すると驚くけれどね」
「そうそう。私もあれ好きなのよ」
「僕もだよ」
 蝉玉とスターリングもそれに賛同する。どうやら皆あの地球ではいなくなってしまった巨大な海牛が大好きなようである。少なくとも嫌われる生き物ではない。
「皆何の話をしてるんだ?」
 ここで意外な男がやって来た。クラスの不良であるダンであった。
「ああ、ちょっとペットの話をね」
 ジョンがそれに説明する。
「ペットか」
「他にも馬とかステラーカイギュウとか。ダンはどんな動物が好きなの?」
 ナンが彼にそう尋ねてきた。
「虎だよな、やっぱり」
 フランツが余計なことを言って皆から口を塞がれてしまった。
「虎か、悪くないな」
 だがダンはそれを聞いて意外にも賛成してきた。
「虎はいい。雄々しくて奇麗だ」
「ほら見ろ」
 彼がそう言ったのを見てフランツが言う。
「やっぱり虎はいいじゃないか」
「だけれどな」
 しかしダンはさらに言う。
「俺はステラーカイギュウも好きだな」
「そうなの」
「ああ、あの優しさがいい」
 これは本当に意外な言葉だった。皆それを聞いて何か狐に摘まれた様な顔をしていた。
「俺は優しい動物は好きだ。というか動物は全部好きだな」
「へえ、それはまた」
 蝉玉はそれを聞いて目をパチクリとさせていた。
「あんた意外とそういうところあるのね」
「そんなに驚くことか?」
「当たり前よ。空手部のエースでクラスのアウトローが」
「何もアウトローになったつもりはないけれどよ」
 蝉玉のその言葉に少し憮然としたが話を続けた。
「動物愛護の人だったなんて」
「子供の頃からいつも一緒だったからな」
 彼はそう答えた。
「実は俺の家な」
「ええ」
「動物園やってるんだよ。代々な」
「えっ」
 皆この言葉を聞いて今度はその目を丸くさせた。
「そうだったの」
「ああ。ってこのクラスになった時最初の自己紹介で言わなかったか?」
「そうだったっけ」
「さあ」
「覚えてないのか」
「だってねえ」
「ダンって言ったら」
 皆とても動物好きとかそういうイメージがないのである。こういう時に不良とはいささか損な役回りである。
「バイクとかねえ」
「そういうイメージだから」
「まあいい」
 だがそれを受け止めてしまうところが彼の器の大きいところであった。彼はこれでも中々器の大きな男なのである。不良だが人としてはいい奴なのだ。
「まあ動物園の息子だからな」
「うん」
「昔から動物は好きだった。今だってな」
「一番好きな動物は?」
「動物は何でも好きなんだがな」
「それでもその中で特に好きなのは」
「そんなのは決められないな」
 蝉玉にそう答える。
「皆好きだからな」
「本物ね」
「そうね」
 蝉玉とナンがそれを聞いて頷き合う。
「そういうことだ。ついでに言えば動物園と水族館が一緒でな」
「うん」
「ヒョウアザラシには注意していた」
「ヒョウアザラシ?」
「何、それ」
 クラスの面々はそんなアザラシは知らないようである。それを聞いてキョトンとした顔になっていた。
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