ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第十二話 本能には勝てないその三
「やあ御免御免」
 演技は上手い。一見では普通にボールを逸らしてしまったかの様に見える。
 ボールは都合よくコートの真ん中で止まる。フックはそこへ疾風の様に向かう。
「ボール取っていいのね」
 彼は女の子達に尋ねる。
「今からそっち行くね」
「あっ、待って」
 ここでレミが動いた。さっと彼の前に出る。
「んっ!?」
「あっ、御免なさい」
「どうしたの」
(まさか)
 フックは応えながらレミの様子を窺っていた。
(気付いたか)
(何処かしら)
 レミは屈みながらフックを窺う。何処に何があるか。それを見極めようとしていたのだ。
(何かを隠しているのは間違いないわ)
(気付くか?いや、大丈夫だ)
「何か凄い殺気ね」
「ええ、あの二人探り合ってるわね」
「ええ」
 蝉玉とエイミーがそれを見てまた囁き合う。彼女達は二人が戦いに入っているのを見ていたのだ。
 レミはその優れた目で探りにかかる。その後ろでは今ダイアナがボールを取った。
「フック、渡すわね」
「うん」
(ちぇっ、ベストは外したな)
 彼は応対しながら心の中で呟いていた。
(けれど) 
 だが彼はそれでも切り札があった。
(俺のこれには気付かないさ、絶対に)
 そしてその切り札を切った。胸にそっと手をやろうとする。
(そこ!)
 レミは見切った。そのうえで一言言う。
「ダイアナ、ちゃんと胸に投げてあげてね」
「わかったわ」
(よし)
(そこだったのね)
 ダイアナの頭の回転は速い。すぐにレミが何を言わんとしているのかわかった。そのうえで投げる。
「行くわよ!」
「なっ!」
 渾身のサーブを放つ。その速さと威力は突如として放たれた為フックと言えど避けきれるものではなかった。
 フックの胸をバレーボールが直撃する。その奥で何かが砕ける音がした。
「うう・・・・・・」
「御免、痛かった?」
 ダイアナは白々しい演技でそれに返す。
「受けられるかなっと思ったんだけれど」
「ははは、失敗しちゃったよ」
 フックは笑みでそれに返す。だが内心では激しく舌打ちしていたのであった。
(勘付かれたな。鋭い)
 敗北を認めるしかなかった。実はジャージのあちこちに小型のカメラを置いており胸にスイッチがあったのだ。それで女の子達の姿を隠し撮りするつもりであったのだ。
 だが作戦は失敗した。レミとダイアナが二人でそれを防いだ。こうしてオペレーション=タイフーンは無残にも失敗したのであった。
「じゃあね」
「ええ」
 表面はにこやかに、だが内面では歯軋りしつつフックはボールを受け取って去った。女組は第一の強敵を退けた。だがもう一人強敵が残っていたのであった。
「フックがやられるとはな。意外だった」
 タムタムが敗れ去ったフックを迎えて言う。
「だが。策はまだある」
「うむ、次の作戦だ」
 マルティの細い目が鋭く光る。
「次の作戦は」
「オペレーション=スピットファイア」
「よし」
 ジョルジュが前に出て来た。
「俺に任せろ。八条学園高等部写真部のロバート=キャパの実力見せてやる」
「期待している。では健闘を祈る」
「ああ」
 漢達の見送りを受けて今もう一人の戦士が戦場に向かう。タムタムはその勇姿を見送りながら司令官であるマルティに尋ねた。
小説・詩ランキングsite_access.php?citi_id=254078182&size=200cont_access.php?citi_cont_id=766008103&size=200


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。