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第十三話 オフレコその一
                     オフレコ
 このクラスでウィンタースポーツといえばアンネッタである。だが彼女の他にももう一人それに通じている人間がいるのである。
「私はスキーとかボードだけれどね」
 これはアンネッタの弁である。
「けれどスケートとかはね。やっぱり」
 彼女も認めている人間がいるのである。
「負けるわ」
「アンネッタちゃんでもそうなの?」
 彰子が彼女自身に尋ねる。
「アンネッタちゃんスケートも凄い上手なのに」
「私が得意なのは走る方」
 彼女はそう答えた。
「スケートはそれだけじゃないでしょ」
「ええと」
 彰子はそれを聞いて考え込んだ。
「っていうとあれ?」
「そう、あれよ」
「フィギュアよね」
「あっちはね」
 少し残念そうに笑った。
「どうしてもね」
 アンネッタはどうにもそちらは今一つといった様子である。
「私って優雅さがないから」
「そうかなあ」
「自分ではそう思ってるのよ」
「ふうん」
「彰子ちゃんはフィギュア結構上手いじゃない」
「子供の時から時々やってたから」
 彰子は答える。
「それでね」
「そうなの」
「アンネッタちゃんはやってなかったの?」
「そっちはね。それより普通に速く滑ったりとか。それで」
「やっぱりスキーね」
「そう、それ。それが一番やったわ」
「成程」
「フィギュアっていえばあいつよね」
 赤い髪に青い目のアジア系の顔立ちをした少し小柄な女の子がやって来た。ラフな服装が似合っていて奇麗というよりは健康的な可愛さである。このクラスで数少ない日本人である和泉七美である。
「カトリよね」
「そうね、やっぱりカトリね」
 アンネッタはそれに応えた。
「あの娘には負けるわ」
「カトリちゃんなの?」
「あれっ、知らなかったの?」
 七美は彰子に顔を向けて問うた。
「あの娘バレエやってるから」
「バレエやってるのは知ってるけれど」
「元々フィギュアってのはバレエから出て来たじゃない」
「ええ」
「それでよ。凄く上手いんだから」
「へえ」
「他にはシンクロナイズドも上手いわよね」
「音感があるのよ」
 アンネッタが述べた。
「それがあるのとないのとでは全然違うからね」
「カトリちゃんって凄いんだ」
 彰子はそれを聞いてあらためて感心した声を出した。
「一見お嬢様だけれどね」
「クラスの中では大人しいけれど」
 その少女カトリ=ショースキーはクラスでは比較的地味な方である。サラサラとした純金を思わせるストレートな長い髪に黒い琥珀の瞳に人形めいた白い美貌を持つ少女である。このクラスでは希少種とも言える清純なお嬢様といった趣きの少女である。国籍はフィンランドだ。
 その彼女のことが話に出た。意外と言えば意外だ。
「決めるところは決めるけれどね」
「フランツとは大違いね」
「あれは決めなくていいところで余計に五月蝿いのよ」
 七美が彼のことを口に出すとすぐにアンネッタが返した。
「無駄に熱いし」
「そうかなあ」
「彰子・・・・・・あれ見て何も思わないの?」
「何が?」
 七美に言われても何とも思わないらしい。
「あれだけ暑苦しいのに」
「雪も氷も溶けちゃいそうなのに」
「それがフランツ君じゃないの?」
 的を得ているような完全に外しているような言葉であった。
「何事にも頑張るっているのが」
「まあそうだけれど」
「あいつはちょっとねえ」
 二人はバツが悪い顔をした。
「むやみやたらだから」
「テストも静かに出来ないのかしら」
 実はフランツはテストの時も叫んでいる。あまりにも熱過ぎて周りが見えていないのである。なおその成績はクラスで最下位の方である。
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