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第九十話 助っ人獲得その五
「ワン」
「いいってさ」
 ジョンはラッシーの言葉がわかる。それによるといいということだった。
「そのかわり」
「そのかわり?」
「ビーフジャーキーが食べたいってさ」
「はい、どうぞ」
 レミが早速袋からそのビーフジャーキーを取り出しそれをラッシーに差し出すのだった。
「これでいいかしら」
「うん、有り難う」
 ジョンがにこりと笑ってレミに答える。
「ラッシーがこれで商談成立だってさ」
「何も言ってないじゃない」
 正確には鳴いていない。ただ笑顔でそのビーフジャーキーを食べているだけだ。だがかなり美味そうに食べているのは事実である。
「ラッシーは」
「言ってるよ、言葉で」
 しかしジョンはこう答えるのだった。
「だから鳴いてないじゃない」
「心で言ってるんだよ」
 そういうことらしい。
「ちゃんとね。僕にはそれがわかるんだよ」
「心で」
「やっぱり。長い付き合いだから」
 ジョンの目が温かいものになる。その目でラッシーを見る。ラッシーはその横でやはりビーフジャーキーを食べ続けているのだった。ハフハフと舌も出している。
「心と心が通い合うんだ」
「何かネロと同じね」
「そうだろうね。ネロもね」
 彼はネロについても言う。
「パトラッシュと深く長い付き合いだからね」
「パトラッシュも賢い犬よね」
 そのことで定評のある犬だ。下手をしたら呑気な主よりもしっかりしているのではないかとさえ言われている。そこまで賢い犬なのだ。名犬であると言っていい。
「大人しいしネロをいつも守ってるし」
「犬っていいものだよ」
 ジョンははっきりと言う。
「レミも犬飼ってるじゃない」
「まあね」
 実はそうなのだった。レミも犬好きなのだ。
「カピとドルチェとゼルビーノね」
「お猿さんもいたっけ」
「ジョリクールね」
 何気に動物好きのレミであった。
「私の家族よ、それも大切な」
「だよね。じゃあ犬の有り難さってわかるわよね」
「ええ」
 あらためてジョンの言葉に頷く。
「じゃあ今回は」
「ラッシーがいるから絶対いけるよ」
 にこりと笑ってレミに告げてきた。
「例えアンジェレッタがどんなガードをしてきてもね」
「そう。じゃあ任せるわ」
「うん」
「ただな」
 だがここで。マチアが少し深刻な感じの顔で二人に言ってきた。
「どうしたの、マチア」
「アンジェレッタに気付かれないことだな」
「ラッシーは気付かれないよ」
「多分な」
 彼もラッシーは知らないわけではない。だからこれは頷いて認める。
「そうそう滅多なことじゃな。しかし」
「しかし?アンジェレッタを侮るなってことかな」
「その通りだ。あいつは手強い」
 深刻な感じから真剣になった。
「背は低いが勘はいいんだ」
「背の低いのは関係ないと思うけれど」
 そうは言ってもそれがアンジェレッタの最大の特徴になっていたからレミもジョンも今のマチアの言葉には納得した顔で頷くのだった。
「そういうものかしら」
「とにかく。用心が必要だぞ」
「わかってるってさ」
「ラッシーがだな」
「うん、ほら」
「ワン」
 一声鳴いてマチアに応えてきた。
「わかってるってさ。間違っても犬鍋にされるようなことにはならないからって」
「犬鍋か」
 連合では犬も食べる。犬だけではなく猫や猿も食べる。だがペットは食べはしない。流石にそこまでは悪食ではないのだがこれがエウロパの連合への批判になっている。人間の友達さえ食べてしまう野蛮人だと。もっとも連合の者達はそれこそ恐竜でも始祖鳥でも食べるのでそれどころではないのだが。
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