第十一話 放浪者その二
「あっ、前ネーム書いてた推理ものよね」
何もわかっていない彰子がふと言った。
「あのジュリアちゃんが主役の」
「そうそう、それそれ」
何か助かったと思った。彰子の言葉に頷く。
「それのヒントを思いついたのよね、アン」
「え、ええ」
とりあえず少し冷静さを取り戻してそれに頷く。
「だからなのよ」
「そうだったのか」
「だから。気にしないで」
「それだったらいいがな」
ギルバートはとりあえず納得したようであった。
「しかしまだ真っ赤だな」
「興奮したままだからね」
ジュリアが必死にフォローする。
「だからよ。まあアンだって興奮したりするわよ」
「アンちゃんいつもクールだけれどね」
「そういう時もあるわよ。彰子だってそうでしょ」
「うん、まあ」
今度は彰子の天然が変な方に向かう。何か扱い辛い。
「じゃあ漫画のネームしよう、アン」
「そ、そうね」
ジュリアに守られるようにして自分の机に向かう。
「そういえば私も出てるんだったっけ」
「ええ、あたしの助手でね」
ジュリアが言う。
「けれどあんただとねえ」
話をそっちに振って誤魔化しにかかる。こうした時ジュリアはかなり強い。
「私じゃ探偵さんに向かないよね」
「ま、まあね」
「けれど彰子ちゃんは彰子ちゃんで書きがいがあるわ」
アンも段々普段のアンに戻って言う。
「それの打ち合わせもいいかな」
「うん、じゃあ」
「そういうことだから。またね」
「う、うん」
ギルバートは何かよくわからないままに頷く。そして三人はそのままアンの机のところまで言ってネームにかかるのであった。とりあえずアンは虎口を脱したのであった。間一髪であった。それでもギルバートは相変わらず気付いていないが。どうやら彼もかなりあれのようである。
アロアは彰子に言われた通り中庭に出ていた。するとそこに彼がいた。
「あっ、いた」
黒い髪に少し黒い肌のアジア系の顔立ちの少年がそこで仰向けにのどかに寝ていた。白いシャツに黒いスラックスとシンプルな服装である。
「ネロ」
「あれっ、その声は」
その少年、ホワイ=ユエ=ネロは彼女の言葉に目を開けた。
「アロアなのかい?」
そして起き上がって背伸びをしてから応えた。その目はダークブラウンでかなり大きい。
「なのかい、じゃないわよ」
アロアは困った顔で彼に返す。
「あんたを呼びに来るのはいつも誰か。考えたらわかるでしょ」
「そういえばそうだね」
何処かのんびりした声で返す。
「ギルバートだよね」
「そうよ。日直のことでね」
「別に急がなくてもいいんじゃないの?」
「あんたはそれでいいけれど」
「ギルバートは違うって言いたいんだよね」
「そうよ。それにもうすぐ授業だし」
「わかったよ」
ネロはようやく身体を起こした。
「じゃあそろそろ行くよ」
身体を思いきり伸ばす。そして述べた。
「そろそろって授業はじまるわよ」
「まだ時間あるよ」
「のんびりしてるわね、本当に」
「焦ったって何もならないじゃない」
ネロは笑ってそう述べる。
「ほんの少しの時間でさ」
「それはそうだけれど」
「大丈夫だよ、間に合うから」
そう言ってアロアを安心させる。
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。