第百二十一話 ナマケモノを探せその四
「おはよう」
「うん、おはよう」
まずは挨拶から話をはじめる。
「昨日のことだけれどね」
「オオナマケモノのこと?」
「ええ、そうよ」
彼女が電話をかけてきたのはそのことに関してだった。
「今朝にお役所に届けるのよね」
「それなんだけれど」
「それなんだけれど!?」
ここでエイミーはベンの様子がおかしいことに気付いた。
「どうしたの!?声が青くなってるわよ」
「声に色があるんだ」
「あるわよ。とにかくね」
エイミーは心配になって彼にさらに言ってきた。
「どうしたの?何かあったの?」
「最悪な状況になってるよ」
こうエイミーに答えるベンだった。
「今かなりね」
「最悪ってまさか」
「そう、そのまさか」
またエイミーに答える。
「いなくなったんだ、オオナマケモノが」
「逃げたの」
「逃げたっていうかいなくなったんだよ」
「同じことじゃないの?」
「とにかくいないんだよ」
このことは紛れもない事実であった。
「何処にもね。今から探すつもりだけれど」
「五人じゃ無理よ」
エイミーは血相を変えた声で言ってきた。
「いい!?首輪とかはしていたのよね」
「ちゃんとしてたよ」
それで鎖にもつないではいた。だがそれは見事に断ち切られていた。オオナマケモノは彼が思っていたよりもさらに力があったのだ。
「それはね」
「そう。それにあの巨体だから探せばすぐに見つかるわね」
「だから今から探すつもりだけれど」
「待って。ここは五人だと危険よ」
エイミーは不意にこう言い出してきた。
「連れて行くのとはまた違うから」
「違うんだ」
「下手したらかなり暴れるかも知れないじゃない」
「うん」
「しかもさらに逃げることだって考えられるし」
咄嗟に様々な予測を立ててみせてきている。
「だからね。ここは」
「ここは?」
「皆を集めましょう」
これがエイミーの考えだった。
「クラスの皆をね。いいわね」
「皆をって」
「オオナマケモノは猛獣よ」
エイミーの声は危惧に満ちたものになっていた。
「だからね。余計にね」
「注意しないといけないんだね」
「そういうことよ。わかったら」
「皆を」
「そう、皆よ」
このことを強調するエイミーだった。
「さもないと見つけても対処できないからね」
「けれど。悪いよ」
ベンは弱気なことを言うのだった。
「それって。迷惑じゃない」
「迷惑とかそういうのは気にしないの」
弱気なベンに対してエイミーはこうした調子だった。
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