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第百十一話 ポケットの中の薬その一
                ポケットの中の薬
 ペリーヌとベッカは真壁さんの言う通り角を曲がった。すすろそこには椅子に座り道路の端に青いビニールの敷物を敷きその上に多くの薬を置いているアンジェレッタがいた。
「あれ、あんた達」
 アンジェレッタは二人に気付き顔を向けてきた。
「どうしたの?こんな所で」
「どうしたもこうしたもないわよ」
「アンジェレッタ、君のお薬だけれどね」
「ええ」
 二人の咎めるような声に目を少しぱちくりさせながら応える。
「とんでもないわよ」
「あの血のお薬はね」
「ああ、あれね」
 アンジェレッタもそれが何の薬であるのかわかっているようだった。
「あの精力ドリンクね」
「さっきおじさんに売ったわよね」
「うん」
 ペリーヌの言葉にこくりと頷いて返す。
「そうだけれど?」
「それよ、それで大変なことになってたのよ」
「飲んだおじさんが倒れてね」
「そうでしょうね」
 何とそれを言われても全く驚いたところのないアンジェレッタだった。
「あれを飲めばね。そうなるわよ」
「わかってたの?」
「あれ本当に色々なものが入ってるからね」
 本人の弁である。
「血だけじゃなくて大蒜とか朝鮮人参とかね。あと本当に色々と」
「飲んだら倒れるようなものになってるのね」
「それちゃんと書いてあるけれど?」
 今度はこう言うアンジェレッタだった。
「飲むとあまりの強さに卒倒するけれど命に別状はないってね」
「書いてあるの」
「当たり前でしょ。お薬よ」
 この点を強調するアンジェレッタだった。
「毒じゃないから」
「あんただったら毒でも売ってそうだし」
「僕もそう思うよ」
 二人のここでの見方は多分に偏見だった。
「けれどお薬なのね」
「それでも随分きついお薬なんだね」
「けれどそれだけ効果はあるわよ」
 この点はしっかりと保障するアンジェレッタだった。
「それでおじさんどう?元気でしょ」
「元気っていうか寿命が延びたって言ってるし」
「相当凄いお薬なんだね」
「よかったらあんた達もどう?」
 自分の前にあるその見事な血の色の瓶を二本手に取って差し出してきた。
「一本十五テラだけれど」
「高いわね」
 守銭奴のペリーヌが値段を聞いてまず顔を顰めさせた。
「随分」
「そう?安いわよ」
 しかしアンジェレッタはそのクレームに対して平然と返した。
「普通のスタミナドリンクとは違うんだしね」
「そんなに違うの」
「あの一番効くって言われてるあれ」
 アンジェレッタは笑顔と共に語る。
「ほら、皇帝液」
「あれね」
「あれと同じじゃない」
「あっ、そういえばそうだね」
 ベッカもそれに気付いた。
「値段は同じだよね」
「やっぱり高いじゃない」
 ペリーヌの視点はあくまで値段にあった。
「スタミナドリンクにしては」
「まあそれはね」
 ベッカもそれには頷く。やはり彼も守銭奴なのだから。
「その通りだけれどね」
「極論すれば牛乳で充分じゃない」
「それはまた極論じゃないの?」
 今度はアンジェレッタが目を顰めさせた。
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