第十五話 いつも前向きにその四
「うん、何か君達が来てるって聞いてね」
「それでやって来たの?」
「うん、他にも一緒だよ」
「ていうと」
「やあ」
ジョルジュが出て来た。
「いやあ、彰子ちゃんの着物姿最高だね」
「何かインタビューしたくなってきたわ」
ナンシーもいた。
「やっぱりあんた達が」
「何だよ、クラスメイトが折角来たのに」
「随分水臭いわね」
「呼んだ覚えはないけれど」
「まあそう硬いことは言わずにさ」
ナンシーはすすす、と二人に近寄ってきた。その手にはペンとメモ帳が既に用意されている。
「どうなの、アルバイトの調子は」
「かなり忙しいわ」
「そうなの。それでさ」
「それで新聞のグラビアでも出ろっていうの?」
「まあ何となく」
「先輩、遅れてすいません」
ここでもう一人やって来た。
「ちょっとカメラの用意に手間取って」
「そんなのいいのよ。それより取材よ取材」
「はい」
「あれっ」
そのカメラを持っている下級生を見て彰子がふと気付いた。
「ナンシーちゃん、その子とこの前一緒にいなかった?」
「えっ!?」
それを言われて何か知られたくなかったことが発覚したかの様に壊れた顔になった。
「な、ななな、何を言ってるのかしら」
「先輩!?」
「わ、私は別にね」
素早くその場を取り繕う。務めて平静を装う。
「そんな。別によ、あの、その」
「どうしたんだよ、ナンシー」
ジョルジュは急変したナンシーの様子に目をパチクリとさせていた。
「何でもないわよ」
「何でもないって」
だがジョルジュにはとてもそうは見えなかった。
「そうなのか?何か急に様子が変わったけれど」
「気にしないで」
「そうか」
「そうよ、だからね」
「ああ」
強引に話を持ってきた。
「とりあえずね」
取材に話を戻してきた。
「このお店が人気なのは事実よ、前からね」
「それはね」
パレアナがそれに頷いた。
(けれど今のナンシー)
応えながらナンシーのことを見ていた。
(何か怪しいわね)
だがそれは隠して話を続ける。ナンシーも務めて冷静を装っている。
「けれど最近さらに人気が急上昇して。それで取材に来たのよ」
「そうだったの」
「それが貴女達だったなんてね。何か納得」
「ふうん」
「やっぱり看板は貴女達みたいね」
「まあ私はそんなにだけれど」
ここでちらりと彰子に目をやる。
「やっぱりね」
「ええ」
ナンシーにもパレアナが何を言いたいのかはわかっていた。それに応える。
「そうね、やっぱり繁盛の原因は小式さんね」
「私?」
「そうよ。自覚ないの?」
「全然」
彰子の返事は実にマイペースなものであった。
「何で私なの?」
「って彰子ちゃん」
ナンシーも彼女のおっとりさにはかなり参ってしまった。
「自分でわからないかしら」
「?」
「?って」
首を傾げた様子にもう何を言っていいのかわかりかねてきた。
「だからね。看板娘になってるの、貴女が」
「私が」
「そうよ」
とにかく鈍感な彼女に呆れてしまっていた。そんな彼女を見てロミオとジョルジュが話をしていた。
「やっぱり彰子ちゃんってさ」
「ああ」
ジョルジュがロミオの言葉に頷く。
「こうしたことにはかなり鈍いみたいだね」
「鈍いってものじゃないな」
ジョルジュが言う。
「あまりそういった恋愛とかそういったことにはな。相当なものだな」
「そうみたいだね。何かここまで凄い娘ははじめて見たよ」
「僕もさ、ここまではね」
「ついでに言うとさ」
パレアナも話に入ってきた。
「おっ、何だ」
「ナンシーの様子おかしくない?」
「ナンシーが?」
「そうよ。あの後輩の子ってあれでしょ」
パレアナはナンシーに聞こえないように囁く。
「新聞部の一年よね」
「ああ」
ジョルジュがそれに頷く。
「そうだけれどよ」
「そうよね。それにしては」
「何かあるのか?」
「おかしくない?」
パレアナはナンシーとその後輩をじっと見ていた。
「先輩と後輩にしては」
「そうかなあ」
だがロミオはそれには疑問的だった。
「普通に見えるけれど」
「そうだよな」
ジョルジュも言う。
「特におかしなところはな」
「だといいけれどね」
だがパレアナはまだナンシーを見ていた。
「けれどね。引っ掛かるわね」
「考え過ぎじゃないかな」
ロミオがまた言う。
「ところでさ、パレアナ」
「何?」
ロミオが話を変えてきた。
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