第九十三話 薬地獄その二
「だからよ」
「いや、そういう問題じゃないだろ」
ジョバンニは彼女にさらに突っ込みを入れるのだった。
「何処から出したんだよ、そんなでかいの」
「普通に。ポケットからだけれど」
平然とした答えがまた返ってきた。
「何かおかしいの?」
「おかしいって御前のポケットは何なんだよ」
そう言われてはいそうですかと納得できる筈もなくまた問う。どう考えてみてもどう見ても今の彼女の持ち物にはそんなものをなおせるような場所はないからだ。
「四次元ポケットか!?この酒だって」
「気にしない気にしない」
「気にしないってなおい」
「さあ、入ったわよ」
ジョバンニの言葉をよそに酒を入れていた。見ればそのカップに酒が全部入ってしまっていた。瓶にはマムシがいるだけである。
「さああどうぞどうぞ」
「薬じゃなくて酒の飲み方だな」
その巨大なカップを受け取ってのジョバンニの言葉である。
「これってよ」
「それだけ飲まないと駄目なのよ」
アンジェレッタは言う。
「やっぱりね」
「やっぱりって言うけれどこれはまた多過ぎるだろ」
こうアンジェレッタにクレームをつける。一応は。
「一度にこんなの飲んだらそれこそ」
「酔っ払うって言いたいの?」
「そうだよ、それだよ」
ジョバンニが今度言いたいのはそれであった。
「酔わないか?本当に」
「酔うけれどそれ以上に元気になれるわよ」
「そうなのか」
「だから。一週間寝ないでいいのよ」
本当に危ない薬レベルである。
「それだけギンギンになるから」
「だから女子高生がギンギンなんて言うなよ」
「じゃあビンビン?」
「もっと駄目だよ」
コップを口に近付けながら述べる。
「教師ビンビン物語なんてな」
「よくそんなドラマ知ってるわね」
「偶然中学校の時に再放送かかってたんだよ」
非常に古い日本のドラマである。千年以上前の日本のドラマをリメイクした作品だ。アルゼンチンやコロンビアで人気だったのだ。
「それでな」
「観てたの」
「ああ。まあとにかくだ」
ジョバンニは話を少し強引に戻してきた。
「これ飲めばいいんだよな」
「そうよ」
アンジェレッタも答える。
「それで万事解決よ」
「そうか。それなら」
「ささ、一気に」
さりげなくとんでもないことを勧めるアンジェレッタだった。
「飲んで飲んで」
「一気かよ」
それに文句を言いながらも飲む。本当に一気だった。飲み終えると最初の言葉は。
「凄い味だな」
「そうでしょ」
アンジェレッタはジョバンニのその言葉を当然として受けていた。
「味はね。そうなのよ」
「蜂蜜ないととても飲めないぞ」
顔が苦味に満ちたものになっている。
「こんなの」
「味はともかくとして。どう?」
「どうって?」
「元気になってきたでしょ」
「んっ、そういえば」
実感してきた。何か身体に力がみなぎってくる。
「これ、凄いな」
「だからお勧めなのよ。これはね」
「そうだったのか。何か酔いよりも本当に」
「元気になってきたわね」
「ああ」
アンジェレッタの言葉に答える。
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