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第百十七話 アナコンダその六
「前世はプリンセスでしたね」
「プリンセスっていうと!?」
「何処の?」
「マウリアの。イスファーン藩国の」
 所謂マハラジャの治める国である。あくまでその藩国の象徴であるが名目上の国家元首として治めていることになっているのである。なおセーラの家もそのマハラジャの家である。
「第四十七王女でしたね」
「第四十七って」
「何なんだろうね」
 そこまで王女が続くと流石に皆何が何なのか想像できないものがあった。
「とてもお美しく気品のあるお方でした」
「美人で気品のあるお姫様ってこと?」
「はい」
 簡単に言うとそうであった。
「まさにマウリアの真珠と詠われていたそうです」
「ふうん、そんなに」
「それでその人って」
 そのプリンセスについての話になる。
「どんな人だったの?」
「何時の時代の人なの?」
「二百年前の方です」
 セーラはまず時代について述べた。
「その頃のイスファーンにおられました」
「二百年前ねえ」
「かなり昔ね」
「ほんの一時でした」
 連合出身の皆から考えればかなり昔だがマウリアのセーラから見ればほんの一時であった。何しろ今の宇宙の時間すらが神の一日でしかないのだから。この途方もない時間の概念がマウリアの思想の特徴である。その中で人もあらゆる生物も輪廻転生を繰り返しているのである。
「その二百年前の真珠だったのです」
「まあ時間はいいとして」
「それはね」
 皆ももうセーラの話のそこにはあえて突っ込まないのだった。突っ込めばその分だけ話がややこしいものになってしまうからである。
「とにかく。そのお姫様って」
「どんな御顔だったの?」
「それだけれど」
 最大の関心に話をやる。やはりそこであった。
「美人って言われてもさ」
「実際どんな人かわからないと」
「何も言えないし」
「暫くお待ち下さい」
 セーラはここで皆に対して言うのであった。
「念写しますので」
「念写!?」
 またしても訳のわからない言葉が出て来た。皆彼女の話を聞いてそう思わざるを得なかった。とはいってもいつものことではあるのだが。
「念写ってまた」
「訳のわからないことになってきたね」
「既にエリザベスさんの思念は私の中にあります」
「いや、それもかなり」
「凄いことだけれど」
 凄いというレベルではないことを平然とできるのがセーラである。
「そこにもうありますので」
「っていうかエリザベス前世のこと覚えてるの?」
「それって無理なんじゃ」
 皆はこのことについても考えた。確かに前世を覚えているという話もあるが大抵の人間はそうではない。転生する時に忘れてしまうのが常なのだ。
「けれどまあそれでも」
「どうやってわかったのか知りたいけれど」
「無意識です」
 セーラはにこやかに笑ってまた皆に答えた。
「それは無意識の中にあるものなのです」
「無意識ねえ」
「そういうのは流石に」
 本人では中々わからないものである。この時代は無意識に関する研究もかなり進んでいるがそれでも完全にははっきりしていないのが実情なのである。それが全てわかるということはおそらくそれだけ神の領域に人という存在が近付くということでもあるからだろう。
「わからないし」
「けれどそこにあったの」
「誰もの中にあるものです」
 セーラの言葉ではそうである。
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