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第十二話 本能には勝てないその一
                   本能には勝てない
 変わり者ばかりだが美人や可愛い娘が多いこのクラスだがそれを狙う男が多いのが困りものであった。
 例えば体育の時間である。白い体操服に黒の半ズボン、かなりいい組み合わせである。なお男は青いジャージ上下で如何にもどうでもいいといった服であった。
 服装はそんなところだ。男ははっきり言って何を着ても構わない。下着なんぞトランクスで色気も何も必要ない。はっきり言ってしまえば体操服というのは女の為にある。そこから見えたり透けたりするもの、そして体操服そのものもまた重要なのである。このクラスにはそれを熟知した男が一人いた。
 彼が今教室に戻って来た。そして言った。
「皆、朗報だぞ」
「おっ」
「何だ何だ」
 クラスで最も背の高い巨漢マルティ=ヌオリクーラ。黒い髪を短く刈り込んだ黒い目の彼のところに男子生徒がわらわらと集まっていく。
「またマルティのところに集まってるわね」
「ホント、嫌らしいんだから」
 蝉玉とエイミーはそんな男子生徒達を冷ややかに見ている。だが中心にいるマルティはそれを全く意に介してはいない。ちなみに彼はウクライナ人である。
「今度の授業な」
「ああ、体育だよな」
「それがどうしたんだ?」
「女子はバレーボールらしいぞ」
「バレー!?」
「だったら俺達と場所一緒だな」
「そういうことだ」
 マルティは男子達に語る。男子はバスケットの予定なのだ。
「つまり」
「ああ」
「女子の体操服姿がおがめるな」
「体操服なんかであんなに言うなんて」
「男って本当に弱いわよね」
 ダイアナとジュリアは案外余裕といった顔である。この二人にとっては何でもないといった感じである。
「それだけではない、諸君」
「むっ」
 マルティの様子が変わった。気合が入ったのだ。
「我が同志よ」
「おう」
 豊かな金髪の黒人の少年が出て来た。顔は白人のものである。美男子といっていいが何故か軽薄な感じが露わになっていた。西サハラ出身でこのクラスの一員であるジョルジュ=ボーダンである。
「準備はいいな?」
「俺は二十四時間スクランブルだぜ」
「何と」
「流石はジョルジュ」
「そして我が竹馬の友よ」
「ああ」
 今度はフックが出て来た。
「チェックリストは出来ているな」
「何時でも万全だぜ」
 何か気取った動作でさっとファイルを出してきた。
「俺が作ったこのクラスの女の子のファイルデータだ。他のクラスのもあるぜ」
「流石だなフック」
「何、当然のことさ」
「あいつ何時の間にあんなの作ってたの?」
 アンネットがそれを見て眉を顰めさせる。
「何かうちのクラスってこんな手合いが多いわよね」
 レミがその横で言う。女子の目はさらに冷たくなっていく。
「このクラスの平均点はな」
「ああ」
「一〇〇点満点で九七・七だ」
「おおっ」
「すげえな、また」
「おそらくこの記録は破られないだろうな。皆凄い美人だからな」
「うちのクラスの男子もねえ」
「黙ってればそれだけいくでしょうに」
 またダイアナとジュリアの言葉である。このクラスは男も結構男前が揃っている。マルティにしろ決して醜男ではない。気は優しくて力持ちといった感じである。
「正直甲乙つけ難いぜ」
「じゃあどうするんだ?」
「誰を狙うかだな」
「それは俺に任せるんだ」
 ジョルジュが胸を張って言った。
「俺はやる。何があってもな」
「ジョルジュ、まさか御前」
「ああ、見ていろ」
 彼は同志達を前に今宣言した。
「やってやるぜ」
「そうか、やり遂げるんだな」
「何があろうともな」
「わかった、同志よ」
「今回の件、御前に託した」
「まあた何企んでいるんだか」
「ふん、今回もやらせないわよ」
 蝉玉とエイミーは何故か燃えていた。
「何があってもね」
「うちのクラスの女子の鉄壁の防御、甘く見ないでよね」
 何か戦争めいてきていた。マルティの目がその中で光りフックが身構える。ジョルジュには何か策があるようであった。彼等もまた何かを含んでいたのであった。

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