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第十四話 消える魔球その三
「一人の心を遮二無二に手に入れるべく突き進む!そしてその果てにあるものを手に入れるんだ!叫べ!その果てまで突き進め!」
「今時珍しい恋愛感ね」
「っていうかあそこまで熱いっていないわよ」
 蝉玉とダイアナがそれを聞いて囁き合う。
「あれ?君の為なら。ええと」
「君の為なら死ねる!そこまでいくんだ!」
 蝉玉が言う前に叫んだ。
「そしてその心を掴み取る!それまでは!」
「あんたって本当に恋愛ゲームしてるの?」
 エイミーは何かそうではないのではとさえ思えてきた。彼のあまりにも熱い様子からである。
「他のジャンルのゲームと勘違いしていない?」
「今やってるのは一緒にメモリアルだけれど」
「それって今ベスお姉ちゃんがやってるのよ。そんなゲームじゃないじゃない」
 話を聞いてそう言った。
「何っ、あれは熱いゲームだぞ」
「ベスお姉ちゃんはほんわかしたゲームって言ってたし私もそう思うんだけれど」
「それは気のせいだ」
 フランツはそれを完全に否定した。
「あんな熱いゲームはない」
「そうだったかしら」
 エイミーにはそれがどうしても信じられない。
「まあいいわ。ゲームはいいとして」
「ああ」
「最近あんた何か訳わからない魔球開発はどうしたの?」
「またえらい言い草だな」
「あれが訳わからないって言わないで何て言うのよ」
「大魔球だ」
 フランツにしてみればそうなのだ。
「大魔球、ねえ」
「そうだ。今度開発するのは」
「何?超魔球?」
「いや、消える魔球だ」
「ああ、定番ね」
 何か相手をしているだけで疲れる。
「それを今考えている。どうやって消すか」
「とりあえず考えてみたら?できるかどうかわからないけれど」
 心の中ではできるわけないだろうと思っていたがそれは言わない。言って聞き入れるような男ではないのはもうわかっているからである。
「よし、それじゃあ放課後に」
「らしいわよ、タムタム」
「勝手にやらしておけばいいさ」
 相方は冷たい。
「完成しなかったらしなかったらで凄いボールになるからな」
「そうなの」
「したら儲けものだ。今まで開発した魔球だってそうだったしな」
「高速スライダーとか高速シュート?」
「そう、それもあったな」
 フランツの変化球はどれも恐ろしいまでの、そう高校生とは思えないだけのものがあるのだ。それだけのものを投げても怪我一つしない彼の身体の頑丈さも凄いものであるが。
「他には超スローカーブとかな」
「意外と才能あるのね」
「才能はな。ふんだんにある」
「ふうん」
「努力もしてくれる。しかしだ」
「頭が激烈に悪いのね」
「俺は何も言っていないぞ」
 誰もが言わずと知れたことである。
「とにかくだ。放っておけばいい」
「じゃあ放置しておくわよ。いいのね」
「崖から転がり落ちても熊と格闘しても生きているどころか一日で全快する。安心していい」
「凄いわね、また」
「今日は女子ソフト部と練習試合もあるんだよ。あいつはそこでも魔球の開発をするらしいが」
「試合中に!?」
 エイミーはそれを聞いて眉を顰めさせた。
「何考えてるの、一体」
「考えるんじゃない、感じるんだとか言ってな。いつもこうだ」
「理解出来ないんだけれど」
 エイミーにはフランツの頭の中がわからなくなってきていた。
「試合中にって」
「真剣勝負の中にこそ掴むものがあるらしい。確かに真理だ」
「じゃあ実際にバットを刀に変えて試合してみる?」
「止めておけ、本当にやりかねない」
「っていうか本当にやりそうね」
「さて、どうなるか」
「よお、タムタム」
 ここでクラスメイトの一人が彼に声をかけてきた。背の高い女の子である。
 黒に赤がかった髪にかなりのスタイルをしている。目は黒で生き生きとしている。溌剌とした顔立ちに大きな胸が目立つ。ズボンとラフな上着が実によく似合っている。
「ああ、ロザリー」
「今日の試合のことだけれど」
 その少女ロザリーは彼に声をかけてきた。名をロザリー=ヒールという。マダガスカルからやって来た。
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