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第百話 天本破天荒博士その三
「捕まえるといってもな」
「はいそうですかと捕まる人ではありませんし」
「連合軍の精鋭を送り込んでも」
「送り込んでも失敗するのはわかっていますしね」
「この前ブラックホールに送り込んだ時はあれだったな」
 署長はその時のことを思い出した。思い出したくはないが。
「ロシュフォール先生が活躍してくれたな」
「そうでした。あの先生がいなければとても」
「あの博士を捕まえることなぞ」
 ここで急に思わぬ名前が出て来たのであった。
「できはしませんでした」
「今回も、というのは流石に悪いですし」
「本当に困った」
 署長は今度は腕を組んで考える顔になった。深刻に。
「何とかしたいのだがな」
「我々に何ができるかというと」
「祈るだけと言えば怒られますね」
「それどころか今の発言がマスコミやネットに出ればどうなるか」
 署長は部下の一人のその発言には顰めさせた顔で言い返した。
「君の首が飛ぶぞ」
「すいません、失言でした」
「気をつけてくれ。しかしだ」
 だがここで署長もまた言うのであった。
「相手が相手だ。本当に祈るしかないな」
「そうですね。どうしたものやら」
「マッドサイエンティスト程始末に終えないものはない」
 署長の本心の言葉であった。
「何をするのか全くわからないからな」
「その通りです。とにかく何か手を打ちましょう」
 さっき祈るだけと言った部下はその口で今度は真面目な言葉を出した。先程とは違ってえらく真面目な顔であり真剣なのがすぐにわかった。
「我々なりに」
「そうだな。とりあえずはだ」
 署長もまた真剣に彼の言葉に応えていた。
「研究所の周りを警戒態勢に置こう」
「とりあえずはそれですね」
「そうだ。まずはそれだ」
 署長はまた部下に対して答えた。
「といっても。これが精々か」
「流石に相手が相手ですからね」
 連合中を震撼させている非常識なマッドサイエンティストが相手である。一警察署ができる範囲はやはり限られているということであった。
「ここまででしょうね」
「そうだな。こちらとしても残念だが」
「後は八条学園のあの先生に連絡しておきましょう」
「ロシュフォール先生にだな」
「はい」 
 部下達はその先生の名前が出て静かに頷いた。
「やはりあの先生頼りですか」
「マッドサイエンティストの相手は正義の味方だ」
 この図式は二十世紀から変わりはしない。永久に不変と言っていい図式である。簡単に言うとヒーローと悪役の構図というわけだ。
「それしかないだろうな」
「ですね。それじゃあ」
「連絡をしてそれで終わりですね」
「とりあえず我々が出来るのはこれまでだ」
 署長は目を閉じて一言述べた。
「では総員警戒態勢に当たれ」
「了解です」
「それでは」
「そうだ。後はだ」
 彼は続いて言った。
「軍にも連絡をしておくか」
「連合軍ですか?日本軍ですか」 
 連合には大きく分けて二つの軍が存在している。中央政府が管轄している連合軍と各国が管轄しているそれぞれの国軍である。国軍はかなり小規模なものだがそれでも存在しているのは事実である。かつての連合軍設立前と比べるとかなり小規模になっているがだ。
「どちらを」
「両方だな」
 署長は一瞬考える目になったがすぐに返答を出した。
「両方に要請しよう」
「両方にですか」
「どちらかにだけ声をかけたらまずいだろう」
 ここでは彼は政治的な判断を下したのである。
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