第十三話 オフレコその三
「この写真部のエースを捕まえて」
「じゃあそのエースが何しに来たの?」
「そのカメラ使って堂々とってわけ?」
「だから取材なんだって」
「本当よ」
ナンシーがそれを代弁した。
「私がいるのはそのせいだから」
「そうなの」
「何だ」
バレエ部の女の子達もそれを聞いてやっと納得した。
「それ早く言ってくれればよかったのに」
「思わず身構えたわよ」
「全く。盗撮なら盗撮でこっそりするよ」
「何か言った!?」
「いや、何も」
失言は誤魔化す。それからさりげなく話に入った。
「それで取材だけれどさ」
「ええ」
「取材ね」
「カトリ=ショースキー嬢を」
「それならあんた結構知ってるんじゃ?」
部員の一人が言った。
「同じクラスなんだし」
「そうそう」
「生憎クラスメイトとしてしか彼女を知らないんだよ」
ジョルジュはその言葉にはこう返した。
「だからさ。聞きたいんだよ」
「成程ね」
「いいかな」
「じゃあ本人呼ぶね。カトリ」
「何?」
柔軟を止めてこちらに顔を向けてきた。
「取材よ、新聞部とカメラ部から」
「取材?」
「そう、あんたに。来て」
「ええ・・・・・・ってナンシーとジョルジュ君」
「どうも」
ジョルジュは軽い調子で挨拶を返した。
「カメラマンとして来たよ」
「ジャージでよかった」
カトリは彼の姿を見てまずはほっと胸を撫で下ろした。
「体操服やレオタードだったら」
バレエだから体操服だけでなくレオタードを着る場合もあるのだ。カトリのプロポーションはかなりいいと評判であったりする。勿論ジョルジュもそれは知っている。
「何か随分な物言いだね」
「だってジョルジュ君」
「まあ今日は安心してよ」
苦笑いを浮かべてこう返す。
「ちゃんとした取材だからさ。けれど」
「けれど?」
「やっぱり被写体としてはさ。ジャージじゃなくて」
やはりジョルジュはジョルジュであった。
「せめて半ズボンの体操服なんかは」
「あの、それはやっぱり」
「ああ、もう話がややこしくなるから」
隣にいたナンシーが業を煮やして話に入って来た。
「あんたは黙ってて。黙って写真を撮ればいいから」
「ちぇっ」
仕方なく黙ってしまった。
「それでね。カトリ」
「ええ」
まともなインタビューがはじまった。
「今の調子はどうかしら」
「調子ですか?」
「ええ。バレエ部とフィギュアスケート部の掛け持ちで大変でしょうけれど」
「はい、それは」
カトリはにこやかに笑ってインタビューをはじめた。
「どちらも楽しいですから。両立させるようにしています」
「うん、お見事」
ナンシーはその言葉を聞いて頬を和ませる。
「流石ね。しっかりしているわ」
「そんな、私」
「いいのいいの、謙遜は。あっ、こういうところはオフレコね」
「あっ、はい」
「それで今度の舞台だけれど白鳥の湖よね」
「はい、そうです」
言わずと知れたチャイコフスキーの名作である。
「どう、自信の程は」
「白鳥の湖は何度か踊ったことがありますけれど」
クラシックとしては模範的な言葉であった。
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